野田佳彦代表は11月28日、国会内で定例記者会見を開き、(1)ガソリン税の暫定税率廃止法案の成立と今後の財源協議、(2)補正予算案・物価高対策と与野党協議・与党会派の過半数回復を受けた国会運営、(3)高市首相の「台湾有事」発言をめぐる答弁と日中関係――等について発言しました。
(1)ガソリン税の暫定税率廃止法案の成立と今後の財源協議
ガソリン税の暫定税率廃止法案の成立について、野田代表は本日の参院本会議で同法案が可決・成立し、12月31日にガソリン暫定税率が廃止されることが正式に決まったと報告しました。「ずいぶん時間がかかったけれども、野党が結束して主張をし、与党と協議してこうした結果を迎えたということは一つの成果だ」と述べ、「こういう成果がもっと出せるように、これからも頑張っていきたい」と強調しました。財源をめぐっては「与野党協議でこういう形で法律を成立させるまで至ったが、まだ財源の問題が残っている。引き続き与野党で協議して結論を出していくのが両方の責任だ」と語り、与野党での協議継続を呼びかけました。
(2)補正予算案・物価高対策と与野党協議・与党会派の過半数回復を受けた国会運営
政府の経済対策とそれを裏付ける補正予算案については、「これまで言われていたよりも規模が大きくなった」「規模ありきで動いてきている」と述べました。そのうえで、「緊要性という観点からすると補正に入れてはおかしいのではないかというものも含まれている」と、中身への懸念を示しました。物価高対策では、政府が検討する「おこめ券」のようなクーポン方式と、立憲民主党の「物価高食卓緊急支援金」との違いを挙げつつ、補正予算への賛否は「違いの大きさや規模感も含めて総合的に判断する」としました。
また、衆院で与党会派が過半数を回復する見通しについて、野田代表は、採決の面では「(一般的には)安定的に採決できる環境になるだろう」としつつ、それでもまだ与野党が「ほとんど僅差の状況」で、「緊張感のある政権運営であることは変わりない」と述べました。参院ではなお野党が多数を占める「ねじれ国会」であることも指摘しました。衆院解散との関係では、「近差である、ほぼ五分という状況だからこそ、安定した政権運営のために衝動的に解散をしたくなる可能性は依然としてある」として、「われわれは常在戦場のつもりで臨みたい」と語りました。
(3)高市首相の「台湾有事」発言をめぐる答弁と日中関係
日中関係と安全保障政策をめぐる質疑では、高市首相の「台湾有事は存立危機事態になり得る」との発言に関する最近の国会答弁について、「あくまで従来の政府答弁を上書きするようなやり取りで、そこから踏み込まない慎重な答弁に終始していた」と述べ、「私の印象としては事実上撤回したのではないかという自分の感想を申し上げた」と説明しました。そのうえで、他国からの「極めて威圧的な対応」によって撤回を迫るやり方は望ましくないとし、「お互いに冷静なやり取りをする中でどういう決断をするか」を総合的に判断すべきだと強調しました。また、「独断専行で発言されたのではないか」「自分の頭の整理から出した言葉の責任は、言葉を発した本人が負うべきだ」とも語り、高市首相に一層の自覚と責任を求めました。
台湾問題に関する立憲民主党のスタンスを問われると、日中共同声明を踏まえた日本政府の立場を共有しているとしたうえで、「両岸関係の平和と安定を求めるということは一貫してあらゆる場で言ってきている」「政府も日中共同声明を踏まえて研究してきており、われわれもその考え方は同じだ」と述べ、台湾海峡の平和と安定を重視する姿勢を示しました。
野田佳彦代表記者会見
2025年11月28日(金)14時01分~14時21分
発行/立憲民主党役員室
★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://youtu.be/PDUGNjD87XA
■冒頭発言
■質疑
- 補正予算審議に向けて(1)
- 「改革の会」の自民党会派入りについて(1)
- 補正予算審議に向けて(2)
- 「改革の会」の自民党会派入りについて(2)
- 日中関係について
- ガソリン暫定税率廃止 財源めぐる協議について
- 泊原発について
- 高市首相との会食の約束について
- 防衛力整備 長射程ミサイル配備計画等について
■冒頭発言
○ガソリン暫定税率廃止法の成立を受けて
【代表】
本日の参議院の本会議で、ガソリン税の暫定税率を廃止する法案が可決いたしました。そして、成立をいたしました。これで暫定税率が12月31日から廃止されることが正式に決まったということであります。
随分時間がかかりましたが、野党が結束をして主張し、そして与党と協議して、こうした結果を迎えたということは一つの成果だと思います。これは最近ずっと言ってきましたが、この話を言えるのもきょうが最後かもしれませんので、最後、また胸を張って言いたいと思います。
こういう成果がもっと出せるように、これからも頑張っていきたいと思います。
■質疑
○補正予算審議に向けて(1)
【NHK】
政府はこの後の持ち回り閣議で経済対策の裏づけとなる補正予算案を決定する見通しだが、改めて、経済対策の規模であるとか、財源に国債を充てるとか、その辺りのところも含めて受け止めをお願いしたい。
【代表】
当初は17.9兆円ぐらいと言われていましたが、18兆円を超えると。国債の(追加)発行も11兆円を超えるという状況なので、これまで言われていたよりもまた更に規模が大きくなったと思います。私はかねてからこれはずっと規模ありきで動いてきていると思っておりましたが、きょうは我が党でも精査をするためにヒアリングをいたしますけれども、改めて、その中身をよく十分検討していきたいと思います。
先般の党首討論でも申し上げましたが、緊要性という観点からすると、補正に入れてはおかしいのではないかというものも相当含まれているのではないかと思いますので、厳しくチェックをしていきたいと思います。
○「改革の会」の自民党会派入りについて(1)
【NHK】
続けて、もう一問。一部報道で、衆議院の会派に関して、自民党の会派に無所属の議員が入り、これで与党が衆議院では過半数となるという報道もある。これについて受け止めと、過半数になれば少数与党との対峙の仕方とも変わる部分ももしかしたらあるかもしれないが、どのように対峙・協議していきたいかお願いしたい。
【代表】
過半数を超えるということになると、例えば法案の採決、予算の採決、あるいは内閣不信任の取扱いなど、安定的に採決できる環境になるだろうというふうに、一般的にはそうですが、ただ、ほとんどもう僅差の状況というか、(与野党)拮抗している状況なので、たぶん政権運営としては緊張感は同じではないかと思います。誰かが体調を悪くしたりとかすると、これはわからなくなる状況ですので、緊張感自体はたぶん変わらないのではないかと思います。
○補正予算審議に向けて(2)
【時事通信】
補正予算案に関連して質問したい。本庄政調会長は今後与党と予算案の中身について積極的に協議していきたいという意向を示しているが、代表としては、その修正協議の結果、一定の納得が得られるような結果になれば、補正予算案に賛成するということも視野にあるか。
【代表】
いや、あらゆる可能性は否定しませんが、中身はかなり、特に物価高に関わるところについては、あれだけ大きいと我々が的を絞ったやつは当然入ってくるんですよね。医療機関への支援とか、介護士の待遇改善とか、いろいろ入ってきますので、だからといって、それがストレートに賛成になるかというと、また別だと思います。
特に一つは、物価高対策でも、おこめ券みたいのは本当にいいのかどうか、効果があるのか。あるいは、我々は「物価高・食卓緊急支援金」という一種の給付を考えています。やはり年度内に執行して、それぞれのお宅に届くようにするためには、そういうスピード感も必要ではないですか。それが政府にあるのかどうかなど、やはりいろいろな違いもあるので、その違いの大きさ、あるいは先ほど言った規模感の問題を含めて、総合的な判断になっていくだろうと思います。
○「改革の会」の自民党会派入りについて(2)
【朝日新聞】
先ほどの与党会派で過半数回復するのではないかという話に関連して伺いたい。先ほども言及あったガソリン税の暫定税率廃止法案のように、野党がまとまって何かを法案を通すということが、これまで以上にかなり厳しいというか、絶望的な状態になってしまうかと思うが、その点についてはどうお感じになるか。
【代表】
絶望的になるのかどうかはわかりません。絶望的までは、言い過ぎではないですか、幾ら何でも。例えば委員会の構成などでは、委員会の可決ができる。その通った法案が、世論がどう見るかによって、本会議でも通っていく可能性だってあるわけなので、決して諦めませんよ。これぐらいの差では諦められませんね。
【朝日新聞】
関連で伺いたい。参議院ではまだ野党のほうが多いということで、いわゆるねじれ国会の形になるかと思う。野田さんが総理のときもねじれ国会をご経験されていると思うが、参議院のほうで多数を持っているという、この状況をどう生かしていくか伺いたい。
【代表】
これも僅差ではありますが、六つぐらいの差でしょうか。やはりねじれ国会は、私は経験しましたが、あのときに野田政権の(内閣提出)法案の成立率は33%ぐらいですから、大変なんですよ、やはりねじれ国会も。少数与党をぎりぎり脱することができたとしても、参議院ではこの状況ですから、やはり緊張感のある政権運営であることは変わりないと思います。
【朝日新聞】
もう一点だけ伺いたい。今回、与党会派で過半数を超えたことで、いわゆる衆議院解散の戦略に影響があるのではないかという見方が出ている。立憲の党内外を取材していても、これである種、解散が遠のいたのではないかという見方がある一方、引き続き緊張感を持たなければいけないという声も聞こえる。この状況を踏まえ、野田さんは先日は早期解散もあり得るという見方を示されていたが、現状、この解散のタイミングをどのように受け止めているか。
【代表】
先ほど言ったように、これは僅差であるというか、ほぼ五分という状況ですから、安定した政権運営をするためには衝動的に解散をしたくなる可能性はやはり依然としてあると思っていますので、これは従来言っていることと変わりありません。我々はやはり常在戦場のつもりで臨んでいきたいと思います。
○日中関係について
【フェニックステレビ】
日中関係についてお尋ねしたい。まず、野田代表が国会で、台湾有事をめぐる総理の発言について議論があったが、事実上の撤回と認識しているという発言があった。しかし、これに対して中国が、言及しないということは撤回ではないと反論している。改めて、野田代表は高市総理のついこの前の国会での発言の撤回というふうに見ていらっしゃるか。そして、これ以上撤回する必要がないと考えていらっしゃるか、まず教えていただきたい。
【代表】
あくまで、(歴代)政府の従来の答弁を上書きするような、ずっとやり取りだったと思っていますので、そこから踏み込まないような慎重な答弁をこの間は終始していたと思ったので、私の印象としては事実上撤回したのではないかという自分の感想を申し上げました。それはほかの方はそう思わない人もいるかもしれません。私の印象の話です。
【フェニックステレビ】
これ以上撤回する必要はあるというふうにお考えか。
【代表】
私はですね、これはもう総合的に判断するしかないと思っています。極めて威圧的な対応をされたことによって撤回をするというやり方は、私は望ましいとは思っていませんので、そういうことも含めて総合的な判断だと思います。お互いに冷静なやり取りをする中で、どういう決断をするかということは、あってしかるべきだと思います。
【フェニックステレビ】
野田代表が、その答弁の中で、独断専行ではないかというご指摘があったと思う。総理はご自身の責任について特に言及はなかったが、その責任について、どのように見ていらっしゃるか。
【代表】
私は、やはりもっと責任を感じてほしいと思います。独断専行で発言されたのではないかと私は今も思っていますし、少なくとも党内とか政府内で調整をした形跡はありません。その結果、こういう事態を惹起しているわけですから、質問した人の責任ではありません。自分の頭の整理の中から言葉で出した、言葉で出した人の責任だと思っています。
【フェニックステレビ】
もう一点。立憲民主党が日本最大の野党として、日中関係が今非常に悪化している中で、この台湾問題についてのスタンスをお聞きしたい。日本政府は今、日中共同声明の立場はそのとおりで変わりがないと言っているが、具体的にどの部分を指しているのか。つまり、日中共同声明の中の第3項について、立憲民主党はどういうふうに見ていらっしゃるか。台湾独立に関するスタンスと、一つの中国に関するスタンスも、ぜひお聞きしたい。
【代表】
両岸関係の平和と安定を求めるということは一貫してあらゆる場で言ってきていることだと思いますし、それは日中共同声明を踏まえた言及を政府もしてきていると思います。我々もその考え方は同じであります。
○ガソリン暫定税率廃止 財源めぐる協議について
【北海道新聞】
ガソリンの暫定税率廃止法案について、可決はされたが、財源の問題など、今後の課題や懸念について代表はどう思われるか、どう党として対応するか、お願いしたい。
【代表】
与野党協議でこういう形で法律を成立させるまでに至りましたが、まだ財源の問題は残っていますので、引き続き与野党で協議をして結論を出していくというのが、これは両方の責任だと思っています。
○泊原発について
【北海道新聞】
もう一点、原発政策について伺いたい。先ほど北海道の鈴木知事が北海道議会で、北電の泊原発3号機の再稼働について、原発の活用は当面取り得る現実的な選択だと述べ、再稼働を容認する考えを正式に表明した。代表の受け止めと、今後立憲としてどう対応していくというお考えとかがあればお願いしたい。
【代表】
これまで、従来、あらゆる全ての、これは泊だけではなくて、再稼働についての自分たちの考え方というのは、実効性のある避難計画があるかどうか、地元の合意があるかどうか、これらをクリアすることが再稼働できるという条件だということを申し上げておりました。
今回、北海道について、この泊についてはどうかというと、避難計画としてちゃんときちっとでき上がっているかどうかというと、まだプロセスにあるのではないかと思います。地元も、たしか自治体が五つぐらいあるのではないでしょうか。ちょっと正確な数は覚えていませんが、その中で合意をしたというのは一つぐらいしかないというふうに承知していますので、地元の合意についてもまだそのプロセスにある途上だと思いますので、その動きを注視していきたいと思います。
○高市首相との会食の約束について
【フリーランス】
党首討論を拝見した。特に最初の質問は国民が注目しているところで、野田代表としては松下政経の先輩であり総理の先輩であるという観点で、諭すようにおっしゃっていた。一方、総理は「そんなことより」ということで定数是正を提案されたわけだが、あれは立場上、総理のほうがちょっと劣勢に、要するに叱られている立場みたいなところが出てしまったので、それを挽回しようという意図があったように思う。そこで伺うが、総理が就任のときに、野田代表と焼肉を食べに行く、おごってもらうという話があった。やはり公の面では総理は総理なりのメンツというのがあると思うが、結構おいしいところで、あまり人目のないところで、焼肉を食べながらじっくりと、総理の大好きな、たぶんちょっとお高い焼肉をどんどん焼いて勧めて、そういうところで、野田代表がかつて尖閣の国有化問題などで大変日中関係で苦労されていた、その話をじっくりお話しされるという機会があってもいいのではないかと思うが、この辺りはいかがか。
【代表】
なかなか難しいですね。約束は約束しましたので、どこかのタイミングではと思っておりますが、今、国会中はそういう状況ではなかなかないのではないかなと思います。
【フリーランス】
チャンスがあれば、やはりじっくりと、焼肉を食べるだけではなく。
【代表】
もちろんです。
【フリーランス】
やはり大きな問題であればあるほど、じっくりと膝を突き合わせてというか、焼肉のロースターを介しながらというか、そういう感じで忌憚なく意見交換、あとはやはり先輩としてのアドバイスみたいな感じのものを言われたら、ご自身も素直だとおっしゃったので、高市首相も話をかなり聞いてくださるのではないかと思うが、いかがか。
【代表】
(首相は)与党ともあまり会食されていないようですので、いきなり私というと、たぶん与党の皆さんが怒ってしまうのではないでしょうかね。ということなども含めての、総合判断があるのではないかなと思います。
私自身は常にオープンでありますし、どんな立場でも、それは立場の違いがありますから意見が一致するということはなかなかないかもしれませんが、自分の経験を踏まえて、やはり日本のために、国民のために、役に立つことであるならば、その経験の話もしたいとは思います。
○防衛力整備 長射程ミサイル配備計画等について
【フリーランス】
先ほどの高市首相の発言や日中関係にも関係してくる質問だが、11月22日に大分で、24日に熊本で、弾薬庫の増設や長射程ミサイル配備計画に対して反対して、設置前にきちっと地域住民との対話集会などを国や県に対して求める全国的な集会が開催された。同様の軍備増強が、今、全国各地で急ピッチで推し進められているわけだが、そういった方々も含め、地元からも500人近い参加者があった。ご存じのとおり、11月9日には熊本市の健軍商店街で約1200人の住民集会があり、15日には野田代表ご自身も現地訪問され、参加団体からの要請書を受け取り、国対委員長に対して国会質問の指示を出されたということをこの間の会見で発言された。元々この地域は木原官房長官の地元でもあり、自衛隊と共存して、元々自民党の支持者も多い地域だが、それでもミサイル配備に結論ありきでない住民集会を多くの住民が求めている。特に高市首相の発言があってから非常に日中関係の緊張関係ということもあり、長射程ミサイルの配備に反対する住民が増えたというふうに先日の集会でも実感した。今後、住民説明会を高市政権や防衛省に対して求める国会質問だけでよいとお考えか。あるいは、ミサイルの配備計画そのものについて、日程も含めてもう一度再考するような、一旦ストップするような取組も考えていらっしゃるか。それをちょっと確認させていただきたい。
【代表】
これはもうこの間もお話ししたとおり、私も現地に行って、健軍商店街、多くの方が集まられた直後、1週間後ぐらいだったと思いますが、商店街の会長も今の官房長官の後援会の会長さんか何かなんですよね。ということで、これは超党派的に市民が動いている、心配をされているという現状をよく私も見てきましたので、要請書を受け取って、その中身云々というよりも、少なくとも多くの人が不安に思っているわけなので住民説明会はすべきであると認識をしましたので、それは国対につないで誰かに安全保障委員会で質問してもらうようにということは要請をさせていただきました。そこまでが今の現状です。それをあとは質問のやり取りの中でどうするかということだと思います。
(以上)