野田佳彦代表は12月13日、「ここからはじまる―聞く・つなぐ・変える―」全国キャンペーンの一環として徳島県を訪問。徳島市内で徳島-和歌山間を結ぶ南海フェリーの関係者と意見交換を行った後、対話集会に参加し、寄せられた声を受け止め、具体策を検討していくと約束しました。
■対話集会

対話集会では野田代表が冒頭、実現に向けて主導的役割を果たしたガソリン・軽油の暫定税率廃止をはじめ、食料品の消費税ゼロ、経営困難な医療機関や介護・障がい福祉施設への支援など、立憲民主党が取りまとめた緊急経済対策を紹介。その上で、国民生活を守るため、政策実現に向けた取り組みへの理解と協力を呼びかけました。
続く会場参加者との対話では、自民・維新連立政権の下で安全保障政策が右傾化しているとの懸念が広がるなか、立憲民主党自体が安全保障政策の新見解を来春をめどにまとめる方向であることに「安保法制の新見解、現在の考え方について教えてほしい」との質問が上がりました。これに対し野田代表は、高市政権が日中関係の問題のみならず、唯一の戦争被爆国として非核三原則についても堅持するとの姿勢を明確に打ち出せないのは極めてリスクがあると指摘し、中道の立場の立憲民主党が平和を実現、創造するためにブレーキ役を果たしていきたいと表明。安保法制については、当面の法案等の対応とは別に中長期の課題、これからの外交安全保障観について、岡田克也議員衆院議員が会長を務める調査会で整理を進めていると説明しました。
公立病院の赤字問題や、医療現場の人材不足について問われると、野田代表は、公立病院が地域医療の要として産科や小児科、救急医療といった不採算分野を担っている現状を踏まえ、診療報酬改定を待たずに緊急支援を行う必要性を指摘。あわせて、次期診療報酬改定ではこれらの分野を重点的に評価すべきだとし、医療従事者の待遇改善として月額1万円の賃上げを柱とする議員立法を提出していると述べました。
神山町在住の高校生は「本を読むのが好きだが、町に図書館がなく、本に触れる機会が限られている」「図書館は本好きのためだけでなく、まちのことを知り、民主主義を支える大切な場所だ」と訴え、国や党による支援を提起。野田代表は、自身の学生時代の経験に触れ、「地域に図書館があることは望ましい」と応じ、自治体規模の課題も踏まえつつ、県連とも連携しながら支援のあり方を検討していく考えを示しました。
若者への発信力について問われると、野田代表は「若者向けの政策がないわけではないが、十分に届いていない」と話し、SNSを含む広報体制の強化に党を挙げて取り組んでいると説明。その上で、教育無償化や子育て支援など、立憲民主党が先駆的に提案してきた政策を挙げ、若い世代に分かりやすく伝えていきたいと述べました。
このほか、公共交通の人手不足や賃上げと中小企業支援などについても質問が相次ぎ、野田代表は「党として宿題として受け止め、具体策を検討していきたい」と応じました。
集会の司会進行は、徳島出身で県連会長の吉川参院議員が担当。閉会のあいさつに立った県連幹事長の高橋永衆院議員は、「私は、政治は本来生活者の暮らしの中にあるものだと信じている。皆さまの日々の実感や小さな違和感、ふとした希望、その一つひとつが政治の出発点になるはずだ。ここからもう一度政治を作り直す。徳島からもその歩みを皆さまと一緒に進めていきたい」と力を込めました。

■南海フェリーの関係者との意見交換
徳島―和歌山間を結ぶ南海フェリーは、1日8往復を運航し、観光や物流、帰省など人流・物資流動を支えています。また、災害時の救援輸送や幹線ルートの代替輸送として、地域のリスク軽減に貢献してきました。一方、コロナ禍による巨額赤字や燃料費・修繕費の高騰により経営環境は厳しく、就航から26年が経過した「フェリーかつらぎ」の更新が喫緊の課題となっていると言います。

野田代表は、和歌山―徳島航路をはじめとする地域フェリーの存続をめぐり、小林敏二代表取締役社長ら南海フェリー株式会社の皆さんと意見交換。現場からは、船舶や港湾設備の老朽化が進む一方、更新には数十億円規模の費用が必要で、事業者の努力だけでは維持が困難になっている現状が報告されました。フェリーは平時の移動手段であると同時に、災害時には物資輸送や代替交通として不可欠だが、その公共性が十分に評価されず、国や自治体の支援が不十分であることが大きな課題として共有されました。
また、赤字構造の中で賃上げも難しく、使命感で働く現場労働者の負担が限界に近づいている実態も明らかになり、参加者からは、公共交通を採算性のみで判断せず、移動の権利や危機管理の観点から制度的に支える仕組みを求める声が相次ぎました。
学生時代、大学のある関西と地元との往復にフェリーを活用してきた吉川参院議員は、今もできる限り利用していると発言。「定期航路があるということ自体が『海の道』を確保していることだ」と述べ、災害が起きてから船を確保しようとしても迅速な対応はできないと指摘しました。都市部では実感されにくいが、航路を失うことは地域の安全や暮らしに直結する問題だと、その重要性を国全体で共有すべきだと訴えました。
これに対し野田代表は、公共交通の公共性が正当に評価されていない現状に強い問題意識を示し、「全国共通の課題として受け止める必要がある」と強調。自治体や国による支援のあり方や評価軸の見直しについて、国・県・市でどういう役割分担しながら後押しができるか議論を深めていくと約束しました。
意見交換には、徳島県連所属の吉川参院議員、高橋衆院議員、庄野昌彦、東条恭子両県議、加村祐志徳島市議が参加しました。

