立憲民主党は、12月3日午後、農林水産部門会議(部門長・神谷裕ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を国会内で開催、(1)「強い経済」を実現する総合経済対策(11月21日閣議決定)、(2)令和7年度補正予算(11月28日閣議決定)、(3)畑作物の直接支払い交付金(ゲタ対策)及びてん菜の交付対象数量について、農林水産省よりヒアリングを行いました。(司会:石垣のりこ農林水産部門長代理・参院議員)
冒頭、金子恵美部門長代理より「総合経済対策、令和7年度補正予算等について議論したい。残念なことに、なかなか農林水産委員会が開かれない。大臣所信が終わった後はとても静か。畜酪は閉会中審査になる可能性があるが、しっかりと議論する環境づくりをしている。法案がないということで一般質疑をする環境に置かれていないということは極めて残念。法案があまりないということはあってはならない。一方、令和7年度補正予算をみても、そもそも当初予算で出すべきと我々はいつも申し上げている。当初予算が十分でないのに、補正予算が出され、積み上げられているからいい、というものではない。これまで以上の予算を農水省が獲得できるよう、私たちは中立ではあるが応援団。しっかりと予算をとってほしい。必要なものは必要と言っていきたい」との挨拶がありました。
■「強い経済」を実現する総合経済対策についての農林水産省の説明
農林水産省から、概略、以下の説明がありました。
「強い経済」を実現する総合経済対策(以下「総合経済対策」という。)では、第2章第2節に「2.食料安全保障の確立」を掲げ、この中で、令和7年度~11年度の5年間(農業構造転換集中対策期間)において機動的・弾力的に施策の充実強化・見直しを行うとともに、地方も含めた施策の推進に必要な体制等を確保し、収益力向上を通じた所得向上を図ることとしている。
具体的な取組として、
○農地の大区画化を強力に推進するとともに、中山間地域におけるきめ細かな基盤整備等を実施。共同利用施設等の生産性向上を図るため、再編集約・合理化を実施。上記取組に関する農家・産地負担の引下げ、手厚い地方財政措置を講ずる
○スマート農業技術の開発・導入及び多収性や高温耐性などを有する新品種の開発・導入、これらに必要な農研機構の拠点施設整備の実施、担い手やサービス事業者等の生産性向上に資する農業機械の導入等を支援
○海外の規制やニーズに対応した輸出産地の育成や施設整備、販路拡大の取組等を支援
を掲げている。 また、第2章第1節1.(2)地域のニーズに応じたきめ細かい物価高対応の中で、物価高が継続する中、地方公共団体が地域の実情に応じた生活者・事業者の支援を行えるよう、重点支援地方交付金の更なる追加を行うこととし、いわゆるお米券等をはじめとする食料品の物価高騰に対する特別加算を措置するとともに、中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備支援のメニューを追加するなど、国が推奨事業を提示している。
■令和7年度補正予算についての農林水産省の説明
農林水産省から、概略、以下の説明がありました。
令和7年度補正予算は総額9,602億円、物価高騰影響緩和対策に686億円、食料安全保障強化重点対策に4,254億円、うち農業構造転換集中対策に2,410億円を計上。(以下、概要の柱建てを掲載)
(1) 物価高騰の影響緩和対策
○施設園芸、漁業等の燃料高騰対策、漁業者等への金融支援
○需要が低迷している和牛肉の販売促進
(2) 食料安全保障の強化のための重点対策
○農業構造転換集中対策
・農地の大区画化等
・共同利用施設の再編集約・合理化
・スマート農業技術・新品種の開発、生産性向上に資する農業機械の導入
・施設整備、販路拡大等を通じた輸出産地の育成
・麦・大豆等の作付け拡大・畑地化等本作化、米粉利用拡大、加工・業務用野菜の生産拡大
○有機農業の取組拡大、地域資源の循環利用促進
○堆肥等の高品質化・ペレット化等の推進、国産飼料の生産・利用拡大、乳用牛の長命連産性向上
○農地集約化、新規就農や地域外からの担い手参入の促進
○クマ・シカ・イノシシの捕獲強化、侵入防止柵の整備等
○企業等と連携した所得確保の取組等の中山間地域等対策
○食品事業者と産地の連携、食品産業の省力化投資促進
(3)「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく施策の実施
○国内外のサプライチェーン構築、品目団体等の輸出力強化、新市場の開拓や多角化、海外の輸出支援体制の確立
○収益力強化に計画的に取り組む産地の総合的支援
○畜産・酪農の収益性向上に必要な施設整備・機械導入、優良な繁殖雌牛への更新加速化
○林業・木材産業の生産基盤強化、森林の集積・集約化、JAS構造材・CLT等の利用拡大、担い手の育成・確保等
○漁業構造の転換、漁船リース、省力化機器導入
(4) 防災・減災、国土強靱化と災害復旧等の推進
○防災重点農業用ため池の防災工事、治山・森林整備対策、漁港施設の耐震化・耐浪化対策、流域治水等の取組推進
○令和6年能登半島地震等により被災した農地・農業用施設、治山施設、林道施設、漁港施設等の復旧
(5) 持続可能な成長に向けた農林水産施策の推進
○脱脂粉乳の在庫低減、牛乳・乳製品の需要拡大
○家畜伝染病、重要病害虫の侵入・まん延の防止
○伐採・植替え加速化、需要拡大、花粉の少ない苗木生産拡大
○海洋環境の変化に対応した資源調査・管理体制の構築、新たな操業体制実証、藻場・干潟等の保全、赤潮対策
■総合経済対策及び令和7年度補正予算に係る参加議員からの質問と農林水産省の回答
<農業構造転換集中対策開始前の令和6年度予算からどれだけの増額か>
参加議員から「令和7年度農林水産関係補正予算の総額9,602億円のうち、農業構造転換集中対策として2,400億円ほどとなっている。対策期間は令和7年度から。掲げられている対策は、純粋な新規というものはなく、これまでも取り組んできたものである。単純比較でよいから、令和6年度と比較して、純粋にどれだけ予算が増えたのか」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「農業構造転換集中対策については、令和7年度から実施している。令和6年度との比較について、例えば、農業農村整備のように、従来から継続的に実施しながら、構造対策を加速化していくために上積みをしている部分、共同利用施設の再編集約事業のように、新たに事業を設けているものもある。共同利用施設については、強い農業づくり交付金など従来から措置している事業があるが、農業構造転換集中対策ということで掲げている事業は、再編集約を進めることが肝。これを進めるために、地元負担を引き下げるための補助率引き上げ、再編する際に必要となる古い施設の撤去費の支援など、新しい事業として組み立てている部分もある。そのため、令和6年度と単純比較がなかなか難しい面がある」との説明がありました。
参加議員から「中学生でもわかる理屈。純粋にいくら増やそうとしているのか説明できずに、農業者に集中対策だ、これだけ国が力を入れているんだということを理解してもらうことは無理。もっと工夫、検討いただきたい」(渡辺創衆院議員)との指摘がありました。
再度、「いくら増やすのか、概算でもいいので出してほしいとの質問に対する回答はどうか」(石垣のりこ部門長代理・参院議員)との指摘に対し、農林水産省より「農業農村整備事業や共同利用施設の整備の関係で申し上げれば、2,410億円を別枠でとっているので、その分が増えていると言える」との説明がありました。
<農業構造転換集中対策期間に別枠で措置する予算規模>
参加議員から「5か年間の農業構造転換集中対策期間で、どのくらいの予算措置を別枠で措置するのか、農水省の考えを聞きたい」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「5年間で1.3兆円の予算規模を想定しながら進めている」との回答がありました。
<地域計画の取組状況の総括と農業構造転換集中対策期間における取組>
参加議員から「地域計画を今年の3月までに策定するという取組が行われてきたが、どの地域を回っても、思うように進んでいない。このようなことで大丈夫かという声が上がっている。今、説明があったように、再編集約をしていかなければならないという前提で地域計画を作ってきた。例えば、大きな基盤整備の実施は地域計画ができていることが前提とされている。ところが、そこが変な状態。5年間の集中対策期間が始まるが、どうなっていくのか、足元が揺らいでいるのが現状と思う。地域計画の集約状況の総括はどうか。本当に想定している効果を生み出すということで進んでいるのか。こうした前提が整っていないというのであれば影響はでないのか」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「地域計画について、全ての農用地区域内農地はカバーされたことが一つの総括。二つ目に、中身に関して、10年後に受け手がいない農地が3割程度。これについては課題があると認識している。さらに、地域計画の目標地図について分析してみると、10年後集約が1割くらい。地域計画は2年間で作ってくださいとお願いして頑張っていただいたが、作って終わりではない。何が地域の課題なのかによって、地域ごとに地図が全く違う。話し合いに呼ばれていないということもある。絶え間ない見直しをしていかなければならないという認識」との回答、「地域計画の策定を進める中、5か年の対策を進めることは重要。地域計画をブラッシュアップしていく中、共同利用施設の再編集約、農業農村整備事業をどうするかをきちんと位置付け、しっかりと成果を出していく、有機的に連携させながら取り組んでいく」との回答がありました。
<目標地図の完成度に対する農林水産省の想定、認識>
参加議員から「目標地図ができているのは1割で、その中身の出来にはいろいろな状況があるとの話であった。当初、これを作成するようにお願いした段階から農水省は、農村地域の実情を考えれば、1割程度しか目標地図ができてこないことが想定の範疇であったのか。想定しているよりも低いとなれば、日本農業を取り巻く環境が厳しい、地域がここまで弱っているということが想定外であったということになる。農水省の認識をきちんと説明願いたい」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「目標地図については、全ての地域で作っていただいている。中身に関しては、1割くらいが集約進展。スタート時点でどこまで想定していたのかについて、現場で時間をかけないと、そんなにきれいな地図はできないということは我々も理解していた。具体的にどのくらいのものが出てくるのか。まずは現場の話し合いをしてください、それからブラッシュアップを繰り返していきましょうと、当初より申し上げていた。現場のマンパワーが不足している厳しい実態があり、はじめからきれいなものにはなっていかないだろうということは正直なところ感じていた」との説明がありました。
<目標地図のブラッシュアップに対する危機感>
参加議員から「この後の想定は有しているのか。農業委員会の事務局に専従職員がいるところは半分ちょっとしかない状況で、これに対する措置を何もしないのに、この後時間を掛ければ、ブラッシュアップさせられるとは誰も思わない。ブラシュアップを図るといっても、あっという間に5年間が終わってしまうのではないかという危機感が感じられない」(渡辺創衆院議員)と指摘がありました。
農林水産省より「危機感は我々も持っている。今までのやり方ではまずいだろうということで、大臣も申し上げているが、国の職員が現場に入っていくことなどやり方も含め、見直しをしていかなければならないだろうという意識である」との回答がありました。
<補正予算が目指す日本農業の姿を明確にする必要>
参加議員から「補正予算をみていると、ちまちましたものがいっぱい並んでいて、一体何をしたいのか、よく分からないというのが正直な印象。7年度の当初予算ではこうした農業政策を考えていて、これだけの予算を組んだが、補正を組まなければ足りなかった分がこれくらいあるから、というような話があれば分かるが、補正の項目だけずらっと掲げられても、一体何をしたいのかよく分からない。予算規模だけでなく、この補正を組むことによって、日本の農業がどう変わっていくのかということが分かるような情報を提供していただきたい」(平岡秀夫衆院議員)との要望がありました。
農林水産省より「今、この場でお示しすることではないが、農業構造転換集中対策によって、こういう姿を作っていくというものはある。一例では、スマート農業技術の導入により労働時間を削減できるか、こういう具体的な効果をお示している。食料・農業・農村基本計画の中でKPIを設定しており、これに向けた当初予算、補正予算を組んでいる」との説明がありました。
<総合経済対策と予算の関係の明確化>
参加議員から「総合経済対策と補正予算の関連が全く説明されていない。総合経済対策に係る予算の考え方について、何らかの資料を作って説明していただきたい」(平岡秀夫衆院議員)との要望がありました。
<農林水産予算の策定方法>
参加議員から「予算はどうやって作っているのか。現場からの声を拾って作り上げているのか。それとも、皆さん方が全体を見て、こういうところが足りないよねと、皆さんの方から問題を投げかけていって、具体的な予算が決まっていくのか。」(平岡秀夫衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「生産団体をはじめとする現場の皆さんとのコミュニケーションを通じて、我々として必要な政策を考案し、これを現場にご説明しながら、当初予算ももちろんだが、補正予算として、必要なものを勘案して計上している。我々が机の上で考えているわけではなく、現場とやり取りをしながら考えている」との回答がありました。
参加議員から「現場からやってくるとなると、大きな農業政策の転換はできない気がする。100要求があったら70くらい認めてあげれば満足するかな、ということで予算を作っていたら、農業政策の転換はできない気がする」(平岡秀夫衆院議員)との発言があり、農林水産省から「農業構造転換集中対策は、食料・農業・農村基本法を改正して、国際情勢の変化なども踏まえ、食料安全保障を確立していく、そのため、基本法改正後の5年間を農業の構造転換を進める期間として定め、現場の状況を踏まえた上で、我々農水省として、方針を示しながら、政策を組み立てている。現場からの御用聞きという形とは違うところで編成している」との補足説明がありました。
<農業経営体、農業人口の減少がスマート農業等の取組を困難にするのではないか>
参加議員から「大規模化、スマート農業、AI、植物工場。いろいろなものが並んでいるが、先日、2020年の経営体107万が2025年では23%減って82万になったことが明らかになった。5年後には50万台になるのではないかという勢いで農業経営体が減っている。そうなると、どんな立派なロボットや植物工場ができても、動かす人がいなくなるのではないか。農業人口をどうみているのか」(野間健衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「基幹的農業従事者数については、2040年に30万人になると推計している。特に、米農家、兼業農家が一斉に引退する。少ない人数で生産するには農地の集積・集約化、団地化してスマート化に取り組まなければならない。中山間地域では、それだけでない対応が必要と思っているので、きめ細かな対応で工夫していきたい。どうしても人口減少に抗えない部分があるので、それに備えて何か考えていかなければならない。そのための予算も含めている」との回答がありました。
<新規就農支援策の対象者の年齢要件を引き上げるなど現状に合わせた制度の見直しが必要>
参加議員から「印象としては網羅的。先日公表された農業センサスを見て、ものすごくショックを受けた。危機感を持っている。それが感じられない。次世代の担い手の確保・育成の部分に関しても、特に今までと変わったところがない。予算だけの問題ではなく、制度の中身も見直していかなければならない。例えば、新規就農支援策(就農準備資金・経営開始資金)に関しても対象年齢は49歳までとなっている。若い農業者を確保したいという考え方は分かるが、企業の定年年齢が引き上げられており、高齢者の皆さんは元気。農業も同じように、できる人にやってもらうよう、対象年齢の見直しをしていかなければならない。現状に合わせた制度の見直しをやってほしい」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。
農林水産省より「我々も危機感を持っている。今回、補正予算で、地域農業構造転換支援対策の中で、認定新規就農者で64歳以下であれば、機械の導入に関して、枠を設けてお金が行くように工夫している。新規就農施策はいろいろ工夫が必要と思っているので、先生方とご議論させていただきながら頑張っていきたい」との発言がありました。
参加議員より「ぜひとも、立憲民主党の新規就農・担い手対策を参考にしていただきたい」(徳永エリ参院議員)との発言がありました。
<モンスターウルフの効果の検証等新たな鳥獣被害対策に取り組む必要>
参加議員から「鳥獣被害対策は全国どこでも深刻な状況。ネットや電柵を張るだけでいいのか。より効果があるものを研究、開発していかなければならないと思う。例えば、北海道でモンスターウルフの取組がある。ウルフのロボットの目がぴかっと光り、オオカミの鳴き声が3種類くらい出る。実証実験すると、最初、シカに効果があることが分かったが、今ではクマにも効果があることが分かった。自治体でも2台、3台導入している。農林水産省としても効果があるかどうか検証し、効果があれば全国的に広げるなど、新しい取組をすべき。危機感に対応してほしい」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。
農林水産省より「どうやれば効果が上がるのか。見回りに行くのも大変という話もある。今までどおり柵を張っていればいいというだけでない。クマは柵を張っても簡単に突破してしまう。そのため、手前にもう1本張ることで突破しにくくし、かつ、地域にとっても手がかからないでうまくやっていけるようにしなければいけないという声もある。絶えず、広域的なやり方をとっていきたいという思いでやっている。柵を張るとか捕獲するとか、ありきたりの文言になってはいるが、我々も一生懸命見直しており、引き続き考えていきたい」との回答がありました。
<緊急性の高い酪農ヘルパー、削蹄師の人材育成に取り組む必要> 参加議員から「酪農ヘルパーが足りない。削蹄師がいない。後継者が育たない。北海道では少ない削蹄師が全道をぐるぐる回って歩いている。こういう人たちの人材育成など緊急性が高いものがいっぱいある。こうしたことにしっかり着目した打ち出しをしてもらいたい」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。
農林水産省より「酪農ヘルパーについては、畜産物価格のご議論をいただくが、関連対策の中で現場の声をお聞きして、どう充実できていくのか。外国人材の受入れということもある。削蹄師がいないという声をしっかり受け止め、優先順位を付けながら、今後の議論の中でやっていきたい」との回答がありました。
<クマの捕獲活動経費の単価を引き上げる必要>
参加議員から「クマの駆除に係る報奨金の基本単価の問題も、自治体が計画を立てて申請すれば、上乗せできるということはありがたいと思う。しかし、クマとサルの単価が同額の8,000円となっているが、これは変えた方がいい。北海道の猟友会の皆さんも警察や自衛隊の体制が整ったらクマ撃ちは辞めたい、そもそも趣味でやっているのに、安い日当と報奨金ではやっていられないと言っておられる。現場の皆さんのことを考えてやっているというアピールの仕方は大事」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。
<フードテックへの投資促進と食料自給率100%を目指すこととの関係>
参加議員から「当初予算で取れないものを補正で取っているのかなとの印象がある。その補正予算に掲げられている植物工場の整備等『フードテックへの投資促進』について、高市総理が言われた食料自給率100%を目指すということとの関係を聞きたい。食料自給率100%を本当に目指すのであれば農地は3倍必要になる。植物工場をやりながら100%を目指せると思っているのか」(金子恵美衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「食料自給率100%については、総理も自分の強い思いと言われた。私達は基本計画の45%の目標を目指していくことに尽きるかと思う。植物工場には気候変動にも耐えうるというメリットがある。黒字を出しているところもある。植物工場をやれば100%になると申し上げることは全くないが、いろんなことをやりながら少しでも高めていくことを地道にやっていくことが必要なんだろうなと思っている」との説明がありました。
参加議員から「今、耕作放棄地になっている農地をしっかりと生かしていくということが先という議論をしていただきたい」(金子恵美衆院議員)との発言がありました。
■畑作物の直接支払い交付金(ゲタ対策)及びてん菜の交付対象数量についての農林水産省の説明
農林水産省から、概略、以下の説明がありました。
<畑作物の直接支払い交付金(ゲタ対策)について>
我が国の小麦、大豆などの畑作物は輸入依存度が高く、食料安全保障の観点からこれらの生産の増大を図っていくことは不可欠。
そのため、担い手経営安定法に基づき、諸外国との生産条件の格差により不利がある農産物を対象に「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額分に相当する交付金を直接交付する畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)を実施。
ゲタ対策の交付単価は3年に1度改訂しており、今年、令和8年の単価を決めることになっている。交付単価は10a当たり生産費を平均単収で割り、標準的な生産費を求め、それから販売価格を引いて算定。
足元のインフレ動向、個別品目の課題を踏まえ、以下のとおり、ゲタ対策に関するルールの見直しを行う。 ・ゲタ単価に足元に生産費高騰を反映すべきとの意見を踏まえ、直近の生産費等の推計値を用いて単価を算定。
・産地からの要望を受け、糖度及びでんぷん含有率の基準値を見直すとともに麦のDON(カビ毒)検査費用を単価に反映。
・来年7月までに、算定根拠となる統計情報等に関して、現場実態・実感と合わない部分について、農協系統等と意見交換を行い、その結果を報告。これらを踏まえて、現行の3年に1度の改訂にとらわれず令和9年におけるゲタ単価の見直しの是非について検討し、結論を得る。
具体的な単価(案)は、小麦は現行単価340円減、大豆1,070円増などとなっており、単価が減額となった品目を対象に、産地単位で取り組める新たなメニューを新設。
<てん菜の交付対象数量について>
中長期的な砂糖消費量の減少に加え、令和元年以降、てん菜糖業の在庫量が増大し厳しい経営状況となったほか、てん菜生産を支える糖価調整制度の調整金収支についても累積赤字が増大したことを踏まえ、令和4年12月に「てん菜方針」を決定。
てん菜生産については、「てん菜方針」におけるてん菜糖の国内産糖交付金の交付対象数量(55万トン)・指標面積(5万ha)をすでに下回る状況。その他、各般の取組により糖価調整制度の砂糖勘定の収支は改善傾向にあるものの、累積債務は高水準で推移しており、引き続き注視が必要。
令和8砂糖年度における特例数量(作付面積が指標面積を下回る場合の交付対象数量)は、56万トン、令和9砂糖年度以降の交付対象数量は55万トン。糖価調整制度の安定的な運営に支障が生ずる場合には、持続的なてん菜生産及び糖価調整制度の運営が可能な水準の交付対象数量となるよう見直しを行う。
■参加議員からの質問と農林水産省の回答
<畑作物の直接支払い交付金(ゲタ対策)の地域別交付状況>
参加議員から「ゲタ対策の地域的な交付状況はどうなっているか」(平岡秀夫衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「地域別の予算執行額は提示していない。この制度は畑作物に対するもの。地域的には小麦であれば北海道、九州福岡、佐賀、愛知、北関東、大麦であれば北陸地方。中国地方は少ない」との回答がありました。
<サトウキビに係る制度>
参加議員から「奄美、沖縄のサトウキビに係る制度はどうなっているか」(平岡秀夫衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「てん菜もサトウキビも糖価調整制度の中で、輸入糖と国内産糖の価格差を調整する枠組みができている。ゲタという枠組みには出てこないが、サトウキビに対しては、生産条件格差を補正する交付金を交付し、沖縄、鹿児島離島の生産を支えている」との回答がありました。
<サトウキビの生産等の状況>
参加議員から「サトウキビの生産、砂糖勘定の収支はどのようになっているのか」(平岡秀夫衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「砂糖勘定はサトウキビ、てん菜のどちらも含めた勘定。サトウキビは生産量、収穫面積は安定的に推移している。沖縄鹿児島でここ20年くらい、2万3千haくらい、生産量も年によって豊凶変動があるが120万トン~140万トン」との説明がありました。
<畑作物の直接支払い交付金(ゲタ対策)の交付単価減額と関連対策との関係>
参加議員から「ゲタ対策の関連対策の新規・拡充が措置される。この関連対策は、交付単価の減額の補填のための対策というわけではないが、両者の関係はどうなっているのか」(石垣のりこ部門長代理・衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「交付金の単価が下がるものに対して、例えば麦の生産性向上対策(2,000円/10a)に取り組んでいただければ、麦・大豆で2年3作であれば、大豆の単価が上がるので、トントンになる。米、麦だけを作られているところでは減るが、2,000円/10aのメニューに取り組んでいただければだいたいカバーできるかなという相場感。ただし、交付金と関連対策は政策目的が異なる。関連対策は、生産性向上のために産地として取り組んでいただくことへの対策」との回答がありました。
■報告・協議事項
金子恵美部門長代理より「国会会期の延長がなければ、12月11日(木)が今国会最後のNCになり、法案登録や委員会決議の処理を急いでほしいとの話。畜産物価格の決議を出すことになるが、12月4日と10日の畜産・酪農政策WTでしっかりと協議をし、決議案をつくっていくとになるので、よろしくお願いする」との発言がありました。
