参院厚生労働委員会で5月14日、健康保険法等改正案が審議入りし、「立憲民主・無所属」から小西洋之、山内佳菜子両議員が質問に立ちました。

 本法案は、OTC類似薬の薬剤費の一部を保険給付外とする「一部保険外療養」制度の創設をはじめ、「後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合の判定への金融所得の反映」「出産の標準的な費用に自己負担がかからないようにするための給付体系の見直し」「高額療養費の年間上限の創設」などを盛り込んだものです。

小西洋之議員

 小西洋之議員は、(1)国民皆保険制度と憲法25条の関係(2)高額療養費制度の見直し――を中心に質問。憲法25条の生存権の趣旨を踏まえた医療保険制度の改正をと訴えました。

 小西議員は冒頭、憲法25条の生存権との関係性を重視する立場から、国民皆保険制度の根本的な意義について質問しました。上野厚労大臣は、医療保険制度について「全ての国民が一定の負担で保障を受けられるようにすることで、誰もが直面しうる傷病等のリスクを国民全体で分かち合うことを目的とする」と述べ、憲法第25条の生存権保障の趣旨に適合する必要があると答弁。保険局長は、国民皆保険制度が憲法第25条の生存権保障を実現する制度全体の「かなりコアの部分の仕組み」として機能すべきものであると説明しました。

 小西議員は、誰もがリスクを抱えるなか、疾病が個人の尊厳に与える深刻な影響について言及し、政府の「高額療養費制度が国民皆保険制度の中核制度」という発言を踏まえた内容になっているのかと問題視。高額療養費はコロナ禍でもほぼ横ばいだったことに触れ、高額療養費対象医療は命に関わる「やめられない医療」だと訴えました。

 年額上限制度をめぐり、年収200万円から770万円の人が同じ年額上限53万円となることに、「ずさんな制度ではないか」と指摘し、政府の見解をただしました。これに対し、上野大臣は「現在の制度を起点として、長期療養者の負担額を現行より増加させない観点から制度設計した」と答弁。小西議員は憲法第25条の趣旨にかなわないと批判しました。

 小西議員はまた、年収750万円の人は年額上限53万円、年収800万円の人は111万円と約50万円の急激な負担増が生じることについても、制度設計として粗雑なのではないかと指摘。厚労省は「専門委員会でも所得区分の在り方については今後の課題だとの指摘を受けている」「高額療養費に限った話ではないが、医療保険制度全体についても不断の検証が必要と認識されている。応能負担の指摘を含め制度のあるべき姿については今後も研究を重ねていきたい」と述べました。

2026年5月14日 参院厚生労働委員会 小西洋之議員

山内佳菜子議員

 山内議員は、(1)出産費用の無償化(2)高額療養費の見直し――を取り上げ、現場の実態や患者負担への懸念を踏まえ、政府の認識をただしました。

 出産費用の無償化をめぐり山内議員は、正常分娩を現物給付化する政府の方針について、周産期医療の現場から強い危機感が示されていると指摘。日本産婦人科医会が2024年にまとめた、地域での産科診療施設の事業継続見込みに関する調査では、正常分娩の費用が保険適用となった場合、制度内容によっては分娩を中止する可能性があると回答した産科診療所が8割に上り、半数以上の二次医療圏で産科診療所による分娩が失われる恐れがあると紹介しました。また、分娩を取り扱う医療機関数が1996年の3991施設から2023年には1766施設へ減少している実態も示し、「妊婦の負担軽減は重要だが、地方の分娩施設の撤退が加速したら本末転倒だ」と訴えました。

 これに対し上野厚労大臣は、妊婦の経済的負担軽減と地域の周産期医療体制の確保の両立を図ることが重要だと強調。給付水準については、全国一律の基本単価に加算措置を設ける方向で、施設の経営実態や地域事情を踏まえながら検討すると説明しました。

 高額療養費制度をめぐっては、所得区分による「負担の崖」や、転職などで保険者が変わると多数回該当がリセットされる問題を取り上げ、改善するよう要請。上野厚労大臣は多数回該当について、保険者間の情報連携や個人情報保護など課題はあるとしつつ、「できる限り早期の実現を目指す」と答弁しました。

 70歳未満に残る「2万1000円の壁」についても、年齢区分は撤廃すべきだと主張。また、働く世代への配慮が不十分だとして、病気による減収があっても、高額療養費の自己負担額にすぐ反映されない現行制度の問題点を指摘し、柔軟な見直しを求めました。さらに、制度改正による受診抑制や家計への影響を把握するため、患者団体も含めた実態調査と検証が必要だと訴えました。

 上野厚労大臣は、制度見直しによる影響について「一定期間を通じて受診行動を分析する必要がある」と説明した一方、「必要な受診が抑制されることは想定していない」と答弁。これに対し山内議員は、「必要な受診かどうかを決めるのは患者だ」と強く反論し、患者の立場に立った制度運営を求めました。

2026年5月14日 参院厚生労働委員会 山内佳菜子議員