結党以来ジェンダー平等推進本部の本部長としてさまざまな取り組みを進めてきた、現本部長代行の大河原雅子前衆院議員に、なぜジェンダー平等推進なのか、そして今年3月下旬の急な事故で中途障がい者になった立場から、あらためて見えてきた社会のあり方などについて話を聞きました。(取材日:10月4日)

総選挙でもジェンダー平等推進を大きく掲げる

 立憲民主党にとって「ジェンダー平等推進」は大きな柱です。枝野幸男代表が9月にジェンダー平等推進本部の本部長に就任し、活動方針とそれを実行していくための「ジェンダー平等の推進などに関する改革案」を主導してとりまとめました。このこと自体は大変うれしく思っていますが、コロナ禍で日本社会のジェンダー不平等が露呈したことを踏まえれば、もっと多くの男性議員に、自分の生きづらさを含めて意識を高めてもらいたい。党内全体として、ジェンダー平等への理解が不足していたことにより発生してしまった事態についても、もっと議論をしていきたいです。

 日本では女性の13人に1人が性被害を受けているという性犯罪の実態があり、これはとんでもない数字です。10代の女子学生たちが公共の場で痴漢に被害に遭うことについても、政治があまりにも無頓着だった。犯罪を犯罪としてきちんと摘発する必要があります。多くの被害者が、被害を訴えることでさらに傷が深くなるので泣き寝入りせざるを得ない実態をどうしたら改善できるのかという知恵と、問題認識が足りません。どんな小さなことであっても犯罪だと言い切ることが大人の責任です。政治に携わる者が、この国の根底に刷り込まれているジェンダーバイアスを「問題」だとはっきり断言していくことが必要です。立憲民主党は衆院総選挙でも、ジェンダー平等推進を大きく掲げ戦っていきます。

互いに認め合うことが多様性の確保に

 政府は昨年、何の配慮もせずに、国民1人一律10万円の特別定額給付金を、世帯主を受給者として支給しました。それをおかしいと思う人たちが声を上げ、立憲民主党を中心に女性議員が自ら調査をした結果、この世帯主を受給権者とする問題について、かなり大きく世論に働きかけることができました。

 一方で、家事労働や介護や子育てなどについてはまだまだ女性の負担が大きい。古くて新しい問題ですが、ジェンダーバイアスはまだまだ根強くあります。子育てについて「子どもはお母さんにかまってもらった方がうれしいに決まっている」と言い放った文部科学大臣がいました。立憲民主党が訴える「変える政治」は、そうした意識を乗り越えるために一人ひとりの課題に向き合い、対話をしていく。お互いが変わり合うこと、認め合うことが個人の尊厳が守られる社会、誰ひとり取り残さず包摂して進む社会の実現への一歩につながると思っています。

障がいがあるのは、人ではなく環境

 私は今年3月に脳出血を起こし、左手足に麻痺が残り、中途障がい者になりました。障がい当事者になったことで、不安や危機への感度が高くなったと思います。これから私が現実に遭う困難は、多くの障がいを持った方がすでにぶつかり、声を上げていた困難でもあります。

 例えば、車いすでは交差点で信号待ちをするにも、ちょっとした傾斜があり、しっかりブレーキをかけないと動いてしまうことがある。点字ブロックも、車いすで移動するには動きづらい。すでに多くの障がいをもつ皆さんが訴えられているように、障がいがあるのは「人ではなく環境」だという、その現実に直面しています。

 怪我や病気で障がいを負うことは、誰の人生にも起こりうることです。そこから人生が暗転してそのまま脱落しないための手当が必要です。私自身の経験からも、病気になると自分に自信がなくなってくる。心が折れます。そうしたなかで、生きてきた自分を認めること、「これでよかった」と思えることが大事です。自死する人がこんなに多い社会はおかしい。特に子どもがそういう状況になることがあってはなりません。自分は大事にされていると感じられる社会、自分は自分でいいと思える社会をつくることが、立憲民主党が訴える多様性を認め合う社会であり、どんな人も共に生きる社会だと確信を深めました。

大きなスピーカーになる

 今回の経験で、あらためて医療や介護に携わる人たちがいかに大切な存在かを実感しました。彼女、彼らが疲弊し、仕事を続けることに絶望を感じることがあってはなりません。エッセンシャルワーカーの方たちの労働環境をしっかりと確立すること。皆さんがその仕事を続けてくださるには、自分の人生の将来を見通せる、人生の計画に光が見えるようにしなければなりません。

 また、エッセンシャルワーカーの方たちに限らず、人は誰かの世話をすることに幸せを感じます。私が入院していた病院では、1日3回食堂で患者さん同士顔を合わせるのですが、「お茶飲む?」と給湯器からお茶を入れて持ってきたり、声を掛け合っていました。そうした小さなことから誰かを思いやる、ケアをすることが自分の自信にもつながっていきます。そんなケアが満ち溢れる社会をつくっていきたい。それが、枝野代表が結党当時から掲げる「お互いさまで支え合う社会」につながるのだと思います。

 障がい者、性的少数者など少数者の方たちの声がこれまで政治に反映されなかったのは、自民党政権が民主主義は多数決だと言って弱い立場にある人、声を上げにくい人たちを切り捨ててきたからです。人口の半分を占める女性の声すら締め出されてきました。私たちはその声をしっかりと受け止めて、優先順位をつけられる政府を一日も早く自民党に代わって作りたいと思います。私は数少ない女性議員であるとともに、障がいを持つという複合課題を持つ少数者になりました。私自身が大きなスピーカーになったつもりでそうした立場の代弁者としても、さらにがむしゃらにやっていきたい。「政治には期待できない」とあきらめている方たちに「政治を道具として使おうよ」「立憲民主党を使ってください」「あなたの政治をつくりましょう」と呼びかけていきます。