衆院本会議で12月6日、政府提出の旧統一教会を巡る問題の被害救済をする新たな法案「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」と「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」(消費者契約法等改正案)について趣旨説明が行われ、立憲民主党を代表して柚木道義議員が質問しました。
柚木議員は、「立憲民主党と日本維新の会が提出した『悪質献金被害救済法案』をきっかけに与野党協議が何度も行われ、政府与党が今国会での被害者救済法の成立を決断したことは評価」すると述べた上で、政府案では実効性が不十分だとして、10項目にわたって問題点を指摘しました。
(1)「寄附の勧誘に際し」の書きぶりを修正し期間を明記すべきとの柚木議員の提案に対して、岸田総理は「際し」とは「入信の前後から寄附等に至るまでが対象の期間」であるとあらためて述べました。
(2)「困惑」の解釈の幅が狭い点を柚木議員が指摘したのについて、岸田総理は「マインドコントロールによる寄附は、多くの場合不安に乗じた勧誘といえる」「消費者契約法改正案と政府提出の新法案の取消権の対象になる」と述べ、さらに「明確に対象とは言えなくても配慮義務規定に抵触し、民法の不法行為、損害賠償請求により救済が可能」と述べました。
(3)「必要不可欠であることを告げる」との書きぶりでは、救済可能性が著しく低くなるとの柚木議員の指摘について、岸田総理は「要件は必ずしも『必要不可欠』という言葉そのままを告げる必要はなく、勧誘行為全体として必要性・切迫性が示されていれば適用可能」「多額の寄附に至る悪質勧誘の多くは必要性・切迫性を有していると考えられる」と述べました。
(4)「配慮義務」規定を「禁止行為」にすべきとの指摘について、岸田総理は「禁止行為は、どのような行為をしてはならないのか類型・要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきもの。配慮義務は、結果としての個人の状態を規定している」「いかなる行為であったとしても、そのような結果をもたらさないようにすべきとの規範を示したものであり、結果を招くより幅広い行為をとらえることができるため、民法上の認定・請求を容易にする効果が高い」と答えました。
(5)家族等の第三者による取消を可能にすべきとの指摘について、岸田総理は「債権者代位権により個人の財産権を侵害せずに、家族等の被害救済につなげることができる」と述べるとともに、「適切な行使により被害回復をはかるために支援は重要」と述べました。
(6)消費者契約法の罰則の導入について、岸田総理は「勧告命令など行政措置や罰則を導入するには、慎重な検討が必要」と述べました。
(7)見直し規定を3年から1年に短縮すべきとの指摘については、岸田総理は「必要に応じて」3年を前倒しすることも考えられると述べました。
(8)過去に不安を煽られたことによって生じた不安をその後も抱き続けることに乗じた寄附の場合についても、岸田総理は「禁止行為に該当し、取消が可能」「寄附当時は困惑し判断できないが、脱会した後に不安に乗じ困惑して寄附というのであれば、全額取消権を行使することが可能」と述べました。
(9)柚木議員は、「返金請求しないとの念書にサインをさせられた」等の実例を挙げ政府案で救済されるのか確認しました。岸田総理は「困惑状態でサインした念書は、公序良俗に反するとして無効となりうる」「困惑状態でサインした和解の合意、念書、ビデオ撮影すること自体が勧誘の違法性を基礎付けることになり、民法上の請求が認められやすくなる」「不法行為を隠ぺい、証拠隠滅、被害回復の妨害行為は社会的に許容できない」と述べました。
(10)旧統一教会の養子縁組について、岸田総理は「事実を確認し、昨日、厚労省が回答を受領した。厚労省において精査した結果に基づき適切に対応していく」と述べました。
最後に柚木議員は、長きにわたり被害者を救済することなく、旧統一教会にお墨付きを与えてきた政治こそが「今まさに責任をとるべき時」と訴え、そのためにも被害者や被害者支援に長年取り組んできた関係者が「この新法なら本当に被害者が救済される」と思うような救済新法となるよう政府、与野党各々が最後まで英知を結集すべきだと述べ、岸田総理のもう一歩の決断を求めました。