立憲民主党など野党は12月5日、旧統一教会問題に関する第31回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、旧統一教会2世の方から2世が抱える問題について、また元信者の方から献金や物品購入を行った後、返金を請求しないとの念書を書き、その原本が返還された話(原本返還は確認できる範囲で全国初の事例)を聞きました。弁護士連絡会の弁護士も出席し、関係省庁と意見交換を行いました。

■祝福前に生まれサタンと呼ばれ虐待をうけていた本田たまこさん

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 本田たまこさん(仮名)は、自身が生まれた後に母だけが教会に入信。本人はまったく信仰の経験がないもののかなりの被害を受けたと語りました。

 教会では「人類始祖アダムとエバ(イブ)が結ばれて原罪の無い子孫が繁栄していく予定だったにも関わらず、エバ(イブ)がサタン(悪魔)と堕落した結果、サタン(悪魔)の血が入った罪深い血糖をもつ子孫たちが生まれ今の人類として蔓延った。そして再臨のメシアである文鮮明の存在と祝福により罪のない血統になれる」という教えがあると紹介。

 本田さんは祝福より前に生まれたので、教会信者の母には「サタン」に見えるらしく幼い時期から「お前はずっとサタンだ」と言われ、当然説明もなくアザができるほど殴られたり、殺されそうになったなど壮絶な心理的・身体的虐待を受けたと語りました。一方で、祝福より後に生まれた本田さんの下のきょうだいに母は、サタンとは言わず、信教の押し付け的虐待をしていたと話しました。

 さらに父は信者ではないものの、父が稼いだお金や資産を次々と献金した母との夫婦喧嘩が増えたことや、少しでも自分の思い通りにならないと逆上してしまうような性格であったためか、父からも心理的・身体的・経済的・性的な虐待を受けて育ったと語りました。

 そして、「子どもを愛していない親などいない」といい世間は助けてくれず、母が生まれながらのサタンだと思っていることが苦しく悲しかったと語りました。きょうだいも母からの刷り込みで、本田さんを「悪い子なんだからそんなことをされても仕方がない」と考えている様子もあり「惨めで、悲しくて『生きていることが恥ずかしい』と感じていた」と話しました。

 要望として、(1)想像以上に被害が複雑で多様で深刻なことを知ってもらいたい(2)未成年の子ども(宗教2世)が安全に親と宗教から離れ、社会に守ってもらえる仕組み(信仰のある2世でも支援を求める人がいれば支援できるような仕組みが必要)を作って欲しい(3)精神疾患の治療や、未成年の子どもの自立までの物理的なサポートなど、過去と今に既に深刻な被害によって苦しんでいる2世3世たちへの直接的なサポート――を求めました。

 最後に、「未成年も大人も含め、統一教会により深刻な被害にあった人に対して教団と国の賠償責任もあるのではないか」と指摘し話を終えました。

■入信し8年、今年11月30日に返金請求しないと書いた念書が返還されたA子さん

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 A子さんは元信者の女性で、8年前に教会に入信し、今年11月に脱会。これまでの献金や物品購入は数十回におよび合計で約2500万円。

 今年9月下旬から10月上旬に区域長という立場の女性などが自宅を訪問し、過去の献金や物品購入は「教団や信者からの違法・不当なはたらきかけによるものはなく、自らの責任と判断で行った」「返金を請求しない」などとする旨の念書にサインを求められ、「私らも最近サインをしたから」と迫られサインをしてしまったと話しました。

 献金や物品購入は自分の本心ではなく、進んでやったわけではないと語り、先祖の因縁などを説かれ、家族が不幸になるからと言われ怖くなったため、周りから指示されてやったことがたくさんあったと語りました。

 そして11月18日に教団からの脱会を決意し、念書の撤回を求める手紙を地元の教会長宛にだしたところ、婦人部長ら2人が現れ、「献金したものを全部返してくれと言っていたら、その方の息子さんが自殺された」と返金を求めた別の信者の話をされ、「いったん神様に捧げたお金を返してくれというのは、せっかく上に上がっているのに落ちてしまう」との話もあったと語りました。

 その後、11月30日の消印で、地元の教会長から念書の原本が郵送で返還され、弁護士を通じて、献金の全額返金を請求する準備をしていると述べました。

 また、こうして念書が返還されたのは、関係者に確認した範囲では今回が全国で初めての事例だと語りました。

■新法・配慮義務は禁止規定にすべき 阿部克臣弁護士

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 全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士は、本田さんのような被害は、「今国会の寄付の規制だけでは対処しきれない」と語り、「今国会で解決することができなかった問題」「引き続き政府与野党で議論いただき、ぜひ被害の実態にあった政策・法律を作っていただきたい」と述べました。

 また、旧統一教会に代表される悪質献金被害を救済する法案(新法)で、寄付を勧誘する際の配慮義務を規定していることについて、「報道では勧告等の行政措置をつけ実効性を持たせるとしているが、被害救済抑止という意味では不十分」だとして、禁止規定にすべきだと述べました。

 3条の各号に規定する、「1号の個人の自由な意思を抑圧する、2号の寄付により生活の維持を困難にすることがないようにする、3号の法人名を明らかにする。または財産の使徒について誤認させないようにする――というのはどの法人が寄付を募るにあたっても『それはすべきではない』ことだ」と述べ、配慮すべきレベルの内容ではないと指摘しました。

 さらに「教会の被害についていえば、そもそも3条の配慮義務の内容は、これまでの過去の判例で認められているものものある」と指摘。「判例でも違法性を基礎づける要素として既に認められている」として「禁止規定とすることに合理的な根拠がある」と述べました。

 また、「他の法律をみても、例えば公益法人認定法の寄付の募集に関する禁止行為(17条)との対比からすれば、新法3条で配慮義務だけというのは、明らかに均衡を失しており、バランスが悪すぎる」などと指摘しました。

 「配慮義務によって、不法行為の認定が容易になるという効果はごく僅か」「端的に禁止規定として、『~してはならない』と規定していただければ、禁止規範としてより裁判官に強いメッセージを与えるもの」「違法性の認定にかなり役に立つ可能性がある」と話しました。

■被害者が覚書の撤回請求をし、法的にも早期に救済を 中川亮弁護士

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 弁護士連絡会の中川亮弁護士は、A子さんの話について「献金のときにも同じことを言っている。同じ手口で献金の返還請求を止めようとしている。一連の統一教会のやり口そのもの」と指摘。また、非常に定型的な文面なので、A子さんが所属していた教会だけではなく、他の教会でも同じようにされているのではないかと話しました。

 そして、「今回の例を元にして被害者がどんどん撤回請求をし、さらにそれが法的にも早期に救済されるような枠組みができることを切に望んでいる」と訴えました。

※今回のヒアリングは、これまで同様、被害者保護の観点から顔出しは無しとし、モザイクのかかった写真・映像も不可。音声は変え、ライブ配信や録画の配信は不可としています。