立憲民主党など野党は12月13日、旧統一教会問題に関する第32回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、成立した法律が実効性あるものとなるよう、被害者の方、被害者弁護士連絡会の方、ジャーナリストの方から話を聞き、関係省庁と意見交換をしました。また、旧統一教会に代表される悪質な高額献金被害を救済するための改正と新法が成立後、初めてのヒアリングです(写真上、右奥左から、阿部克臣弁護士、中川亮弁護士、鈴木エイト氏)。
ヒアリングの冒頭、山井和則衆院議員は、「(成立した法律は)救済につながりにくい(といった声や)、積み残し課題も指摘されている。私たちは歴史的な一歩を評価しながらも、本当に使える法律なのか、実効性を与野党協力してこれから検証していく必要がある」と述べました。その第一歩として、「これまでヒアリングした被害者家族の皆さんのケースが、今回成立した法律や岸田総理の答弁でどのように救済されるのかを検証していきたい」と説明しました。
中野容子さん(仮名、60代)のケースでは、母が1億円以上を教会に寄付し、その後、献金の返還請求や損害賠償請求を行わない旨の念書を作成。その様子は教会がビデオ撮影し、さらに同日、認知症ではないとの診断を求めかかりつけ医を受診していました。その後、中野さんが教会に献金の返金を求めているなか、母のアルツハイマー型認知症の確定診断がされ、2017年に東京地裁に提訴。2021年年に東京高裁に控訴したものの、念書があることなどから訴えは退けられました。
こうした状況での念書は無効となり得るとの説明が消費者庁からありました。ジャーナリストの鈴木エイトさんは、「ある程度踏み込んだ回答をされているので非常に期待をする」「今回の法律の逐条解説にもぜひ反映させていただきたい」と語りました。被害者弁護士連絡会の中川亮弁護士は「裁判になった場合に、念書が答弁に使えなくなったとことが大きい」と評価しました。同連絡会の阿部克臣弁護士は「司法でもきちんと(こうした念書を無効とする)判断を示していただきたい」と語りました。
鈴木未来さん(仮名、30代)は、両親が約1.6億円を献金。本年10月に全額返金を求めましたが、教会から3千万円返金が可能という返答があり、母が合意書にサインをしてしまい家庭が崩壊していると説明しました。こうした合意書にサインしたケースについて消費者庁は「マインドコントロール状態が解け、その当時困惑していたということを主張していただければ」、一方で「母自体が困惑していたとおっしゃっていただく必要がある」。また「脱会する支援も引き続き必要」と説明しました。
この他、阿部弁護士は、資産の凍結の必要性を挙げ、資産を個人や関連団体に移したり海外に移すなどの「資産隠し」を懸念。宗教法人法には財産保全の手続きがないと指摘。速やかな法整備を求めました。
また、解散請求に関連し、宗教法人法上の解散したことにより宗教団体としての債務や責任がなくなっては困ると指摘。こちらも法整備が必要であると語りました。さらに解散した後の宗教団体を規制する法律がないと指摘。オウム真理教の場合は団体規制法ができたが、そこまで強い法律でなくともいいとは思うが、何らかの観察をするような法律が必要だと指摘しました。
阿部弁護士は、厚生労働省から都道府県知事と市町村長、旧統一教会に対し、養子縁組のあっせんについての法律の適正な運用と相談体制について通知したことに触れ、教会の養子縁組の目的は信仰目的だとした上で、過去の家庭裁判所の審判例で「神社を継がせる」「僧侶にする」といった養子縁組は不許可になっていると指摘。裁判所に対しても法の適切な運用を求めることをしていただきたいと関係省庁に求めました。
※今回のヒアリングは、これまで同様、被害者保護の観点から顔出しは無しとし、モザイクのかかった写真・映像も不可。中野さん以外の音声は変え、ライブ配信や録画の配信は不可としています。