枝野幸男代表は1日、北海道根室市を訪れ、石垣雅敏根室市長をあいさつをした後、北方領土元島民関係者と懇談。その後、納沙布岬から北方領土を視察しました。また、同市と中標津町で街頭演説を行いました。
■北方領土元島民関係者との懇談
北方領土元島民関係者との懇談では、千島歯舞諸島居住者連盟副理事長の河田弘登志さんから次の3点の要望が出された後、同連盟根室支部支部長の宮谷内亮一さん、支部副支部長の角鹿泰司さん、野潟龍彦さんからそれぞれ話しがありました。党からは、枝野代表の他、沖縄・北方問題特別委員の勝部賢志参院議員、篠田奈保子・北海道7区総支部長、壬生勝則・北海道議らが参加しました。
【要望事項】
1.四島返還に向けた強力な外交交渉の実施
2.財産権の反故に関する方針の明確化、財産権を行使できなかったことの損失等への早急な措置の実施
3.北方四島交流等事業の円滑な実施と安全対策の徹底
宮谷さんは、「戦後75年経っても不透明。菅総理の北方領土に対する熱意がまったく伝わってこない」と指摘。「そうしているうちにも、一人また一人と他界をしていく」「一人でも生きているうちに島返還への道筋を示し、希望を与えることこそ、政治の大きな役割だ」と訴えました。
また、「今年は新型コロナ感染症の影響で北方領土へのビザなし渡航が中止になったが、上陸せずとも海洋上から祖先のお墓に慰霊ができるのではないか」と話しました。
角鹿さんは、「長年築きあげてきた基盤、財産の一切を島に残して裸一貫で命からがら引き上げてきた。引き上げてきてからも生活が大変だったと」と当時小学生だった時のことを振り返りました。そして、これまで北方領土返還の運動しているのは、自由訪問やビザなし渡航するというのが目的ではなく「島に帰るためだ」と訴えました。
野潟さんは、島で生まれたのではなく居住者の2世として返還活動をしていると語り、「(一番の目的は返還されることだが、)それまでの間、運動するために国内でできることは是非やって欲しい。外交の話ではない」と語り、例えば財産について国としての考え方を示すなど、後を継ぐ世代のために希望が見えることをやって欲しいと訴えました。
また、返還運動を継続するためにも地域経済の基盤が重要だとして、沿岸漁業振興と日露で進めている「北方四島における共同経済活動」の拠点として今年共用を開始した「根室市栽培漁業研究センター」と同規模のものがもう一つは必要だと指摘しました。
枝野代表は、北方領土問題が後退しているとの認識を示し、「われわれの正当な主張を、堂々と毅然と訴えていく基本的な立ち位置をしっかりと持ち、そしてなんとか状況を動かしていけるようにわれわれも頑張っていきたい」と応えました。
さらに、「国全体の意識がこれまでよりも弱くなってしまっているのではないか」「小笠原、奄美、沖縄が戻り、戻っていないのはどこなのか」「この問題を忘れないどころか、もっと強く意識して皆さんの活動を全国民で支えていく流れを作れるように頑張っていきたい」と語りました。
篠田総支部長は、「調査を地道にやりながら財産権の補償等について前進させていきたい」と語りました。
勝部参院議員は、政府が「わが国が主権を有する島々」と「日本固有の領土」との表現を避けていること、この2つの違いについて委員会で茂木敏充大臣に質問したところ「どう違うのか、明確な答弁がなかった」と話すとともに、「後継者がこれからも運動を続けていける体制づくりと(例えば子どもたちの教育の課題)、日本全国民が同じような思いを持って取り組めることが大切」との認識を示しました。
壬生道議は、道議会で鈴木知事に北方領土問題を質問した際、「国頼みという姿勢がありありという答弁」だったと振り返り、「しっかりと領土を有する地域のトップリーダーとして、国に強く迫ってくれ、取り組みを強化してくれ」「領土問題は順位がつけられるものではない。何よりも国の威信をかけて取り返す取り組みを主張してくれ」と訴えたことを報告しました。
■納沙布岬より北方領土視察、及び北方館視察
納沙布岬では、北方館官庁の小田嶋英男さんの案内で北方領土の島々を視察。引き続き、北方館で北方領土問題の発声の状況や歴史的経緯などについて説明を受けました。
視察後に記者団の取材に応じた枝野代表は、内閣官房長官であり沖縄・北方対策担当大臣だった約10年前に視察したことを振り返り、「10年前に訪ねた時以上に近さを強く感じた。その近さゆえ水産関係の皆さんは、この75年の間には命を落とされた方もいるわけですし、今もこんな目の前の漁場が使えないということに対する、歯がゆさと言うか、そういったものは想像を超えたものなんだろうと改めて痛感した」と語りました。
そして「残念ながらここ数年、北方四島の返還問題は前進というよりも残念ながら後退してるのではないか」「わが国の固有の領土であり、歴史的にも法的にもわが方の主張が正当なんだという毅然とした姿勢が、若干この間の駆け引きと言いうか、そうしたものに少し陰に隠れてしまっているのではないかと危惧をしている。しっかりとわが国の立場を毅然と明確に示していく。すべてはそこからだと(国会で)強く求めていく」と語りました。
さらに「毅然とした姿勢でロシア、あるいは関係する国々との間の協議を自信を持って進めていくことは、本来であれば党派関係なく当然の姿勢だと思っている。党派性よりも当然のことを当然のこととして堂々ときちんと主張していくことが大事だ」と述べました。
党としての外交政策を問われると、「外交姿勢であれば、ある意味で綱領などで明確だと思っている。外交政策となると、相手のあるものが外交なので、端的に申し上げれば、もう数日でアメリカの大統領にどちらがなるのかによって、この4年間、日本の具体的な取りうる外交政策は違わざるを得ない。従ってあまり硬直的なことを決めるのではなく、基本的な姿勢を明確にしていく中で、相手の状況に応じて、わが国の国益を最大化されていくことが外交だと思っている」と語りました。
元島民の方々から出てきた財産権の話について国益とのバランスで極めて微妙な問題ではないかとの問いには、「国益の問題と矛盾なく、元島民の皆さんの要望に応えていくことはできると思っている。本来行使できるべき財産権が国際関係上の事情で行使できない状況が75年続いてるので、それについて国家としてしっかり手当をしていくのは、外交的にわが国の主権を明確に主張することとは矛盾せずできる話。きちんと政府に求めていきたい」と語りました。
■街頭演説
北海道根室振興局前と中標津町総合文化会館「しるべっと」前広場で街頭演説を行った枝野代表は、「自助努力を迫る冷たい政治と、共に支え合う暖かい日本を作っていく政治」の2つの選択肢が明らかになってきたと語り、「生きていくために不可欠な食べ物や水や空気は外国に頼らない。それが安定した社会。競争だけではうまくいかない。食糧や水、空気を守ってくれている一次産業の方々が安定して仕事を続けていけるように下支えする仕組みが必要」「医療、介護、保育などのベーシックサービスが不足しているから、若い人が故郷に住み続けられない状況がある。どこに住んでいても大きな違いがないように政治が支えるべき。そうすれば地方に雇用の場も生み出される。どこに住んでいても安心して暮らせる日本を取り戻す」と訴えました。
篠田支部長は、「これまで多重債務・性的被害などに苦しんでいる方の法律相談を行なってきた。この20年で状況は悪くなったのに、自助を強調する総理の所信表明を聞いて愕然とした。努力をしてもどうにもならない方が沢山いる。自助を強調するのはおかしい」と訴えました。さらに「政治の現場では、さまざまな生活者の視点が足りない。女性、子どもの問題が、『女子どものこと』として政策のなかで優先順位を低められ、ないがしろにされてきた」と指摘。社会構造を変えるため、そのためには政治を変えるしかないと決意し政治の世界に挑戦することにしたと語りました。
■視察時の記者からの取材
地元以外の記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。
記者)明日から国会では予算委員会で本格的な論戦が菅総理に対して始まります。2日目に枝野代表も質問に立たれると思いますが、コロナ禍もあり、日本学術会議の問題もまだ説明が十分にされていないという指摘があるなか、どのような姿勢で、どのような論点でただしたいお考えでしょうか
枝野)論点については、初日に大変期待できる仲間が立ちますので、それに対する答えぶりも見た上で、最終判断しないといけないと思っていますが、とにかく聞かれたことに答えない、まったく論理性のない答弁をしらっと行うのは、この本会議の3日間で明確になっていますので、正面から答えない場合には、そのことが分かるように、あるいは論理的に成り立っていない答弁がなされれば、そのことが見ていただいている方に分かるように、予算委員会の一問一答であれば示していくことができるので、それをきちんとやっていきたい。
記者)なぜ今回は序盤から質問に立たれることにしたのでしょうか
記者)執行役員会などでも話題になり、お互いに新しい政権ができ、新しい党になったスタートの大事な局面なので、代表自ら先頭に立つべきだと勧めていただきました。大きな構えを作ったことで大変才能あふれる多士済済の仲間がいるので、そういったメンバーに役割分担していただけばいいかなと思っていたのですが、大事な局面はちゃんと先頭に立てと強く勧められましたので、その期待に応えなければいけないなということです。
記者)政府が3次補正予算の検討を始めており、菅総理は10日にも政府予算の編成の指示を出すようですが、こうした3次補正の使い道などについて
枝野)まず使い道の前に、今年は残念ながら大幅な税収の減少、当初見込みよりも税収が大幅に減る状況にあります。これは手当てをしなければいけないということになります。それから10兆円の予備費を積んで、これが必ずしも効果的に使われていないという状況があります。まずこの2つのことについて、しっかりと整理をしていただくことが補正予算にあったっての最初のハードルであると思っています。その上で現下の経済状況、あるいは社会状況を踏まえれば、当然手当しなければならないことは山ほどある。それは私の代表質問でも申し上げ、求めたことを実行していただくにも、補正予算そのものは必要ですが、まず税収の大幅な減少と、10兆円の予備費、この問題についてちゃんと整理をしていただきたい。