性被害に声を上げる「#MeToo」に関わってから生き方が一変し、職場で女性がパンプス着用を義務づけられていることに抗議する「#KuToo」発信者となった石川優実さん。ジェンダー問題を知った経緯や政治との関わり、提案を聞きました(写真上は、10月27日の党ジェンダー平等推進本部の会議で発言する石川さん)。

 ジェンダーの問題に興味をもったのは2017年10月に起きた「#MeToo」運動がきっかけです。芸能界には、セクハラとか性暴力とかすごく多いのです。ただ、私がされていたことが性暴力だとは知りませんでした。
 #MeTooがムーブメントとして出てきて、ジェンダーの問題だったと気づいて、(SNS等で)発信するようになって、フェミニストの方とか女性問題に取り組んでいる方から連絡をもらうようになりました。それでどんどんつながっていき、「結局、政治が関係しているのね」という感じで知りました。

怒っていいことだと分かりませんでした

 卒業した公立高校ではジェンダー教育は一切ありませんでした。地元の岐阜にいた時は、みんな知らなかったと思います。みんなが同じような環境で育っているので、知識を持っている人に出会わずに生きていってしまう。家のそばに男女共同参画センターみたいなところもありませんでした。

 セクハラや性暴力にモヤモヤはするし、嫌な気持ちになるけど、これがジェンダー差別だと分かりませんでした。怒っていいことだということも分かりませんでした。自分もだし、周りもそういう状態でした。ジェンダーという言葉を知らなかったし、教えてくれる場所もありませんでした。
 今考えると、女だから触られたり、馬鹿にされたりといった扱いを受けたのだなと。日常的な細かなことやセクハラとかは、嫌なことだけど、それが女性差別の問題と関係があるなんて思っていませんでした。
 #MeTooを知って初めて、自分に起きたセクハラや性暴力をブログに書いたら反響がありました。「あなたがされたことは犯罪だ」「あなたは被害者だ」と言われて、「被害だったのだ」みたいな。それでジェンダー問題を調べるようになりました。

普通に生活していてもジェンダー問題を知ることができる社会になってくれないと

 私が#KuToo活動をするようになって、議員さんや専門家の方とお話をする機会ができました。その人たちと、高卒、非正規でしか働いた経験がない私の生活とでは、同じ社会に生きているとは思えないくらいの壁を感じます。
 ジェンダーの問題に気づけたのは、自らが性被害に遭っているから。(性被害に)遭わないと、ジェンダー問題にアクセスできなかったと思います。大学などで学ぶか、自分がすごく関心をもっていないと、ジェンダー問題を知れない、学べない状況があります。
 ジェンダーギャップ指数が日本は低いことを知らない人がメチャクチャ多い。自分もそうでした。普通に生活していてもジェンダー問題を知ることができる社会になってくれないと、なかなか解決していかないと思います。

自分の生活と政治がつながっていると、理解すれば必ず選挙に行く

 私は、正直、選挙に行ってなかった。自分が行くものじゃないと思っていたくらい。やっぱり(政治に)興味を持ってもらわないと。自分の生活と政治がつながっていると、みんなが理解すれば必ず選挙に行くと思います。
 自分の生活と選挙がまさか関係あるなんて知らないと思います。そこを何とか分かってもらえるようなアプローチや活動があるといいなと思っています。 
 芸能人や影響力のある人が政治的な発言をしてくれるのは、どの党を支持していたとしても、良いことだと思います。皆が普通に生きていて、特別に調べようとしなくても自然に政治の情報が入ってくる状況にしてもらいたい。
 日本は、ちょっとでも文句言うとよくないみたいな、「批判するな」精神じゃないですか。それが働く場でも、政治でも、たぶん学校でもそうですよね。それに疑問を持たずに生きている感覚なんじゃないですか。どんどん知っていったら自民党を支持できなくなるだろうと思います。

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若い子がどこに興味をもって、どこから情報を仕入れるかをしっかり対策

 議員さんが芸能人になっちゃえばいいのにといつも思っています。「あの議員さん、かっこいいよな」とか、「面白い」という見られ方をすると、みんなの興味の持ち方も変わってきます。
 立憲民主党さんは新しくインスタを再スタートしたじゃないですか。ああいったのもいい。若い子がどこに興味をもって、どこから情報を仕入れるかをしっかり対策して、「いつもインスタで何か目に付くな」とか、「写真やデザインが気になるな」とか、そう見られると、そこから自然に興味を持てるようになります。YouTubeやTiktokを使うのもいいと思います。

自分の思うように表現できるので、全く開放感が違うし、これが私なのだなと 

 女だからこういうことをしちゃいけないとか、こうしないといけないとかに囚われて生きてきました。だけど、ジェンダーの問題を知るようになって、そんなことなかったのだなとなったわけです。 
 今は、自分の思ったことを思うように表現できるので、全く開放感が違うし、これが私なのだなと。誰かが作った私ではなくて、ちゃんと自分が主体的に生きているという感じがします。
 「ジェンダー」を本当に知らない中で生きていたのと、いろんな知識を得た今とではすごく違います。生きている世界が一緒とは思えないくらい。やっと人権を得たみたいな感覚です。