衆院予算委員会で1日、2021年度予算に関し集中審議「内外の諸課題」が開かれ、立憲民主党のトップバッターとして質問に立った枝野幸男代表は、東日本大震災、東京電力福島第1原発事故からの復興、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策等をめぐり総理のリーダーシップを強く求めました。

 委員会の冒頭、加藤官房長官は、総務省の幹部らが衛星放送関連会社に勤める菅総理の長男などから接待を受けていた山田真貴子内閣広報官が2月28日に体調不良で入院、本人からは辞表が提出され、政府は同日これを受理したと報告。「委員会の審議に迷惑をかけて大変申し訳ない」と陳謝しました。

 枝野代表は冒頭、山田広報官の辞職について「遅きに失したとは思わないか」と、続投させた菅総理の対応を問題視。「何より国民の常識を超えた接待が曖昧、うやむやになってしまう総理の責任は大きい」と批判しました。

東日本大震災・原発事故から10年

 その上で、東日本大震災、東京電力福島第1原発事故からまもなく10年を迎えるにあたって、「あらためて亡くなられた皆さんへの哀悼の意を示すとともに、大切な方を失くした方々にお悔やみを申し上げる。この10年、復旧・復興に尽力されてきた被災者の皆さん、ご支援されてきた皆さんに敬意と感謝を申し上げる。10年経ったが、原発事故の影響でいまなおふるさとに戻れない方、さまざまな形でいまなお被災の影響を受けご苦労されている方がたくさんおられる。ご期待に応えきれていない政治の状況について、私からもお詫び申し上げる」と表明。「福島の復興は始まったばかりだと私は思っている。そして、津波被災地についても、ハードは充実してきたが、失われた生業や地域コミュニティなど、ソフトの復興は到底十分ではない状況だ」と述べ、(1)10年を迎えることが風化させる節目になってはいけないという政治の明確なメッセージの発信(2)福島の復興や、生業や地域コミュニティの再建に向けて政治が支えていくという決意の表明(3)福島第1原発事故の緊急事態宣言はいまも発令中で現在進行中だという強い意識を持つこと――の3点を、総理に強く訴えました。

 総理就任後、岩手、宮城、福島の被災3県を訪れ、インフラ住宅や商店街などを視察したという菅総理は、「復興は着実に進んでいる」との認識を示す一方、住宅再建が進む中で新しい場所での地域コミュニティの形成や、被災事業者に対する販路開拓といった支援策、資金については国が責任をもって援助していきたいと発言。2月13日の福島県沖地震を受け、被害の大きかったホテルや中小企業などに対してはグループ補助金を使った支援を決めたとして、「被災地に寄り添いながら、東北の復興に全力で取り組んでいきたい」などと述べました。

 枝野代表は、福島県沖地震に係る支援策として、中小企業等グループ補助金の特例措置は評価した上で、「もっと幅広い、広範な支援措置をしてもらいたい。残念ながら、直接被災された地域以外では風化を感じざるを得ないことを大変心配している。風化をさせないという強い決意でさらにメッセージを発信していただいたい」と重ねて求めました。

COVID-19対策

 COVID-19をめぐっては、いま新規感染者数が一定減少していること、首都圏を除き緊急事態宣言が解除されたことに、「これは政治や行政がやった成果ではまったくない。例えば時短に協力していただいた飲食店の皆さん、協力金すらないのに歯を食いしばっていただいている小劇場やミニシアターなど各種イベント関連業者の皆さん、観光、運送業者、関連する多くの民間の皆さんが耐えてくださったからこうした状況をようやく作れている。幅広く言えば、やりたいことを我慢していただいている多くの国民の皆さん、現場でご苦労いただいている医療や介護などのエッセンシャルワーカーの皆さんがこういう状況を何とか作ってくださっていると思っている。こうした皆さんに対して十分な補償や支援が出せていない状況のなかでご協力いただいていること、政府にかわってお詫びを申し上げたい」と発言。いま一番大事なことはリバウンドをさせないことだとして、26日の首都圏を除く6府県の緊急事態宣言解除については、政府の諮問委員会の専門家からもリバウンドを警戒する声が多数上がったほか、多くの有識者も懸念を示すなか、「総理が、総理の政治責任として決めたことは強く申し上げておきたい」と苦言を呈しました。

 その上で、今回の先行解除については、段取り自体が合理的ではないとして、解除の前に、営業時間の短縮その他でご苦労されている皆さんに対して、リバウンドが起きないよう、少しずつ着実に広げていくことが先ではないかと主張。「総理や政府が出す施策や発信は、それ事態がアナウンス効果を持つ。新聞などで『緊急事態宣言解除』という見出しだけを見る皆さんにとっては、厳しい状況は超えた、我慢したことを緩めてのいいのだなというメッセージになっている。総理は就任以来一生懸命やってきたのはGoToキャンペーンで、どんどん旅行に行ってください、どんどん会食に行ってくださいと勧めてきた。そしてデジタル化であり、ハンコの廃止。さまざまな対応が後手後手に回ってきたのは否定できない」と述べ、総理が政策の優先順位を誤った結果、感染は再拡大、世界的なワクチンの獲得競争にも遅れたと批判しました。

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 枝野代表は、あらためて立憲民主党が掲げる「『zeroコロナ』戦略」を説き、変異株が世界中で次々と発生するなか、特に出入国管理の徹底(すべての入国者をホテル隔離)が重要だと強調。あわせて、立憲民主党など野党が1年以上も前から主張し続けてきたPCR検査体制の拡大、エッセンシャルワーカー等への無料定期検査や、陽性者の周辺関係者を広く無料で検査することなどが必要だと訴えました。

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 最後に、山田広報官をはじめ、総務省幹部への接待問題について、総理の長男であると同時に、総理の総務大臣時代の政治任用による秘書官であることから、「菅総理の政治活動と無関係ではない」と指摘。総務省のみならず、農林水産省では元大臣が絡んだ汚職事件に関わったとしてトップ官僚が処分を受けたことを深刻に受け止め、「いつのまにか緩んできたのは、忖度をさせる政治、けじめをつけない政治が官僚の皆さんのところにいってしまっているのではないか。官僚のモラルが低下してしまったら、この国はもたない。総理のご子息が勧誘した状況のなかで、官僚の皆さんだけが処分される、トカゲのしっぽを切られる、政治の側は何にもなしかと。これで官僚の皆さんが強いモチベーションでこの国のためにやってもらえるか私は心配で仕方がない」と述べ、質問を終えました。

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