枝野幸男代表は5日、ひとり親・ふたり親を問わず困窮子育て世帯への支援を求める要請を、NPO法人キッズドア理事長の渡辺由美子さん、日本大学文理学部教授の末冨芳さん、あしなが育英会事務局次長の花岡洋行さんから受けました。福山哲郎幹事長、逢坂誠二新型コロナウイルス対策本部長、徳永エリ政務調査会長代理、宮沢由佳つながる本部事務局長が同席しました。

 日本の子どもの貧困支援を行うNPO法人キッズドアの渡辺さんは、「ひとり親、ふたり親を問わず、困窮する子育て家庭にいち早く、できれば新学期の準備ができるようなタイミングで現金給付をお願いしたい」と要望。同団体の調査で、家賃・電気・ガス・水道・携帯電話などの支払いができなかったことがあると回答したひとり親世帯が21%であるのに対し、ふたり親世帯では37%と、ふたり親のほうが多いこと。貯蓄も10万円未満というふたり親世帯が51%にのぼり、「本当に厳しい状況」だと訴えました。

 さらに「ふたり親でお子さんが沢山いるご家庭、いまの日本では一番褒められるべき家庭が大変」だと語り、「もやしと豆腐しか食べさせられない」「子どもに新学期の洋服が買ってあげられない」「貸付等も既に借り尽くした」「貸付も全部借りて首が回らないから死のうと思った」という厳しい状況にある声を紹介しました。

 日本大学教授の末冨さんは、子どもの貧困に関する地方自治体の実態調査では、コロナの前からひとり親の困窮世帯よりも、ふたり親困窮世帯の絶対数が多いことが明らかになっているとのデータを示しながら、教育の無償化については所得で判定しているのに対し、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)関連の支援については、ひとり親という線引きがされており、そのことによりボリュームゾーンの困窮世帯であるふたり親、特に多子世帯を置き去りにしていると指摘しました。

 そして、「親が一人か二人かで子どもたちを差別しないでいただきたい。子どもたちの命と未来をいま守らなければ、取り返しがつかないことになる」と切実に訴えました。

 病気、災害、自死などで親を亡くした子どもたちと、親が重度障がいで働けない子どもたちの進学を支援しているあしなが育英会の花岡さんは、全奨学生を対象に緊急支援金を昨年4月に15万円、12月にも20万円を支給したことを報告。昨年11月に実施したアンケートは回答率が50%を超え、保護者の36.7%が「収入が減った」、高校生の27.1%が「食費を節約するようになったと感じる」、大学生の25.7%が「退学を検討」といった結果が出ていることを説明しました。さらに政府からの特別定額給付金の使いみちは77.5%が「生活費」と回答。旅行などの遊興費関連に使用された例はほとんどなく、GoToトラベルなどは無縁の出来事であり、「待ったなしの状況」だと訴えました。

 こうした話を受け、逢坂対策本部長は、「子どもの貧困は、一生に影響が及ぶ。一過性のものではない。それだけにわれわれも相当必死」だと語りました。そして政府が、定額給付金は貯蓄に回り消費に回っていない、つまりそんなに困っている人がいないといった見方をしていると指摘し、「マクロで見ればそうだが、政治が見るのはマクロではない。個別に困っている人がいたら、そこにどうやって手を差し伸べられるか。今の政府にはそこが見えていない」「目の前に困っている人がいるのに、なぜ見えないのか」と語りました。

 また、低所得の住民税非課税世帯や新型コロナウイルス感染症により大幅に減収した世帯等に対して1人10万円を支給する「コロナ特別給付金法案」を提出したことを報告しました。

 徳永政調会長代理は、「ただでさえ子どもが多い家族は大変なのに、父も母も仕事をなくしてしまうのは、どれだけ厳しい状況か」「しっかりと迅速に対応しなければならないのに、本当に冷たい政府だとつくづく思う」「私たちも力不足のところはあるかもしれませんが、しっかりと支援が実現するようにこれからも声を上げ、頑張っていく」と語りました。

 福山幹事長は、「(困っている状況が)見えていないのもあるが、菅総理は、そういう人たちは生活保護に行けばいいだろうという発想が根底にある。それがそもそも出発点として間違っている」「バラマキだと散々文句や批判をされたが、子どもは親の所得によって線引きされるべきではないという理念があったので、(民主党政権の)子ども手当は所得制限がなかった」「同じ政治でも、根底のところで、全然理念違う」「力不足だが、声を上げていきたい」と語りました。

 枝野代表は、「われわれも最大限やっていきたいと思うが、残念ながら国会の中だけでは動かない」「ぜひいろいろなところで、お互い全力で声を上げて、なんとか早く成果につなげたい」と語りました。