立憲民主党は3月30日に消費者庁、同月31日に法務省を訪れ、成年年齢引下げに係る未成年者取消権の喪失への対応の要請を行いました。要請には立憲民主党から消費者庁に宮沢由佳消費者部会長、柚木道義消費者副部会長、川内博史政調会長代行、尾辻かな子衆院議員、法務省に真山勇一法務部会長、宮沢消費者部会長、柚木消費者副部会長、屋良朝博、吉田統彦両衆院議員、岸真紀子参院議員が参加しました。

 これまでの成年年齢引下げの議論では、引下げを行うと消費者被害の拡大などさまざまな問題が生じるおそれがあるため、引下げの法整備を行うには、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要であること、未成年者取消権の存在は悪質業者に対して、未成年者を契約の対象にしないという大きな抑止力になっているものと考えられ、成年年齢が引き下げられた場合、18歳、19歳の若年者が悪質業者のターゲットにされ、消費者被害が拡大する危険があることが指摘されていました。

 しかし、未成年者取消権喪失に対応する法整備は、消費者契約法のほんの一部の取引類型への取消権でしかなされておらず、また、成年年齢引下げについては、国民の十分な理解が進んでいるとはいえないことは明らかです。18歳、19歳の若者が成年となるそのスタートラインから悪質業者による消費者被害に遭うことがないよう、早急に対応すべき以下の7点について要請を行いました。

1.民法の成年年齢引下げが施行されるまでに、未成年者取消権の喪失を補うに足る法整備(つけ込み型不当勧誘に対する包括的な取消権など)を実現すること

2.特定商取引法等に規定されているクーリング・オフや、電気通信事業法等に規定されている類似の制度に関して、18歳、19歳の若年者に対し、その期間を拡大すること

3.1、2の対策ができない場合には、暫定措置として、18歳、19歳の若年者に対し、未成年者取消権の適用を行うこと

4.クレジットカード、貸金関係などにおいて、業界の自主的取組に任せるだけでなく、携帯やネット通販などの若年者が締結しやすい契約については積極的な若年者保護対策を行うこと

5.若年者の被害が拡大しやすい連鎖販売取引(マルチ商法)に対する消費者教育を重点的に行うとともに、法執行を強化し、消費者被害の拡大防止のために22歳以下の者との取引を禁止するなどについて検討すること

6.全国において若年者への消費者教育を徹底するため、地方消費者行政強化交付金における補助率2分の1を撤廃し、若年者への消費者教育に関しては、国が地方消費者行政強化交付金において全額を負担すること

7.「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」(議長:法務大臣)の役割を明確化し、消費者被害が拡大しないような施策等について必要な対策を検討すること

■消費者担当大臣への申し入れ

 3月30日の井上信治消費者担当大臣への要請では、宮沢消費者部会長から、成年年齢引下げの一年前を迎える前にと伺った、成年年齢引下げの係る未成年者取消権の喪失など不安があること、若い人たちに不利益のないように一緒に考えていただきたいと要請しました。2009年の法制審議会でしっかりと法整備を行っていくべきとの報告があったにも関わらず、まだしっかりした対策がとられていないことを危惧していること、これを機会に、大臣はいまからやっていくとおっしゃっているが、わたしたちとしては遅いのではないか、安心して1年前を迎えるべきであると発言しました。

 柚木消費者副部会長からは、未成年であれば持っていた未成年者取消権がなくなってしまうことに対し、十分な被害防止がなされるように国会において附帯決議されてきたが、なかなか検討会が進んでいない状況であることに鑑み、成年年齢引下げに対応する法整備や18歳、19歳に十分な対応がなされるまでのクーリングオフ期間の拡大、18歳、19歳について、未成年者取消権の適用を継続すること等、要請を行いました。また、今回の要請文には記載はないが、菅政権の目玉の政策であるデジタル推進について、いろいろなことがデジタル化されていく中、今国会で政府から提出されている特定商取引法等改正案では、本人の同意があれば契約書面を、電子化できるようになっており、これまで紙だったら被害に巻き込まれたら証拠が残り、弁護士や消費者相談センターに相談できたが、困難になってしまうという問題があり、被害防止よりも被害を拡大してしまう懸念について、菅総理が先日国会答弁で、そこまでは承知していなかったので必要な対応を検討しておきたいと答弁したことについても問題提起しました。

 川内政調会長代行からは、デジタル化の負の側面として、若年成人、高齢者、障碍のある皆様、デジタルデバイドの観点で、どのように消費者被害を止めていくか特に注力していただきたい、特に18歳、19歳の若年成人については法制審でも特別な年齢だということで、少年法でも特別な対応をすることになっていることから、民法上の契約のことについても18歳、19歳については、特別な対応が必要ではないかと問題提起しました。18歳、19歳は特別の年齢であることを強調し、消費者被害の拡大を防止する観点で、まだ1年あるということではなく、もうあと1年しかないという考え方で若年成人の皆さんをどう消費者被害から守っていくのかという観点で、未成年者取消権を若年成人については当分の間担保すべきと申し入れました。今国会に提出されている特定商取引法等改正案の対案として、成年年齢引下げの対応と契約書電子化の対応を含んだ対案について、すでに党の会議で法案登録をすませており、可及的速やかに野党共同で提案をし、特定商取引法等改正案の審議の際に堂々たる審議ができるようにしていと報告がありました。

 尾辻衆院議員からは、未成年取消権がなくなることに代わって、本来は消費者契約法で担保することになっていたが、前回の改正は取消権の中でも非常に限定された類型のものになっていることを共有しました。「正直、未成年者取消権のなくなったところをカバーできているものではない。本来、来年の成年年齢引下げまでに、消費者契約法の改正がすべきであることから、一日も早く包括的つけ込み型勧誘に対応するような広がりある取消権を含む消費者契約法改正を来年4月までにしていただきたい」との旨、要請しました。そもそも、前回の消費者契約法の改正では、今回の成年年齢引下げを迎えることでかなりゆがめられる改正となり、本来、消費者契約法の改正は、幅広く高齢者も含めて取り消しをするものだったのに、この未成年の取消権の分、カバーしなくてはいけないからと、「社会的経験が乏しいから」という、これまで消費者委員会で議論されていなかった文言が入り、限定されたものになってしまっていることを共有しました。

 井上消費者担当大臣からは、18歳、19歳の方々が消費者トラブルに遭わないようにという思いは一致していると発言がありました。そのためにどうするかについては「いろいろなご意見があって、法律として18歳、19歳を明確にして書く方法もあるが、運用でそれぞれの状況にあわせて柔軟な対応をしていくほうが良い部分もあると認識しており、成年年齢引下げまでまだ1年間あるので、成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーンの中でしっかり対応し、引き続き検討もしていきたい」との旨、発言がありました。特定商取引法等改正案については、若干誤解やすれ違いもあり、あくまで原則書面で、本人の同意がある場合に限っており、施行期間1年の間に、政省令でしっかり縛ることで悪質な事業者がそんなことしないように進めたいとの返答がありました。

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消費者担当大臣への申し入れの後のぶら下がり取材。左から川内政調会長代行、尾辻議員、宮沢消費者部会長、柚木消費者副部会長
■法務大臣への申し入れ
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左から上川法務大臣、真山部会長、宮沢部会長、1人おいて柚木副部会長、1人おいて吉田衆院議院、岸参院議員、屋良衆院議員

 3月31日、上川陽子法務大臣への要請では、真山法務部会長から、デジタル社会になってきて、若者はネット販売に慣れている、書面がなくて、スマートフォンなどの画面だけで確認することは、書面であれば簡単に分かることも見過ごされて被害に遭う可能性がある、危険な状態にあるとの懸念を訴えました。今国会で少年法改正案が審議されるが、18歳、19歳に対しては多少刑法を軽くする必要があるとの議論があり、本件でも同様であると考えるとの発言がありました。

 宮沢消費者部会長からは、2009年の法制審議会において成年年齢引下げに対応した法整備を行うことをいっていましたが、1年前にして不安が払しょくされていない現状があり、7つの要請項目について、昨日は消費者大臣に要請し、今日は法務大臣に要請しました。青少年が犠牲にならないよう、いまでは遅い、いまからでは遅いという気持ちで持って、しっかりと子どもたちを守っていくためになにをしていくべきか、一緒に考えていきたいと発言しました。

 柚木消費者副部会長からは、明日でちょうど成年年齢引下げに一年前になるにもかかわらず、18歳、19歳の未成年者の皆さんがこれまで持っていた契約の取消権、親御さんが承諾しなければ契約できないといった条件がなくなることについて、世論調査の3分の2の方が認識していない中で、未成年者取消権にも対応できる消費者契約法の取消権について政府では検討会を何回も行っているものの、附帯決議の要求は実現していません。このままではノーガードで社会に放り出すことになるとの懸念を伝えました。先日の国会答弁での菅総理の発言もあったが、契約書面で本人同意があれば電子書面で良いとすることについて、せっかく特商法預託法を改正しても、被害が増えてしまう、むしろ被害拡大法案になってしまうのではないか、という懸念があり、大臣が一生懸命取り組んでいても穴の開いたバケツに水を入れているようなものであることを共有しました。わたしたちは今国会に提出された特定商取引法等改正案の対案として、特定商取引法や消費者契約法の改正案を提出する見込みであると報告がありました。

 屋良衆議院議員からは、成年年齢引下げに関連する未成年者取消権というのは、若年者を守るというガード以上に抑止力が強く働いていたものだが、それがなくなってしまう、法整備について附帯決議や付言がついていたけど、手つかずの状態ということについては、早めに対応を何とかしていかないといけない状態であることから、大臣に尽力いただきたいと要請しました。18歳、19歳の若年者に対しては、取消権があるので、業者もリスクを冒してまで商売のターゲットにしてこなかった、守るセーフティガードがなくなり、抑止力もなくなる状況に18歳、19歳若年層を放り込むような状況だけは避けてほしいと思うと発言しました。

 吉田衆院議員からは、教育、啓発が重要だと思っている、しっかりやっていただきたい、取消権の喪失に伴う被害が広がらないようにしてほしいと要望しました。

 岸参院議員からは、18歳から働いている経験から、18歳と19歳はとても狙われやすい年代であること、学生だけじゃなくて働いている人でも知識が足りなかったりすることがあることを共有し、慎重に配慮いただきたいと要請しました。

 上川法務大臣からは、来年の4月1日に向け、これまでの取り組みの効果を検証しながら、普及啓発、教育の分野については自信をもって展開することころまで来ている、直近の調査の結果では、これまでのデータと比べると成年年齢引下げに関する認識が高くなっていることの共有がありました。また、7つの項目、これまでの懸念に関わるところだと理解を示すと同時に、デジタル社会の中でも、若年成年にとらわれず、デジタル化の基本的な課題として認識しているとの発言がありました。

要請_法務大臣.pdf

 立憲民主党は、特に成年年齢引下げに伴う18歳、19歳の若年者の消費者被害が拡大することがないよう、これまでの関係者の議論状況も吟味し、具体的な消費者保護に関する提案を行い、その実現に向け働きかけを行います。

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法務大臣への申し入れ後、記者団に報告。左から屋良、吉田衆院議院、1人おいて宮沢部会長、真山部会長、柚木副部会長、1人おいて岸参院議員