衆院本会議で1日、「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案」について、趣旨説明と質疑が行われ、「立憲民主・無所属」会派を代表して、党子ども・子育てプロジェクトチーム座長の大西健介議員が登壇しました。

 坂本少子化対策担当大臣は改正の趣旨について、子ども・子育て支援の効果的な実施を図るため、施設型給付費等支給費用のうち一般事業主から徴収する拠出金を充てることができる割合の引上げ等を行うとともに、児童手当の特例給付について、年収1,200万円以上の者への特例給付を廃止する等の措置を講ずるものと説明しました。

 大西議員は「安倍前総理はわが国の少子化を『国難ともいえる状況』と言い、2017年9月に『急速に進む少子高齢化克服』を理由の一つとして、いわゆる「国難突破解散」を行なった。菅総理は、内閣発足にあたり、『安倍政権の継承が私の使命』と述べられた」とこれまでの政府の少子化対策について振り返りました。その上で、坂本少子化対策担当大臣に「『少子化は国難である』という考えは菅政権においても引き継がれているのか」と認識を確認しました。

 続いて、「新型コロナウイルスの感染拡大によって、結婚や妊娠・出産を控える動きが拡がっており、少子化が一層進むことが懸念されている。出生数が2019年に初めて90万人を割り『86万ショック』と言われたが、このままでは80万人割れする可能性があるとの見方が出ている」と述べ、田村厚労大臣に見解を確認しました。

■児童手当の削減について
 新型コロナウイルスの感染拡大は、子育て世帯の収入にも影響が及んでいると指摘し、「なぜ、今このタイミングで、子育て世代の負担増となる児童手当削減を強行するのか。今は子育て世帯を国が全力で応援する時なのに、ここで児童手当を削減することは、子育て世帯に対して、国は冷たいというメッセージとなり、子どもを持つこと自体や2人目、3人目をあきらめることにつながりかねない」と強く批判しました。
 また、児童手当を削減し、待機児童対策に充てる政府の予算措置について、(1)同じ子育て予算の中でのやりくりではなく、先進国の中で最も低い水準の子育て予算全体を増やすべき(2)子ども政策・家庭政策を一元的に立案・遂行する独立の省を創設すべき――と提言しました。
 児童手当法の第一条を引用し、「私たちは、社会全体で子どもの育ちを支えるという考え方に立ち、親の年収にかかわらず、すべての子どもに対して児童手当を給付すべきと考える」と述べました。また、同じ子育て支援であっても、政府は、不妊治療支援や幼児教育の無償化には所得制限を設けていないと指摘しました。

 一方で、株価の高騰により、富裕層が増えているという野村総研の調査結果をふまえ、金融資産への課税を麻生財務大臣に提案しました。

■世帯合算導入について
 検討規定の「世帯合算導入」について、「年収1,200万円以上の者への特例給付の不支給を前提に、世帯合算が導入されると、夫700万、妻500万でも所得制限にひっかかることになる。子どもがいる世帯の約6割が共働き世帯であることを考えれば、世帯合算の導入は、共働き世帯の負担増や女性の就労意欲を削ぐことにつながる恐れがあり、子育て世帯の間に新たな分断を生むことになる」と強い懸念を表明しました。

■児童手当システム改修費について
 2021年度予算に計上されている児童手当システム改修費について、「約61万人の子どもたちに影響を及ぼす特例給付の廃止により得られる財源効果は約370億円だが、児童手当システム改修等に要する経費として、2021年度予算には約289億円が計上されている。約370億円の財源を捻出するのに約289億円をかけるのは、あまりに不均衡で、特例給付をもらえなくなる人々の理解は得られない」と断じました。

■待機児童ゼロ目標達成の課題について
 安倍政権下の2013年度に5年での達成を掲げていたが、計画最後の2017年度に目標を3年先送りし、2020年度末を期限としていた待機児童ゼロ目標について、「待機児童を解消するためには、保育士の確保が大きな課題だ」と主張しました。そのうえで、「保育士を確保するためには、処遇改善が不可欠で、私たち野党は、2018年に保育士等の賃金を月額5万円引き上げる法案を提出したが、棚ざらしになっている。保育士の人件費については、委託費の使途の弾力運用が認められているが、厳しい歯止めをかけるべきだ」と苦言を呈しました。

■子ども・子育て支援施設で働く方々への慰労金について
 子ども・子育て支援施設で働く方々について、「新型コロナウイルスに感染するリスクにさらされながら、子どもたちに感染させないように細心の注意を払って働いておられる。新型コロナウイルスとの闘いも1年以上続いており、疲労やストレスもピークに達している」と述べ、立憲民主党等野党が提出した医療従事者等に加え、子ども子育て支援施設で働く方々に対しても慰労金を支給する内容の法案について、田村厚労大臣に検討を要請しました。

■低所得の子育て家庭への恒常的な支援について
 新型コロナウイルスの感染拡大により影響を受けた子育て世帯への支援について、「政府は2度にわたり、ひとり親世帯臨時給付金を支給したが、生活が厳しいふたり親家庭は支援の対象外だった。私たち野党がふたり親家庭も対象に低所得の子育て家庭に給付金を支給する法案を提出したところ、政府もようやく、ふたり親家庭を含む低所得の子育て家庭に対して、子ども一人当たり5万円を支給することとなった」とこれまでの経緯を説明。「低所得のふたり親家庭に対する恒常的な支援を望む声がある」と田村大臣に提言しました。

■事業主拠出金の上限割合の引上げについて
 「2015年度の子ども・子育て支援制度創設当初は、0.15%でしたが、累次にわたる引き上げの結果、現在は0.36%となっている。事業主拠出金は、最低賃金引き上げや社会保険料の負担増が続いている中で、業績の良し悪しに関係なく全ての企業を対象に厚生年金とともに徴収されており、コロナ禍の極めて厳しい経済状況の中での料率引き上げには、特に中小企業の反対意見がある」と懸念を主張しました。

■厚労職員の深夜会食問題について
 感染予防を呼びかける立場の厚労省の職員が、国民に自粛を強いておきながら、大人数で、時短要請を守らず、深夜までマスクを外して送別会を行っていた問題について、「空いた口がふさがらず、国民の皆さまに対して深くお詫びしなければならない。緊急事態宣言の解除前に、わざわざ午後11時まで営業している店を探して予約し、営業終了後も午前0時近くまで居座るなど悪質だ」と断じました。そのうえで、「我慢を強いられている国民のコロナ疲れも限界に達しつつある中、緊急事態宣言下での与党議員の銀座のクラブ通いに続き、これでは、政府のお願いを国民が聞いてくれなくなり、第4波を防ぐための政府の対策にも影響がでるのは必至だ」と田村大臣に猛省を促しました。

 大西議員は最後に「国民が国を信じることができない状態では、国民は安心して子どもを産み育てることはできません。それこそが『国難』であり、それを克服する道は、政権交代しかない」と質問を締めくくりました。

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