衆院憲法審査会が15日、今国会初めて開催され、与党提出の国民投票法改正案についての質疑と自由討議が行われました。与党案は2018年7月に提出され、国民投票法改正案は、2016年に改正された公職選挙法の内容を、憲法改正の手続きに関する国民投票にも適用するため、「共通投票所」の設置、「繰延投票」の期日の告示期限の見直し、「洋上投票」を可能にする――等7項目を見直すものです。
前半の与党案に対する質疑では、党の憲法調査会事務局長を務める本多平直議員が与党提出者に質問しました。本多議員は冒頭、国民投票は基本的には普通選挙と同じやり方で実施する方向でよいが、与党案提出者が国民投票と普通選挙は「限りなく同じ」「基本的に相違ない」と言及しているとおり、違いはあるという認識で検討すべきだと指摘しました。
また、2017年衆院議員選挙では有権者の20%、投票した人の37%が期日前に投票したことを紹介し、期日前投票の比率が高まっていることに留意して検討すべきだと主張しました。その上で、改正案により、ほかの共通投票所があれば、従来期日前投票の会場となっていた役場・市役所が午前8時30分から午後8時まで開所しなくなる自治体も出てくるのではないかとただしました。提出者は、法改正は期日前投票の利便性を向上することが趣旨だと説明し市役所・役所もいろいろな所にあるので、それぞれの選挙管理委員会で判断すると答弁しました。本多議員は、市役所・役所での期日前投票が定着しおり、場所や投票時間が変ることによって投票しにくくなるのではないかと懸念を示しました。
また、「繰延投票」について本多議員は、投票日が平日になれば、仕事や学校がある人は投票がしにくくなると指摘し、平日に繰り延べられる可能性があるのか質問しました。提出者は自然災害等の被害を避けて、国民の関心が熱いうちに実施すべきという観点から「その週の休日、あるいはウィークデーの選択もあるかもしれない」と答弁しました。
後半の自由討議で道下大樹議員は、新型コロナウイルス陽性者で宿泊施設・自宅で療養している方の投票権の保障など、コロナ禍における投票権の課題を取り上げました。
大串博志議員は、野党にも配慮した静かな環境での憲法審査会の運営を求めました。国民投票と公職選挙をまったく同じととらえて公職選挙法と並びの改正でいいのかと根本的な問題のほか、期日投票の要件緩和、繰延投票等で投票環境に問題が生じないか議論を尽くす必要があると指摘し、旧国民民主党が提出したスポットCM規制、運動資金規正、外国人から寄付規制を盛り込んだ改正案の並行審議を求めました。昨年の臨時国会で立憲民主党・自由民主党の幹事長間で合意した、通常国会で「何らかの結論を得る」ことは、与党案(7項目案)の先行採決を意味するものではなく、議論の時間が限られていないので、今後も議論をつくすべきだと主張しました。
続いて奥野総一郎議員は、国民投票で大事なことはできるだけ多くの人が投票できるようにする利便性の向上と、投票の歪みをなくす質の担保だと述べました。その上で、7項目に旧国民民主案のスポットCM規制や資金の透明性の項目を盛り込むことも「何らかの結論を得る」ことになると主張し、旧国民民主党案の並行審議を改めて求めました。