憲法調査会(会長:山花郁夫衆院議員)は19日国会内で会議を開き、緊急事態措置の延長に伴い、東京都が続けている映画館に対する休業要請による影響などついて、映画監督の大友啓史さんから話を聞きました。

 緊急事態措置の延長決定に伴う休業要請をめぐっては、東京都や大阪府は5月12日以降、劇場や演芸場、イベント開催などは要請を解いた一方、映画館や美術館・博物館に対する休業要請を継続。こうした「線引き」に対し、立憲民主党はこれまでも政府に説明を求めていますが明確にな回答は得られていません。

 大友監督は、ロードショー公開される大きな作品は、7割が地方、3、4割が大都市圏での興行のため、今回のように東京や大阪といった大都市圏で公開されないと、映画は大きな打撃を受けると窮状を説明。今年4月23日より公開され大ヒット上映中の『るろうに剣心 最終章』は、緊急事態宣言下にある首都圏などでは公開がされておらず、「興業は成功するかしないかで次の作品が左右される。『るろうに剣心』シリーズはおかげさまで評判が良く、シリーズ4作目、5作目を撮れるコンディションとなり、ハリウッド映画に匹敵するスケールだとの評価をいただいている。そうした作品であり、350から400スクリーンと劇場側の期待も大きい。作品は子どもと一緒。10年かけて育ててきたわが子が不遇なコンディションにあることについて感情的に思うところがある」と話しました。コロナ禍だからと一定の納得をしていたなか、3日前の巨人対ヤクルト戦をテレビで観ていて1万5千人の観客がいたことからスイッチが入ったと言い、業種や施設による線引きについて納得できる説明がほしいと訴えました。

 大友監督は、映画にはエンドロールにクレジットがあるだけで2千件以上のスタッフが関わり、経済的に多くの人を支える役割にもなっていることも強調。「自分の作品がなぜこんな目に遭っているのだろうという思いで来た。個人として納得いかない。合理的判断というのはどこにあるのか、いろいろなところに聞いているが誰一人説明できず、文化庁の長官ですら説明できないと発言している。一人の表現者として10年かけた作品が、あまりよろしくないコンディションのなかでの公開を強いられることは、例えば4年に1度に開催されるオリンピックとの待遇の差でいうと、どういう基準になってくるのか。文化のポジショニングをどう考えるのかを聞きたくなった」と話し、自身の作品のようなお金をかけた映画は復活できるかもしれないが、比較的少ない予算で制作される映画などのなかには劇場公開のチャンスを失う映画もあるかもしれないと指摘。昨年10月に公開されたアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が歴代興行収入1位となったことにも触れ、「映画館とお客さんの共通の理解とマナーにより、コロナ禍で最大のヒット作を生み出した。ストレスがたまるなかで、それを逃がすことが必要。劇場の作品は、心のワクチンになっている。われわれは、そういう矜持を持って作っている。今こそエンターテイメントだと思っているくらいだ。そういう努力を顧みられることなく一様に判断されることはどういうことかを知りたい。表現の自由が保障されている国で、われわれが納得する理由なく発表する機会を奪われていることは憲法上どのように位置づけられるのか、自分として納得したい」などと思いを語りました。

 会議ではその後、大友監督からの提起も踏まえ、「新型インフル特措法における休業要請等による財産権の制約と憲法の関係」について国立国会図書館よりヒアリング。しかしながら、こうした東京都などの自粛要請は合憲性判断の枠組みに収まっているのか、判断に当たっての要件である「目的の正当性」「目的達成の必要性・合理性」のうち後者については納得がいく説明は得られず、「合理性という言葉をもてあそぶのはもうやめませんか」と大友監督。引き続き国会や都議会などで説明を求めていくことを確認しました。

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