立憲民主党の枝野幸男代表は9日午後、菅総理大臣と初めての党首討論(国家基本政策委員会合同審査会)に臨みました。新型コロナウイルス感染の第5波を防ぐため、緊急事態宣言措置など感染防止対策の解除にあたって厳しい基準を設けるよう要求しました。同時に国会の会期を延長し、感染長期化を克服するための補正予算案の編成を強く求めました。
まず枝野代表は、緊急事態宣言の延長やまん延防止等重点措置の発令によって、今年に入り法令に基づく自粛などの要請が出されていなかった期間がたった3週間しかなく、その原因として3月の緊急事態宣言措置の解除が早すぎたからではないかと指摘しました。「もし4度目のリバウンド、第5波になれば、事業者の皆さんを中心に耐えられない方がますます出てきてしまう」と懸念を示し、それを回避するために感染防止対策に「厳しい基準を明確にすべき」とただしました。菅総理は、質問された基準には答えず、ワクチン接種で成果を上げつつあると述べ、「ワクチン接種に全力を挙げて取り組んで感染拡大を食い止めていきたい」と答弁しました。
東京五輪・パラリンピックに関連して、菅総理が7日の参院決算委員会で「国民の命と健康を守るのは自分の責任で、それがオリンピック開催の前提条件である。その前提が崩れたらおこなわない」と答弁にしたことについて質問しました。「大会参加者などによる直接的な感染拡大だけでなく、開催を契機として国内で感染が広がり、それが国民の命と健康を脅かす事態を招かないということも含むのか」と確認しました。この質問に対しても総理は、真正面から答えず、五輪選手や関係者へのPCR検査やワクチン接種の計画などに言及したりするだけでした。
新型コロナウイルスの感染拡大により、深刻な影響を受けている人々や事業者への支援に関してもただしました。政府の生活支援や事業支援は対象を限定し、複雑な条件を付け、手続きに大変な手間と時間を強いていることから「必要な支援がこぼれ落ち、届いていない方がたくさんいる」と問題視しました。「残りの予備費だけで事業の継続や国民の生活、特にパッチワークからこぼれ落ちている皆さんを支えることは到底不可能だ」と指摘。立憲民主党が提案する持続化給付金の再給付、雇用調整助成金の特例延長、生活困窮者に対する特別給付金、医療機関や医療従事者に対する追加支援などからなる「30兆円規模の補正予算を速やかに編成するべき」と説きました。これに対して総理は、飲食や宿泊業、非正規雇用者など厳しい状況にある人への支援の必要性を認めましたが、新たな補正予算案の編成には応じませんでした。
また、政府・与党が国会の会期を延長せずに閉じようとしていることに疑問を呈しました。補正予算の議論や感染症対策のための新たな立法措置、緊急事態宣言の解除時期、ワクチン接種への対応、さらにはLGBT法案の成立のため「国会を大幅延長して、国会の機能を十分に発揮させ、国会をあげて新型コロナウイルス感染症という国家の危機に立ち向かおう。私たちが協力できることに協力してきているつもりだし、これからますますそうする。国会としての使命だと思う。国会延長を決断できるのは最大与党の党首である総理だけだ。延長して国会として国民の期待に応えよう」と総理に呼びかけました。総理は「国会のことは従来通り国会で決めてもらいたい」と述べるにとどめました。
最後に枝野代表は、討論を振り返り、総理の答弁から「危機感や責任感を感じられなかったのは大変残念である。命と暮らしを守り、危機を乗り切るために機能する政府を取り戻すためには政権を変えるしかないと改めて確信した。その準備をさらに整えて一日も早く命と暮らしを守る、機能する政府を取り戻すことができるようにさらに努力する」と決意を示し討論を終えました。