衆院本会議で3月1日、在日米軍駐留経費負担に係る特別協定が審議入りし、立憲民主党から徳永久志議員が質問に立ちました。

 本特別協定は、基地で働く従業員の労務費や光熱費、アメリカ軍の訓練移転費の支出根拠となるものです。今年3月末に期限を迎えることから日米両政府は1月7日、外務省で新たな特別協定に署名しました。新年度からの5年間で総額でおよそ1兆550億円、1年あたりの平均で今年度より100億円程度増額する内容になっています。

 徳永議員は冒頭、ロシアによるウクライナ侵略非難決議に触れた上で、2016年5月の日露首脳会談で合意された「協力プラン」について考えを尋ねました。林外務大臣は「国際社会はロシアとの関係をこれまで通りにしていくことはもはやできないと考えており、わが国としてもロシアとの関係で新たな経済分野の協力を進めていく状況にはないと考えている」と答弁しました。

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 その上で、徳永議員は「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」をめぐり、(1)米国との交渉にあたっての姿勢(2)日本の適正な負担水準および負担率(3)訓練資機材調達費の負担上限(4)同盟強靭化予算(5)在日米軍の新型コロナ感染及び日米地位協定の改定――等を取り上げ、関係大臣の見解をただしました。

 徳永議員は、「わが国は、日米安保条約に基づいて米軍の駐留を認めており、在日米軍の駐留は、日米安保体制の中核的要素となっている。したがって、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を十分に確保するためにも、在日米軍の駐留経費を負担することは、一定の理解をする」と述べた上で、負担のあり方には国民の理解と納得が必要だと指摘。「日米安保条約は、第5条でアメリカの日本防衛義務を規定する一方で、第6条で日本の施設・区域の使用をアメリカに認めている。アメリカの日本防衛義務に対し、日本はアメリカ防衛義務は負わない代わりに、領土の一部の使用を認めるという、非対称型の双務的条約だと私は理解している。過度に忖度することなく主権国家として堂々と自らの主張を展開していくべきであり、間違ってもアメリカの言い分を唯々諾々と受け入れる交渉であってはならない」と主張しました。

 また、アメリカが基地を設置する諸外国と比較して、日本の負担割合はあまりにも突出していることも問題視。本特別協定の交渉にあたって適正な負担水準及び負担率をどのように考えていたのかと迫りましたが、林外務大臣は、「負担規模については、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支えるとともに、日米同盟の抑止力対処力を強化する同盟強化予算が重要であることを踏まえ、わが国の厳しい財政状況やわが国を取り巻く安全保障環境等の要素を総合的に考慮し主体的に判断した」などと述べるにとどまりました。

 徳永議員は、今回の特別協定で光熱水費が減額したことを評する一方、仮想空間で日米が共同訓練を行うための最新システムを導入する「訓練資機材調達費」が新たな費目として26年ぶりに設けられたことについて、なぜ特別協定による負担に組み込まないといけないのかと提起。「日米が共同で使用する訓練システムならば、日米両国で費用を分担し合うというのが筋ではないか。アメリカは国防総省の、日本は防衛省の本予算で堂々と計上すべきではないか」などと述べましたが、岸防衛大臣は、「日米の負担割合は決める形式とはしていない。経費により米側が調達する訓練資機材を自衛隊も適切な形で活用できるよう引き続き日米間で議論していく」と答えました。

 加えて、徳永議員は、同盟関係の強化をはかることは不断に行うべきであり、特別協定による一時的、暫定的、限定的な特別措置ではなく、堂々と本予算に計上するのが本筋だと考えると表明しました。

 最後に、在日米軍基地で新型コロナウイルスのクラスターが発生したことに触れ、 「この件では、昨年9月から3カ月以上、日本側に連絡することなしに入国前の検査を取りやめていたことが判明しており、ずさんな対応の背景として、日本の国内法の適用が幅広く免除される日米地位協定の問題が可視化されることとなった。日本は、検疫や感染症対策は米軍にまかせっきりなのに対し、米軍が駐留する他国では、国内法の適用を明記したり、受け入れ国側に幅広い関与を認めている」と指摘。今回のコロナの件を機に、地位協定の改定に着手すべきだと訴えました。

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