参院消費者問題特別委員会で12月9日、旧統一教会問題をめぐる被害者救済法案(「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」と「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」)が実質審議入りし、「立憲民主・社民」の1番手として岸真紀子議員が質問に立ちました。

 岸議員はまず、救済新法案に関する衆院での修正事項を取り上げ、寄付勧誘を行う際の配慮義務に「十分に配慮」と追記したことによる効果や意義について質問。修正案提出者の山井和則議員は「第3条に『十分に』と加えることによって法人等が個々の寄付対象者の状況や実態に応じて第3条2項に掲げられている事項について、より細心かつ慎重な配慮が求められることとなり、これにより法人等の配慮義務の注意をさらに促し、配慮の実効性がより一層高まる効果が見込まれ、新たな被害者発生をより防ぐことができるものと考えている」と答えました。

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 岸議員は次に、配慮義務規定が遵守されていないため個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合に「勧告」「報告」「公表」を加える修正について、被害当事者や弁護団など現場の声を多く聞いてきた立場から、積み残しの課題と解決の方向性について尋ねました。これに対し山井議員は、いわゆる宗教2世の方々を中心に被害者にとっての最大の積み残し課題は宗教2世の方々の救済・支援であり、債権者代位権の実効性に懸念があると発言していると指摘。「法律成立後に速やかに検討会を立ち上げ、2世被害者などの声を聞きながら、施行状況や、実効性の検証などの議論を進めていくことが期待されると考える」と述べました。

 岸議員は、12月7日の衆院での審議で柚木道義議員から提案のあった「法施行後の状況確認を行う検討会の設置」についてあらためて確認。河野消費者担当大臣は「しっかりやってまいりたい」と明言しました。

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 岸議員はまた、附帯決議にある、親権者が寄付をしている場合における未成年の子への支援の重要性を指摘。未成年の子は債権者代位権の行使が困難であることも踏まえ、「債権者代位権の行使ができるかどうかが救済にとって重要な観点。この法案によって被害者が救済されていくのか政府として把握することは重要。より救済の実効性を高めるための見直しにつなげるためにも施行状況・運用状況の確認をどのようにしていくのか」と尋ねました。消費者庁は「債権者代位権は民法上の民事ルールであることからその運用状況の全容把握は困難な面があると考えているが、法テラスと関係機関による相談対応の結果などを分析しながら運用面の課題などについて把握していきたい」と答弁。岸議員は、「それだけでは把握できないと思う。もう一工夫が必要ではないか」と検討を求めました。

 消費者契約法改正案については、霊感商法に係る取り消し権の要件に「当該消費者またはその親族の生命、身体、財産、その他の重要な事項について、そのままでは現在も生じ、もしくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり」などとあることから、「将来は死後または来世の不利益や、すでに亡くなっている親族の不利益について不安をあおった場合にも取り消し得るものなのか」と質問。消費者庁は「親族は、存命の親族を想定しているが、亡くなられた親族の不利益は、本人自らの不利益と同等のものとらえ得るものと考えている。本人の死後や来世の不利益についても現在生じ、または将来生じ得る不利益としてとらえ得るものと考えている」と答えました。

 岸議員は、地方における宗教に関する相談体制の充実強化の在り方や、地方消費者行政の充実強化、消費生活相談員の専門性向上のための処遇改善等についても質問。河野大臣は、相談体制の強化に向けて相談員のオンラインで研修をはじめスキル、専門性の向上に取り組んでいきたいと表明。不安定な環境にある消費者生活相談員の処遇改善について、「キャリアパス、将来の姿が見えるように心砕いていきたい」と前向きに取り組んでいく考えを示しました。

 岸議員は最後に、今回の被害者救済策の内容の国民への周知への重要性を強調。河野大臣は、禁止規定や配慮義務について、広く認識してもらえるよう資料を作るなどしっかり広報していく考えを示しました。

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