参院憲法審査会が4月12日に開かれ、54条の緊急集会に関する議論で、立憲民主党の杉尾秀哉、石川大我、古賀千景、熊谷裕人の4議員が発言しました。

杉尾秀哉議員

 杉尾議員は冒頭、5日の審査会で各会派から緊急集会に関する論点整理、検討が急務との見解が示されたことを評価し、「今後は参考人質疑も含めて、議論をさらに深めて行く必要がある」と述べました。続いて衆院議員の任期満了後の緊急集会の可否について発言しました。緊急集会制度の立法経緯、任期満了による総選挙への類推適用などから、54条2項を「衆議院の任期満了後の緊急集会も可能と解することは、立憲主義とも符合する」と言及しました。

 その法的問題に関して、川崎参院法制局長に「仮に、衆院議員の任期満了後も『緊急集会を開催できる』という憲法解釈に立った場合、現行の国会法の条文改正は必要になるのか」とただしました。参院法制局長は、「任期満了後の衆議院総選挙の場合の緊急集会について、憲法上可能であるとの見解をとるのであれば、現行の国会法では文言上、緊急集会を開くことができる場合を衆議院解散時に限定するような規定が設けられていないことから、国会法を改正する必要はないとの理解が可能である」と答弁しました。

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石川大我議員

 石川議員は、緊急集会の権能の範囲について言及しました。まず、学会の通説的見解に関して「緊急集会は国会の権能を一時的に代行するものであり、その権能、すなわち、内閣の提示する案件は、法律、予算など国会の権能に属するものに及ぶことができ、緊急集会はその案件について議決できる。しかし、同時に、案件の性質からみて、参議院の単独の議決のみでは許されないものや緊急の必要性があると考えられないものは、緊急集会の権能の外にあると解される」と紹介しました。

 その上で、参院法制局長に「本予算の審議・議決が緊急集会の権能として認められるかどうかについては、肯定説が通説と考えてよいか。また、本予算を含めて否定する学説はあるのか」と質問しました。同法制局長は、「学説上、一般的に参議院の緊急集会の権能の対象として、予算が含まれるものと解されている。他方、予算について全面的に参議院の緊急集会の権能の対象外とする学説は、現時点で調べた限りでは承知していない」と答弁しました。

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古賀千景議員

 古賀議員は、緊急集会を開く期間に関して、一部会派が「70日間限定説」を唱えていることに対して、「立法事実、根本趣旨と明確に矛盾する」と指摘しました。70日を超えて緊急集会を開催することについて、高見上智大名誉教授の「本文の勿論解釈からして当然である」との見解や、土井京都大学教授、長谷部早稲田大学教授の実施可能との論説を紹介した上で、「70日間限定説」を唱える会派に対して、「我が会派の見解やそれと同趣旨の憲法学者の見解にどのような考えを持っているのか」と迫りました。

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熊谷裕人議員

 熊谷議員は、参院の緊急集会中に国に緊急の必要がある新たな案件が発生した場合を想定し、2つの制度を提案しました。「1つは、改めて内閣が参議院の緊急集会を求めなくても当該案件に対応することができるよう、内閣総理大臣が緊急集会において審議すべき新たな案件を示すことができ、議員はこの新たな案件に関連のある議案を発議することができるとするものであり、もう1つは、緊急集会の召集中も本会議や委員会の開催は可能であることから、参議院が内閣総理大臣に対し、新たな案件を示すよう促す制度」と説明しました。

 参院法制局長に対して、「仮に、この2つの制度を措置する場合に何か憲法上の問題があり得るのか、また、実際の制度化に当たっては国会法の条文改正が必要になるのか」などと質問しました。同法制局長は「緊急集会の途中で内閣が案件を追加で示すことができるようにするためにその旨を国会法に明記するというのは、1つの考え方ではないかと思う。その一方で、参議院から内閣に新たな案件を示すよう促すことについては、その判断は内閣が主体的に行うことを前提とするものであれば、そのような行為は事実上の行為であり、それを可能とするために法律上の規定を設ける必要はないと思う」答弁しました。