衆院財務金融委員会は5月19日、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」に関する質疑を行い、立憲民主党から米山隆一議員と櫻井周議員が質問に立ち、法案の問題点等を指摘しました。

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 質疑終局の後、米山議員が反対の立場で討論を行いました。

 「只今議題となりました『我が国の防衛力の抜本的な強化等の為に必要な財源の確保に関する特別措置法案』について、反対の立場で討論いたします。
 まずこの法案は、ご承知の通り、財投特会の積立金から2000億円、外為特会計の剰余金から1兆2004億円、国立病院機構及び独立行政法人地域医療機能推進機構の積立金から746億円の、合計1兆4750円の財源を、防衛費の為に確保したとするものです。
 しかし、財投特会計の積立金は本来必要な純資産の5%に遠く及ばない0.9%であり、金利が上昇したら直ちに不足が出かねず、全く不当と言わざるを得ません。
 外為特会の剰余金は一見、使わず死蔵されていた資金で財源を確保できているように見えますが、そもそも政府短期証券で調達されたものであり、剰余金は政府債務を減ずるために使うべきで、それを防衛費に充てる以上その分政府債務残高は増加します。
 国立病院機構及び独立行政法人地域医療機能推進機構の積立金も余っている資金で財源を確保しているように見えますが、その分国立病院機構や地域医療機能推進機構の施設整備や職員の待遇改善が後回しになります。
 結局この法案は、本年度に限っては一見財源を確保したように見えますが、それは要するにさまざまなリスクとコストを国の財政と国民に押し付ける事によって、防衛費だけを確保するものに過ぎないのです。
 中でも重大なのは金利上昇リスクで、我が国は現在1212兆4680億円もの政府債務残高を抱えており、1%の金利上昇で長期的には12兆円、2%なら24兆円、3%なら36兆円の追加的利払いが生じ、直ちに財政破綻の危機に瀕します。そして現実に財政が破綻すれば、日本経済と国民生活は大きな損害を被ります。
 今般の防衛力整備計画は、基本的には台湾有事を想定していると伺っており、それが一定の確率でありうることは否定しません。しかし実際にそれをやった場合、やった側にとっても損害は甚大で、その確率は実際問題高くはありませんし、それによって日本が被る損害も定かではありません。一方で、日銀が自ら10年間大量のマネーを市場にバラマキ、世界中でインフレと金利上昇が進み、日本においても3.5%ものインフレと長期的円安が進行している現在、金利上昇の確率は低くなく、その時日本の経済と国民生活は回復不可能なほどの大きな損害を負可能性が高いと言わざるを得ません。財務大臣は今般の委員会で何度となく「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」と言われましたが、日本は今、「戦後、最も厳しく複雑な財政状況」にあるのです。
 発生する確率が低く、生じる損害もはっきりしない有事に備えるために、発生する確率が相当程度に高く、その時発生する損害が甚大であると予想される金利上昇局面対して備える資金を使い切り、更にそのリスクを高める事は、私は大いなる矛盾であり、財務省、財務大臣、政府、日本国の職責の放棄であると思います。
 日本の将来を危うくするこの法案、そして新たな防衛力整備計画に関する財源確保の全体のスキームに対して、大きな懸念と、強い反対を表明して、私の討論を終わります。有難うございました。」 

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 本法案は採決の結果、与党の賛成多数で可決されました。