参院憲法審が6月7日に開かれ、立憲民主党の杉尾秀哉議員が会派を代表して緊急集会を中心に意見表明しました。

 憲法制定時における緊急集会の立法事実について杉尾議員は、「戦前の教訓を踏まえた国民代表機関であり、全体の改選期のない万年議会である参議院に、二院制国会の代行機能を託し、民主政治を徹底させるという根本趣旨に立脚する制度である」「災害などの際に緊急の立法等の機能を確保するため設けられたもの」と説明しました。

 さらに緊急集会は、災害対策基本法などの緊急政令を可能とする、憲法73条6号の罰則付委任立法と共に措置されたことを踏まえ、「日本国憲法には53条の臨時会を含めて体系的かつ十全な緊急事態法制が整備されている」「国民主権、国会中心主義、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の基本原理に基づき、かつ、これらの諸原理を守り抜くためのもの」と述べました。

 以上の基本認識に立った上で杉尾議員は、主要な論点について見解を表明しました。まず、「任期満了時の可否」について、憲法制定議会やその後の関係者の議論には、任期満了時を積極的に排除する見解がないことなどを踏まえ、「憲法54条2項の類推適用により、任期満了の際にも緊急集会は開催可能と解するべきで、それは立憲主義とも整合する」と発言しました。

 次に、緊急集会で参院議員が「発議できる議案」について、「現行の国会法の『総理大臣の示した案件に関連のあるものに限る』との制約は、基本的に妥当なもの」との考えを示しました。その一方で、「内閣による新案件の追加や、参議院が内閣に新案件の追加を促し、必要に応じて内閣に代替措置の検討も含めた説明責任を果たさせる、国会法の改正を行うべき」と提案しました。

 また、緊急集会の「権能」については、「国に緊急の必要がある時に、国会の機能を一時的に代行するものとして、法律、予算など広く国会の権限に属するものに及ぶ」と発言しました。一方、参院の単独議決や緊急の必要性の観点から認められないものとして、「憲法改正の発議や、内閣不信任決議は、権能の外にあると解すべき」と述べました。

 他会派が主張している「緊急集会70日間限定説」に関して、「解散時の内閣の居座りを排除するための規定という54条1項の趣旨や、任期延長の間に太平洋戦争が開戦された戦前の反省から、権力の濫用を排除するために設けられた、緊急集会の根本趣旨そのものにも全くそぐわない」などと疑問を呈しました。

 さらにいわゆる「選挙困難事態」に関連して、「戦前の任期延長の濫用や、東日本大震災、それに戦後の第一回総選挙の実例などを教訓に、如何なる事態にあっても半年を超えない数ヶ月間のうちに総選挙を実施する方策や体制の整備を、国会の責任において速やかに行わなければならない」などと、選挙困難事態を防ぐための措置の必要性を強調しました。

 最後に杉尾議員は、「本審査会での議論を踏まえて、参院改革協議会において緊急集会の機能強化に関する解釈の整理や国会法改正の議論を、また、選挙制度専門委員会で、それに付随する国民の選挙権確保の方策等の議論を行い、それぞれ早急に結論を出すべき」と提案しました。