参院憲法審査会が12月6日に開かれ、立憲民主党の辻󠄀元清美、熊谷裕人、小沢雅仁、打越さく良、高木真理、小西洋之、石川大我の各議員が緊急事態条項をはじめとするさまざまな憲法課題について意見を述べました。
辻󠄀元議員は、国民投票法の議論の必要性を提起しました。まず、国民投票法が成立した2007年には想定できなかった事態に危機感を示し、「デジタル技術や生成AIなどの進展によってディープフェイクと呼ばれる偽画像が社会を混乱させ、民主主義を脅かす事態を招いている」と指摘しました。
そして、21年の国民投票法改正の際にはすでに、「国民投票に関するインターネット等の適正な利用の確保を図るための方策」など、必要な措置を講ずるよう附則に明記されたことも踏まえ、「デジタル時代における人権保障のあり方」について憲法審査会で議論を深めるべきだと主張しました。
さらに国民投票法に規定される「広報協議会のあり方」についても、「選挙や改憲の国民投票までもがゆがめられかねない」現状を前に、「憲法改正に賛成、反対、立場は関係なく放置できない問題だ」として、議論が求められているとしました。
熊谷議員は、衆議院議員の任期延長論を批判しました。衆議院が解散されているときに大規模災害などが発生した場合、議員任期を延長すべきとする主張に関して、「選挙を経ていないことでその民主的正当性に疑義が生じることから、任期延長のための憲法改正は必要ではない」と述べ、「参議院の緊急集会をしっかり活用すべき」と主張しました。
その理由として、緊急集会は、(1)国民の選挙権の保障、(2)一刻も早い選挙の実施、(3)緊急事態から平事への復元力の担保、(4)取られた措置が衆議院の同意を要する臨時のものとの位置づけ――など、「緊急事態における権力の簒奪と濫用を防ぐ仕組み」を備えているからだ、と強調しました。
小沢議員は、緊急集会の70日間限定説が権力の乱用を排除する立法趣旨に反する恣意的な曲解だとして、「立憲主義に反する暴論は国民と参議院を愚弄するもの」で「議員任期延長改憲には明確に反対」だ、と発言しました。
打越議員は、「国の法律の基本になる憲法改正を数の力で争う場合に生じる国内の分裂を考えただけでも、それだけの労に値しない」とした宮沢喜一元首相の著書を紹介して、反対意見を押し切った改憲議論は許されないとしました。
高木議員は、深刻化する子どもの貧困などを指摘しながら、憲法26条の理念すら実現できていない現状において、「教育の無償化にかこつけた憲法改正はあり得ない」と訴えました。
小西議員は、自衛隊明記改憲に関して、「憲法前文の再び戦争の惨禍を許さない規定」「その法的な結晶である憲法9条の戦争放棄の明文規定」の趣旨を何ら理解しない見解が繰り返されている現状は「まことに遺憾だ」と述べました。
石川議員は、最高裁が10月、性同一性障害特例法を違憲と判断したことに関して、「積極的に本審査会で取り上げ議論すべき」であり、「速やかな法改正が必要である」としました。