参院本会議で6月19日、「地方自治法改正案」の討論・採決が行われ、小沢雅仁参院議員が反対討論を行いました。討論後、賛成多数で本法案は成立しました。

 小沢議員はまず、政府案に反対する最初の理由として、「大規模な災害、感染症の蔓延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態であれば、個別法に規定がなくても国が自治体に必要な対策を指示できるようにする」とした、いわゆる「補充的指示権」などの特例について、「想定できない事態をあえて想定したもので、特例を規定するような法案の根拠となるべき立法事実がない」と指摘しました。

 小沢議員は、今回の法改正で補充的な指示権をつくり、国と自治体間で情報交換や情報流通する制度を設けることで、「ダイヤモンドプリンセス号のような問題はどのように打開できるのか」「全国一斉休校要請は法的根拠があればうまくいくのか」「アベノマスクや4日連続で37.5度以上でなければ検査もできなかったことが改善されるのか」と指摘しました。さらに、地方を無視してのワクチン接種100万回の大号令に関する影響についても同様だとし、「これらの事実関係の綿密な検証がない限り今回の法改正はありえない」と断じました。

 また、小沢議員は新型コロナ対策等の対応がうまくいかなかった原因は、これまでに十分集権的な要素があったにもかかわらず、政府がそれらを上手く使いこなすことができなかったことだと指摘しました。

 さらに、政府案に反対する理由として、

(1)いわゆる補充的指示権などの特例は、2000年の地方分権改革一括法に基づき積み上げられてきた国と自治体との関係を「上下・主従」から「対等・協力」に改めた地方分権改革の成果を無にして分権への流れを逆行させ、憲法92条の保障する地方自治の本旨に反するものであること

(2)指示権発動の要件が極めて曖昧な上に、発動の手続きは閣議決定のみとなっており、事前の自治体との協議・調整の義務はなく、意見聴取も努力義務にとどまり、乱用が懸念される。自治体への国の不当な介入を誘発する恐れが高く、将来的にも拡大解釈が広がる可能性があること

(3)本来、大規模災害や感染症への対処においては、自治体と国が連携、協力することこそ大事であるにもかかわらず、補充的指示権、調整に関する指示、応援の指示のいずれも国が常に正しいとの前提で、国の一方的指示に従う義務を自治体に課すもの。自治体側の主体性や自発性をも損ない、現場の的確な判断や対処を妨げかねないこと

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 小沢議員は今回の改正案において、立憲民主党は憂慮する首長や有識者、関係労働組合らと連携し、指示権行使を極めて限定的にするため、(1)国の地方への「関与の原則」の維持(2)自治体との事前協議・調整の義務化(3)国会の関与と事後検証の義務化――の3点を柱にした修正を与党に要求したにもかかわらず、事後報告以外は受け入れられなかったことを明らかにしました。その上で、「憲法にある地方自治の本旨は、自治体は地域の運営に対して自己決定権を有しており、国が必要な範囲を超えて介入してはならないという原理とされている。改正案のように包括的な指示権を制度化することは、この範囲を超えるおそれがある」とした衆院参考人の礒崎初仁中央大学教授の発言を取り上げ、「住民に身近な行政はできるだけ自治体に委ねること、防災、公衆衛生など、まさに住民に身近な行政は自治体の役割であり、これは自治体の矜持」だと訴えました。

 最後に、地方分権推進決議から30年余、地方分権一括法から四半世紀が経ち、国から地方への税財源の移譲を含め分権改革は道半ばとした上で、「立憲民主党は、真の地方自治の確立を目指し、地方分権・地域主権改革の推進に全力で取り組む決意」だと力を込め、政府案への反対討論を終えました。

「地方自治体法改正案」反対討論  小沢雅仁.pdf