参院本会議において12月3日、令和6年度決算概要報告に対する質疑が行われ、吉田忠智参院議員が会派を代表して質問に立ちました。予定原稿は以下の通りです。


参議院本会議(決算質疑) 質問原稿

立憲民主・社民・無所属 吉田 忠智


1. 冒頭
 立憲民主・社民・無所属の吉田忠智です。会派を代表して、令和6年度決算について、国の財政の現状、そして高市政権が目指すべき国家のあり方や基本姿勢を含め、厳しく問うてまいります。

 本題に入る前に、2点質問します。私の地元大分市佐賀関で発生した大規模火災について質問します。亡くなられた方のご冥福をお祈りし、被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。すでに、発災から2週間が経過し、着の身着のままで避難した方々は困難な生活を送られ、不安な日々を過ごしています。ステージに応じた被災者への支援、激甚災害への指定と特別交付税の追加交付などの国の適時適切な支援をお願いします。今後の国の対応について総理に質問します。

 次に、高市内閣閣僚の政治資金収支報告書について伺います。高市総理と小泉防衛大臣が代表を務める自民党の政党支部が、政治資金規正法で定められた上限を超える寄付をうけていたことが、2024年分の政治資金収支報告書から発覚しました。高市総理は東京都内の企業から1000万円、小泉防衛大臣は大阪府の企業から1000万円。両社とも資本金額に基づく寄付の上限は750万円であったとのことです。高市事務所、小泉事務所は「企業規模を誤認していた。上限を超えた分は返金させていただいた」とコメントし、既に250万円は返金されたようです。ここで、高市総理と小泉防衛大臣に質問します。そもそも政党支部を通じて事実上一議員が一企業から1000万円もの献金を受けることについて、どのように受け止めていらっしゃいますか。

 先日の党首討論においても、野田佳彦立憲民主党代表とのやりとりで、高市総理は「そんなことより、議員定数の削減をやりましょうよ」というふうに発言をされ、この発言によって政治資金問題や政治改革を軽視しているのではないかという批判が国民の間に広がっています。裏金問題の解決よりも、議員定数削減の方が大切なのですか?総理、お答えください。

 次に、林総務大臣に質問します。昨秋の衆議院選で林総務相の陣営が県選挙管理委員会に報告した選挙運動費用収支報告書の労務費について、虚偽記載あるいは運動員買収の疑い、疑義ということで報道が続き、わが党の木戸口議員や小沢議員が委員会で質問しました。大臣は「精査が必要であると判断をいたしまして、現在、事務所において確認作業を進めている」などと答弁しましたが、既に2週間以上経過しています。時間がかかりすぎていませんか。精査と確認作業の結果をお答えください。

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2.決算審査の評価と今後の対応

 決算審査の評価と今後の対応について伺います。会計検査院の令和6年度決算検査報告では319件、総計541億円にも上る指摘がありました。
 決算の審議には、不適正なものや非効率なものがあれば、これを内閣に警告するなどして、その結果を後年度の予算編成や政策遂行に反映させ、将来の財政の計画や執行を一層適切なものにしていくという重要な役割があります。とりわけ、参議院は決算審査を重視して、毎年度、政府に対して警告決議等で適切な措置を求めてきました。

 まず、高市総理に、これまでの参議院の決算審査に対する評価を伺います。また、これから始まる決算審査に対して、高市総理は「責任ある積極財政」の下、どのように対応していくお考えか、お示しください。


3. 財政規律の確立と税制改革

 次に、国の財政規律について質問いたします。

(1)フロー指標の深刻化

 財政健全化の指標である一般会計のプライマリーバランスは前年度から悪化し、マイナス9.1兆円と深刻な赤字となっています。高市総理は、単年度ごとにプライマリーバランス黒字化目標の達成状況を見ていくこれまでの方針を、数年単位でバランスを確認する方針に見直す考えを示されています。しかし、令和6年度末の普通国債残高は約1,079.7兆円に達し、公債依存度も30.1%と高い水準にあります。この構造的な赤字を放置すれば、将来世代への負担先送りや財政の硬直化という問題が生じます。

 何より、既に国債の信認低下のリスクは顕在化しつつあるのではないでしょうか。政府が21兆円規模の総合経済対策を決定すると報じられた頃から市場では財政悪化が意識され、長期金利の指標である新規発行10年債の利回りは11月20日に平成20年以来の高水準となりました。「責任ある積極財政」における財政規律の考え方が市場に理解されているのか疑問と言わざるを得ません。

 高市総理は、厳しい財政状況をどのように認識し、複数年でどのように財政規律を回復するのでしょうか。単年度での達成が難しいから複数年とし、しかも来年6月の「骨太の方針」まで待てというのは目標と議論の先送りに過ぎません。市場や国民が納得する具体的な工程をお示しください。

(2)抜本的な税制改革の必要性

 財政規律を回復させ、今後増大する行政需要に対処するためには、税収を確保するための抜本的な税制改革の議論が不可欠です。
 私たちの基本認識では、富裕層が増えている現状を踏まえ、所得税の保護税率(最高税率)の見直しや、金融所得課税の見直しを検討すべきであるという指摘があります。また、議論の俎上に上っている租税特別措置の見直しや法人税率の引上げ等についても、真剣に議論すべきです。

 一方で、国民生活の困難さを考慮すれば、「食料品の消費税をゼロにすべき」という国民的議論も踏まえ、低所得者への配慮も欠かせません。

 こうした状況を踏まえ、高市総理は、所得税や金融所得課税のあり方、法人税の税率について、どのような見解を持っていますか。また、与野党の垣根を越えた抜本的な税制改革の協議会を設置し、将来を見据えた「時代に合わせた」税制を確立すべきと考えますが、総理の見解を伺います。


4. 防衛政策と国際的役割

 次に、安全保障と日本の国際的役割について質問いたします。

(1)軍拡競争への懸念払拭と防衛費の適正化

 高市政権は、非核三原則や防衛装備移転三原則というこれまで日本が歩んできた「平和国家」の根幹に関わる部分の見直しを進めています。また、防衛三文書を前倒しで改定する議論を開始し、更なる防衛費の増額に突き進んでいますが、令和6年度決算における防衛関係費の支出済歳出額は、防衛力強化資金への繰入れを除いても8.6兆円と、前年度から1.4兆円も増加しております。

 総理は、防衛費の増額が国民の命や暮らしを切り捨てることにつながるのではないか、特に国民生活を支える社会保障費や地域の暮らしを支える地方交付税が削られるのではないかという国民の不安を払拭する必要があります。国民の理解を得ないまま防衛費増額を強行し、その代わりに社会保障費や地方交付税など国民生活に直結する経費を削減することなどあってはなりません。今この場でそのようなことはしないと国民に明言してください。

 加えて、令和6年度決算検査報告では、5年度までに開発等で1.8兆円が投じられた海上自衛隊の哨戒機P-1について、空気中の塩分付着や電子機器などの不具合で多くの機体が使われていないという事態が指摘されました。防衛費をひたすら増額する前に、まずは限られた予算を最大限効率的かつ効果的に活用することが行政の責任ではありませんか。今回の事態に対する受け止めと責任の所在、そして再発防止策について伺います。あわせて、膨れ上がる防衛予算の適切な執行や会計の透明性を今後どう確保するつもりか、総理、お答えください。

(2)軍縮・核廃絶へのリーダーシップ

 安全保障環境が一層厳しくなっていることを理由に軍拡競争に加わり安全保障のディレンマに陥ることについては冷静に考えるべきです。
 私たちは、ただ防衛費を増やして軍備増強を行うのではなく、日本が軍縮と緊張緩和、核廃絶に向かう世界のリーダーシップを取るべきであると考えます。

 総理は、このような状況下で、日本が国連と連携、核兵器禁止条約など、世界の軍縮、緊張緩和、核廃絶に向けてどのような役割を果たしていくのか、高市政権の具体的な外交姿勢を伺います。


5. 決算と会計検査院報告への対応

 最後に、決算と会計検査院報告への対応ついて質問いたします。

①(株)ジェイアール東日本企画による委託費等の不正受給

 令和6年度決算検査報告では、国の委託事業等全体に対する信用を失墜させかねない深刻な事態が指摘されています。
 会計検査院の検査により、8府省庁が株式会社ジェイアール東日本企画に委託等をした事業において、同社が社員に虚偽の業務日誌を作成させ、実際には業務に全く従事していない社員や時間をあたかも従事したかのように装って人件費を算定し、令和元年度から5年度だけで約20億円が不正に支払われていたことが明らかとなりました。

 今般の事態を受けて同社が設置した外部調査委員会の報告書では、中央省庁等向けの事業を開始した平成24年度から、請求し得る人件費の上限額にできるだけ近付けるように人件費を請求していたとされ、会計検査院から指摘された期間より前の10年以上前から常習的に不正を行っていたことが判明しています。さらに、先月21日には宮城県から受託した事業でも同様の不正を行っていたことも明らかとなり、この不正事案は底なしの様相を呈しています。同社の悪質性は言うまでもありませんが、中央省庁等向けの事業を開始した当初から不正を行っていたこと、長期にわたって府省庁側がそれを見抜けなかったことに鑑みると、不正受給のノウハウが国等の委託を受ける事業者間で広く共有されていた可能性も否定できません。

 そこで、総理に対し、今般の不正受給に対する受け止めと、他の委託先等においても同様の事態が生じていないか徹底的に調査した上で、再発防止策を講じる必要性について、見解を伺います。

②中小企業等事業再構築促進補助金

 「中小企業等事業再構築促進補助金」について伺います。この補助金は、ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開や事業再編等の再構築事業を行う中小企業者等に対し、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付するもので、中小企業庁の補助金により設置造成した基金を原資としています。

 この補助金を会計検査院が検査したところ、虚偽の実績報告書が作成されるなど悪質極まりない不正行為等により、3億4,461万円も過大に交付されていたことが判明しました。令和3年3月の公募開始以降、総額で1.9兆円にも上る巨額な補助金であり、発覚した事案は氷山の一角である可能性も否めません。国が責任を持って不正の全容解明と徹底的な調査を行う必要性について、総理の見解を求めます。

 また、交付を受けた中小企業者等は、事業終了年度以降5年間にわたり、直近1年間の事業化状況等を報告するよう求められています。しかし、13億2,329万円分については適切に報告されていないため、事業効果の正確な分析が困難で、必要な検証結果が得られないおそれがあると指摘されています。

 このように、検査院から指摘されるまで正確な効果検証ができない状況を放置しておきながら、国民が納得するような補助金の見直しなどできるのでしょうか。そこで、今回の事態に対する総理の受け止めと改善に向けた取組状況、あわせて高市政権が進める補助金の見直しにおける具体的な効果検証の方策について伺います。

③予算執行に関する透明性向上

 予算執行の透明性向上について伺います。会計検査院は、これまで予備費や補正予算の執行状況について、国民への情報提供を徹底し、透明性を向上させるべきと継続的に指摘しており、参議院決算委員会もこれを踏まえた決議を行っています。その結果、政府が予備費や補正予算を財源とする経費の執行状況をウェブサイトで公表し始めたことは一定の評価に値します。しかし、補正予算の執行状況については「主な事業」のみに限定して公表されており、そもそも「主な事業」の基準も不明です。これでは見栄えの良い事業だけを選んで公表しているのではないかと勘ぐられても仕方がありません。高市政権は、7年度の一般会計で、17.7兆円の経済対策分を含む総額18.3兆円もの巨額の補正予算を閣議決定しましたが、その執行に対する説明責任を果たさなければ、「責任ある積極財政」とは言えません。
 そこで、現状、主な事業に限定している補正予算の執行状況の公表について、その対象を全ての事業に広げるべきと考えますが、総理の見解を伺います。


6 . 結び

 財政の持続可能性の確保、軍縮・平和への貢献、そしてジェンダー平等を含む包摂的な社会の実現は、高市政権に課せられた重い責務です。

 高市総理が、これらの課題に対し、国民の期待に応える覚悟と、国民に分かりやすい説明責任を果たす決意を表明され、今後の政権運営の基本姿勢とするよう求め、私の質問を終わります。

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