野田佳彦代表は8月8日、定例の記者会見を国会内で開き、日米相互関税の負担軽減措置をめぐる混乱に「合意文書を作らなかったことはミスジャッジではなかったかと強く思う」とあらためて指摘しました。

 野田代表は冒頭、鹿児島県霧島市に大雨特別警報が発令されていることを受け、「命にかかわる事態だ」と述べ、政府に対し「官邸連絡室ができたということだが、適時適切な情報提供に努め、万全の体制で臨んでほしい」と要請。党としても、同日朝5時にこの大雨に関し連絡室を設置したと報告しました。

 トランプ政権が7日発動した新たな相互関税の税率をめぐり、日米両政府間での認識の違いが指摘されていることについて、「赤沢経済財政・再生大臣は『両国に齟齬はない。米国側は適時に大統領令を修正する措置を取る』と答えるものの、具体的な時期については『可及的速やかに、適時にと申し上げている』と述べるだけで明確な説明がない」と問題視。さらに、「先行きの不透明感を払しょくできない状況だ。予算委員会では、合意文書を作らないことの方がメリットがあると説明していたが、自動車関税あるいは相互関税という基本的な税率に係るところでこうした齟齬(そご)が生じる事態になっている。毎回大臣が訪米しなければいけないこと自体、極めて憂慮すべきこと。あらためて文書を作る方が正しいと思う。説明を聞かなければいけないが、現時点では合意文書を作れなかったことはミスジャッジではなかったかと強く思う」と述べました。さらに、この事態において、「今なお石破総理とトランプ大統領の会談(電話会談含めて)がないこと自体も奇異に映っている」と指摘した上で、「大臣が帰国したら閉会中審査を実現し、説明を聞かなければいけない」とし、同日の与野党国会対策委員長で閉会中審査を求めるとともに、党日米通商問題対策本部で政府から説明を聞くと報告しました。

 消費税減税や給付付き税額控除などをめぐる与野党の政策協議に関しては、「公約してきたことでありどんな状況であれ、われわれは提案し成案を得られるよう最善の努力を尽くす。消費税についてはいろいろ考え方あるが、消費税減税については一致しているので、まずは野党11会派で協議し、ガソリン暫定税率廃止と同様、野党間で考え方が整理できるように努力していくことが大前提。(参院選で掲げた)給付金の議論もあるので、その先の給付付き税額控除も含めて、与党との協議も始めた」と述べました。


野田佳彦代表記者会見

2025年8月8日(金)10時30分~10時48分
発行/立憲民主党役員室
★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://youtu.be/g9EhY438szg


■冒頭発言

■質疑


■冒頭発言

○鹿児島の大雨に関する情報連絡室を設置

【代表】
 今、鹿児島で大雨特別警報が発令されておりまして、大変命に関わるような事態でございますので、まず政府におかれましては、官邸連絡室ができたということではありますが、しっかりと適時適切な情報提供に努めて、万全の態勢で臨んでほしいと強く思います。
 加えて、我が党においても朝5時に情報連絡室を設置させていただいたことを、まずご報告をさせていただきたいと思います。

○日米交渉 「相互関税」めぐる混乱について

【代表】
 もう一つは、日米「相互関税」について、混乱が続いております。
 先ほど行われた赤澤大臣のぶら下がり会見を拝見いたしましたが、両国に(認識の)そごはないと繰り返し、米国側が適時に大統領令を修正する措置を取るとのことでありますが、具体的にいつなのかという記者の質問に対しても、可及的速やかにとは申し上げておりません、適時にと申し上げておりますと。いつ修正されるかもわかりません。先行き不透明感を払拭できない状況だと思います。
 そもそも合意文書をつくっていなかったこと。しかも、自動車関税とか、あるいは、こうした「相互関税」という、基本的な税率の部分に関わるところでこうしたそごが生じる事態。間違いなく、予算委員会ではいろいろメリット・デメリットのある中で文書をつくらないことのほうがメリットがあるということを(政府は)説明していましたが、こんなことで毎回大臣が訪米しなければいけないということ自体、極めて憂慮すべきことだと私は思います。
 改めて、しっかりと文書をつくることのほうが正しいのではないかと思いますし、この事態において、今なお総理とトランプ大統領とのいわゆる会談が全くない。電話の会談もないということ自体も私には奇異に映っているということは指摘せざるを得ないと思います。
 いずれにしても、大臣がお帰りになりましたら、これは閉会中審査を実現し、きょう11時に国対委員長会談が開かれるそうでありますが、閉中審査を求めていきたいと思います。その説明をしっかりと聞かなければいけないと思います。
 また、きょう11時40分から日米通商問題対策本部を党内で開催いたしまして、政府からの説明を受けることとしていることをご報告させていただきたいと思います。


■質疑

○企業・団体献金禁止に向けた協議について

【NHK】
 政治改革について、まず伺いたい。政治改革について、石破総理との党首会談のめどが立っているのか。また、その党首会談をめぐり、先日の予算委のやり取りのことについて自民党内でも反発があると一部報道で出ているが、今後どのように政治改革を一歩でも二歩でも前に進めるためにやっていきたいか。その辺のところをお願いしたい。

【代表】
 具体的な党首会談の日程調整についての話は、全く今のところ、現段階ではありません。何かきのう辺り、きょうのどこかでやるというお話が飛び交っていましたが、私の元にはそんなお話は全く来ておりませんので、事実無根ではなかったかと思います。現時点においても、具体的にはそういうものはありません。今、政党支部の実態について、幹事長・政調会長の下で実態把握、調査中ということでございますので、たぶんその調査が終わってからのことなのだろうと予測をしているところでおります。皆様のお盆休みに関わることですが、現時点では動きはありませんということです。
 その関連で、何か自民党内で反発が出ているというようなお話がありますが、私が提案をした、7800の政党支部についての言及については、それは反論があったり反発があったりするかもしれませんが、局面打開のためにトップ同士が膝を突き合わせて協議しましょうという提案自体に反発するということ自体がよくわかりませんね。7800の支部を今調べなければならないということ自体が問題なのではないですか。把握をしていない、政党本部が。それを調べていることに反発しているのかなどなど、私はこの体質は極めて後ろ向きの体質ではないかと指摘せざるを得ないと思っています。

○参院選の総括について

【NHK】
 別件になるが、参院選の御党の総括のことで伺いたい。両院懇の後に、惜しくも当選できなかった議員の方々や、党員の方々の意見も聞いてきたかと思うが、こういう意見はどういうものがあったのか。また、そういう意見を聞いて、まだ決まっていないと思うが、総括にどのような内容を反映していきたいか。今考えていることがあれば教えていただきたい。

【代表】
 多岐にわたるので、一言では申し上げられません。SNS対策に関わること、政策の中身に関わること、あるいは県連・総支部のいわゆる活動実績などなど、いろいろ多岐にわたりますので、それを丁寧にお話を聞き、きのうも惜敗された皆さんの声も聞きましたが、丁寧な議論をしっかりとやって、お盆明けにはいわゆる総括の文書のたたき台を出させていただいて、それを踏まえてまた皆様にご討議をいただいていきたいと思います。そして、8月の最終週には、常任幹事会が26日に開催予定ですので、その辺りまでに集約・完成をしていきたいと思います。

○日米交渉 「相互関税」めぐる混乱について(1)

【読売新聞】
 冒頭にご発言があった関税の問題について伺いたい。これから国対委員長会談ということだが、閉会中審査にとどまらず、臨時国会の召集を求める考えはあるか。

【代表】
 物事には順番があると思いますので、まずは大臣にしっかりと説明をしてもらうと。説明をしてもらわないと、これまで予算委員会でとうとうとしゃべったことがみんな違うわけではないですか。そして、今、訪米したわけですから、訪米してどんな議論があったのかどうか。いまだにアメリカ側の発表がないですね、今回の赤澤さんとの会談。そういう奇異なことも多過ぎるので、それをまずただすということが前提で、その後のことは、まず閉中審査が終わってからだと思います。

【読売新聞】
 先ほど企業・団体献金のお話もあったが、先日の衆院予算委員会では石破総理との間で今後前向きに様々な課題について議論をしていく考え方が共有されたかと思う。一方で、今回の関税の交渉の問題を受け、この交渉の説明次第では、こうした議論を優先するのではなく、即退陣を求めるというようなお考えはあるか。

【代表】
 閉中審査など、しっかりとそういう議論を踏まえた中から判断をしていくことだと思います。

○次期衆院総選挙に向けた取組について(1)

【読売新聞】
 別件で、もう一点お願いしたい。今、参院選の総括のお話もあったが、次期衆院選については、いつあるかわからないことだと思うが、現状での準備状況と、今後候補者の擁立だったりをどのように進めていくお考えか。

【代表】
 選対委員長には、速やかに次の総選挙に備えて、可能なところは公認候補の擁立作業を進めていくようにということは指示をしています。今回参議院選挙で惜敗された人たちも含めて、様々な人たちを対象に、あるいは、今回は各党調整の間で、やはり参議院選挙への影響を考えて、総支部長として居続けることができなくて公認できなかった人たちもいますので、そういうことも含めて、選挙区情勢をよく分析しながら対応するようにという指示はしています。

【読売新聞】
 昨年の衆院選と先月の参院選を踏まえて、次の衆院選で政権交代を目指すというような考えを示されていたかと思うが、この考えにお変わりはないか。

【代表】
 変わりはありません。

○物価高対策に関する協議について

【時事通信】
 本日、自民党の両院議員総会などもあるが、自民党内の政局がいまだに不安定だ。ガソリンの暫定税率廃止や、給付付き税額控除とか、先日の予算委員会で代表も与党側に呼びかけられたが、今後、自民党が不安定な中で、これをどう実現に向けて呼びかけていくか伺いたい。

【代表】
 暫定税率(廃止)、あるいは給付金、消費税(減税)、給付付き税額控除のセットの協議などは、これは我々が公約をしてきたことですので、どんな状況の中でも、やはり実現をするために最善の努力を尽くすということが必要だと思っていますので、その一環で予算委員会で取り上げさせていただきました。企業・団体献金の禁止についてもしかりであります。
 自民党がどんな状況であろうと、我々は提案をし、それで協議できるのだったら、可能性がある限り、それは成案が得られるように頑張っていきたいと思います。

【朝日新聞】
 先ほどもあった給付付き税額控除だが、先日の自民と立憲の政調会長会談の中でも話には上がったようだが、一方で、野党内では消費税をめぐって政調会長同士で議論していると思う。この給付付き税額控除、どういう手順というか、自民党とどう向き合いながら、野党ともどう向き合いながら進めていくのか、お考えをお願いしたい。

【代表】
 まず野党で今協議が始まりましたが、政策責任者レベルで11党派に声をかけて協議をしていると。次はまた2回目があると思いますが、その中で、消費税について、いろいろな考え方はありますが、消費税減税については一致していますので、ガソリン税減税と同様に野党間でしっかりと考え方が整理できるように努力をしていくことが大前提だと思っています。消費税減税については。
 その先の給付付き税額控除も含めて、与党とも協議をしながら。野党の消費税のこの議論が最優先だと思っていますが、一方で、給付金の問題もありますので、先ほど言ったような与党との協議も始めたということであります。

【朝日新聞】
 そうなると、あくまでも野田さんとしては、野党の連携を重視するのであって、何か手柄を取ろうと自民と先にやるということは基本的にはないということか。

【代表】
 消費税減税については、これは野党の共通の公約だったので、その地ならしをして実現するというのが特に野党第1党の役割だと思いますので、その務めを果たしていきたいと思います。
 ただ、給付金を言ったのは我が党、「食卓おうえん給付金」だったので、そこで自民党とかぶるところがあるので、その協議の先に給付付き税額控除も出てきていると。そういうことですね。

○日米交渉 「相互関税」めぐる混乱について(2)

【朝日新聞】
 もう一つ伺いたい。関税の今回のこの混乱等をめぐり、国民民主党の玉木代表は不信任に値するとも発言されている。今、国会は閉じている状況だが、この混乱が続く場合、不信任に値するのかどうか。その辺りは代表としていかがか。

【代表】
 閉中審査をまずやりながら、そうしたことの点検をしなければいけないのではないかと思います。

【朝日新聞】
 まだ早いと。

【代表】
 何でも先走り過ぎではないですか、皆さん。物事には段取りがあると思います。

○衆院総選挙に向けた取組について(2)

【テレビ東京】
 先ほど、次の衆院選で政権交代をするという思いは変わらないという話があったが、立憲民主党の政権運営能力についてのご認識をお聞きしたい。今、与党・自民党が関税交渉でもごたついていて、きょうも両院議員総会があるが、先行きが見通せない状況だ。国民からすると、自民党以外で政権を任せられる頼れる政党があるのかということを考えるところだと思うが、立憲民主党としては、いつでも政権を担えますという認識なのか。それとも、やはりもう少し態勢を整える必要があるという認識なのか。政権交代を掲げている中で、今の党の状況や態勢というのは率直にどのように認識されているか。

【代表】
 自信がないのだったら、政権交代と言いません。

【テレビ東京】
 自信があるということか。

【代表】
 もちろん、その前提です。政権を担ったことのある経験者もいるし、有為な若い人材も集まってきた。そういうチームで、しっかり政権運営をできるようにしていかなければいけないと思います。
 ただ、選挙の総括もやっていますので、その総括を踏まえて、より改善をして、強化をしていきたいとは思います。

【テレビ東京】
 現時点でやはり足りていない部分もあるという認識はあるか。

【代表】
 総括の中で、それを生かしていきたいと思います。

【テレビ東京】
 総括を経て、考えていきたいと。

【代表】
 はい。

○日米交渉 「相互関税」めぐる混乱について(3)

【産経新聞】
 政権担当能力の部分に関連して。今回の関税交渉をめぐり、野田代表は合意文書を結んでいないことをずっと問題意識で持っておられた。結果的に合意文書を締結しなかったことが今回のようなトラブルを起こしていると思うが、その点において野田代表のほうが正しかったと思うが、政権担当能力という部分で、もう石破政権には能力がないと、今すぐ取って代わるべきだと、そのようなお考えはあるか。

【代表】
 もし政権をお預かりするならば、当然のことながら、やはり合意文書をしっかり交わしていくということを基本とする外交交渉をしてきたと思いますし、特例措置、今回はEUは認められていますが、EUは合意文書をつくっていく予定ではないですか。何で日本がこういうことで踏み込んでしまったのかというのは、私は(政府の対応は)ミスジャッジだったのではないかと思いますから、そのジャッジは我々のほうが正しかったと思っています。

【産経新聞】
 その点において、今すぐ政権交代をすべきだと、取って代わるべきだという、そのようなお考えはあるか。

【代表】
 一つの、今回は、説明はまた聞かなければいけませんが、そういう中で、現時点においては、合意文書をつくらなかったことは大きなミスジャッジだったのではないかということは、今、強く思っています。

○政策実現に向けた論戦と協議について

【毎日新聞】
 予算委の集中の後に給付付き税額控除だったりをめぐる政調レベルでの会合が行われたり、自民党の政党支部の調査が行われたり、かなり総理と代表の中で話し合われたことを実行に移すような動きが加速したようにも見える。今までよりも、やり取りの中のことがすぐに発展したようにも見えるが、この点をどのようにまず評価されているか。

【代表】
 ことしに入って、石破総理との論戦で、予算委員会で先般の8月4日を含めて5回です。党首討論は3回やりました。8回論戦を交わしていますので、もうお互いの癖は知り尽くしてきた中で、もしかすると今回が集大成の予算委員会かもしれないと思いましたので、思い切って協議をできる、そういうテーマは何なのかを真剣に考えて、そして、主張いたしました。
 各論でいうと、まだまだ違いがいっぱいあると思います、それぞれ。だけど、膝を突き合わせて協議しようということについては、総理のほうも覚悟を決めて応じてきたなという実感は持ちました。問題はこれから、各論だと思っています。

【毎日新聞】
 党内が苦しい中で、石破総理のほうから立憲民主党のほうに近づいているようにも、客観的に見ると見えなくもないような気もするが。

【代表】
 印象については私はわかりませんが、我々の政策実現をするためには、他党のスローガンを使ったら恐縮ですが、やはり「対決より解決」のすごいチャンスではないかと思います。

【毎日新聞】
 ちなみに、先ほどの不信任、先走り過ぎの皆さんの中には、玉木さんも入っているのか。

【代表】
 人のことは申し上げません。

(以上)