衆院憲法審査会が5月22日、憲法改正国民投票をめぐるフェイクニュースやファクトチェックをテーマに開かれ、奥野総一郎議員が党を代表して、鳥海不二夫・東京大学大学院工学系研究科教授、平和博・桜美林大学リベラルアーツ学群教授の2人の参考人に対し質問を行いました。奥野議員は、鳥海教授、平教授に対して、海外の事例、特にルーマニアとドイツでの対策の現状などについて質問しました。

 冒頭の意見聴取で平教授は、フェイクニュース問題の核心が「意図的に拡散される有害な虚偽情報である偽情報は、社会に分断や混乱、扇動、人権侵害といった深刻な危害を及ぼす」ことにあると指摘。こうした背景からEU(欧州連合)では、DSA(デジタルサービス法)により違法情報を規制し、有害な偽情報にはDSAと連動したプラットフォームの自主規制や行動規範で対応している実態を紹介しました。

 平教授は、奥野議員の質問を受けて、DSAはプラットフォーム事業者に対して違法コンテンツの削除義務を課しているものの、期限は具体的に区切っていないと解説。一方、ルーマニアやドイツでは、削除までの時間を設定し、違反した場合は制裁金を課しており、この点でDSAを超える規定をそれぞれ実施している現状だとしました。このため両国では、表現の自由への萎縮や懸念が指摘されており、両国の対策は「日本における偽情報対策の議論とはかなり距離があるのでは」との考えを示しました。

 また奥野議員は、海外の先進的な取り組みも参考に、日本の選挙や国民投票における偽情報対策のあり方について、両教授に質問しました。

 鳥海教授は、選挙期間は非常に短くファクトチェックを十分に行えない実態を踏まえると「ウクライナのプレバンキング(prebunking)といった形での対策の方が効果があるのではないか」と述べました。プレバンキングとは、平教授によると、想定される偽情報に関する検証結果をあらかじめ公表しておくことで社会の免疫力を高める手法のこと。事例としては、ウクライナ政府がロシアによる侵攻の2週間前に、ゼレンスキー大統領のAIによる偽動画の拡散などについて国民に注意喚起を行い、実際に拡散した際の混乱を抑制できたとされています。

 また、平教授は、国民投票に関しては「憲法改正案の分かりやすい説明と周知」が基本になると指摘しました。例えば災害発生直後といった「情報の空白」があると偽情報が拡散する余地があるため、「正確で分かりやすい情報が十分に行き届いている情報環境の場合には偽情報は広がりにくいとも言える」と述べ、広報協議会の役割に期待を示しました。