衆院憲法審査会が6月5日、「憲法と現実の乖離」をテーマに開かれ、立憲民主党の山花郁夫、平岡秀夫、武正公一の各議員が自由討議を行いました。

山花議員は、日本学術会議問題における学問の自由と、同性婚や性同一性障害特例法に関する相次ぐ違憲判決、という2つの現実を取り上げました。学問の自由に関しては、京都大学の滝川幸辰教授が休職処分を受けた1933年の滝川事件を振り返り、「政治権力によって大学の教授をその学問的所説のみに基づいて事実上免官することは、学問の自由に対する侵害」にほかならないと強調しました。戦後、最高裁判所は、大学における学問の自由を保障するために大学の自治を認め、これは大学という組織が「学問の自由が保障される研究者による組織」だからだと指摘しました。
この考え方を当てはめれば、日本学術会議は研究者による組織であるがゆえに、「人事などが政府によって干渉されないことが憲法23条によって保障されている」として、2020年に起きた菅首相による任命拒否は、憲法に反すると批判しました。
また、2つ目の現実に関しては、これまで違憲判決が出された薬事法や森林法、国籍法などは、1ヵ月から半年程度で、それぞれ法改正が行われてきた事実を指摘しました。一方、性同一性障害特例法については、最高裁が2023年10月、憲法13条に違反するという判断を下しながら、いまだ改正がなされておらず、「違憲判決が出てから1年以上放置されるのは極めて異例だ」として早急な法改正を訴えました。
山花議員は、憲法審査会が「日本国憲法および日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行う」ことも重要な権限となっていることから、こうした課題も積極的に審査会のテーマで取り上げるべきだ、と述べました。

平岡議員は、死刑と憲法について発言しました。現在、死刑廃止国は事実上の廃止国も含め世界の7割を超える144ヵ国に及び、国連人権理事会からも死刑廃止に向けた勧告が日本に対して繰り返されている現状を紹介しながら、こうした世界情勢のなか、「日本国憲法は死刑制度のない刑罰制度とより親和的であり、速やかに死刑存廃の国民的議論を行うべきだ」と述べました。

武正議員は、憲法7章の財政について論点を提起しました。30年ぶりの与党過半数割れに伴い、国会における予算修正を実現したものの、「国会の審議権充実のため、米国議会を見習って国会予算局のような予算審議に供する組織を設けることが必要だ」と述べるとともに、議員立法数の増加に対応するため「衆議院法制局や調査局などの定員の増員や予算の充実も」と訴えました。
