参院本会議で12月16日、令和7年度(2025年度)補正予算が与党と公明党、国民民主党の賛成により可決・成立しました。

 同日午前の参院予算委員会では採決に先立ち締めくくり総括質疑が行われ、徳永エリ議員は(1)補正予算での非課税世帯への支援(2)食料品の消費税ゼロ実現(3)経営困難な医療機関、介護・障がい福祉施設等への支援――等について質問しました。

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 徳永議員は、今年度の老齢基礎年金の支給額が昨年度からわずか1.9%の引き上げ、月額(満額)69,308円であることに「物価高に吸収され、上がった実感がないのではないか」と提起。非課税世帯への支援策に昨年あった現金給付がないことにも触れ、「必要な人に必要支援が届くか疑問だ」と指摘しました。「苦しい年金生活者の人を考えて食料品ゼロ%を検討してほしい」と、立憲民主党が掲げる「飲食料品にかかる消費税率0%」への賛同を呼びかけると高市総理は日本維新の会との連立政権合意書にも「法制化につき検討を行う」とあるとして、「選択肢として排除するものではない」と応じました。

 経営困難な医療機関、介護・障がい福祉施設等への支援をめぐっては、医療機関の倒産が上半期だけで35件と昨年度を上回る危機的な状況にあるとして、大幅プラス改定を強く要請。今後、介護人材の不足がさらに深刻化することが予想されるなか、いかに人材を確保するかを真剣に考えないと必要な支援を受けられないと述べ、介護職に就きたいと思える職業にするため、処遇の改善のみならず社会的地位の向上をと訴えました。

 質疑終局後、政府提出予算に反対して討論に立った小島とも子議員は、経済対策の「規模」と「内容」に重大な問題があると指摘。21兆3千億円規模の対策で11兆7千億円もの国債を発行することについて、円安や輸入コスト高といった根本原因を解決しないままの財政出動は、円への信認を損ない物価高を招きかねず、対策として意味が薄いと批判しました。さらに、本来当初予算に計上すべき経費を補正で積み増す「補正回し」が常態化し、違法状態が続いているのではないかと問題視。立憲民主党と公明党が提出した組み替え動議に触れ、歳出の適正化と国債発行の抑制、補正予算の本来の在り方を取り戻す必要性を強調し、今後も物価高対策に全力を尽くすと表明しました。

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 森本真治参議院議員は参院本会議において反対の討論を行いました。

 予定原稿は以下のとおりです。

 令和7年度補正予算(2案)討論

令和7年12月16日

立憲民主・社民・無所属 森本真治

 立憲民主・社民・無所属の森本真治です。ただいま議題となりました令和7年度補正予算二案について、反対の立場から討論致します。

 2022年のウクライナ危機による世界的な資源高に端を発するといわれる我が国の物価高は、長期間にわたって国民の暮らしを圧迫しています。消費者物価指数は3年7ヶ月にわたり前年比2パーセントを超える上昇を続け、実質賃金は10ヶ月連続でマイナスとなっています。未曽有の物価上昇が続く中、米国の関税措置という、正に国難とも言える事態に直面し、本年の7-9月期の実質GDPは年率で2.3パーセントものマイナス成長となりました。

 こうした状況下で、まず指摘しなければならないのは、政府の経済対策及び補正予算の提出が、あまりにも遅過ぎたという点です。現下の物価高局面において、とりわけ食料品の価格は前年比6パーセントを超える上昇が一年近く続き、品目数も通年で2万品目以上が値上がりをしている中で、特に弱い立場にある方々の暮らしは困難な状況に置かれています。

 立憲民主党は、本年1月の段階で令和7年度本予算の修正を主張。4月にも物価高対策と併せて、米国の関税に備えての経済対策をまとめ、政府に対してその取り組みを促してきました。しかしながら自民党政権は重い腰を上げることなく、参議院選挙に突入、早期の物価高対策を望む民意が示されました。しかし自民党は選挙後、党内政局に明け暮れ、今日まで、実に4ヶ月以上もの政治空白をもたらしました。苦しい国民生活を脇目に権力闘争に没頭した自民党の無責任な態度に、強く抗議いたします。

 さらに、長い政治空白を経て、ようやく策定された政府の経済対策は、国民生活の下支えとは無縁の措置が多く含まれた規模ありきのものであり、今求められている対策とは到底言えません。我々、立憲民主党は独自に「くらし・いのちを守り、賃上げを加速する緊急経済対策」を発表し、国民の期待に応える物価高対策、市場の信認に応える堅実な財政の在り方を示しました。本補正予算は、我々の考えとは相容れない点も多くありますので、本補正予算に反対し、以下主な理由を申し述べます。

 反対の第一の理由は、物価高に直面する中低所得者層への迅速な家計支援が不十分な予算となっている点です。立憲民主党は中低所得者世帯一人当たり三万円、子ども一人当たり二万円の給付を主張しております。この点、補正予算に子どもへの給付が盛り込まれたことは一定の評価をいたしますが、中低所得者への給付は措置されておりません。生活の苦しさは子育て世帯に限らず、ワーキングプアの方や年金生活者など様々な世帯に広がっております。こうした方々に対する給付も併せて行ってこそ、今苦しんでいる方を誰ひとり取り残すことのない支援となります。

 加えて重点支援地方交付金に食料品の物価高騰に対する特別加算4000億円が加算されるとのことですが、その内容、また即効性については各自治体にご負担をおかけすることになります。委員会の質疑では各自治体に、年内に予算化をお願いしたいとの答弁でしたが、各議会はすでに12月定例会を終えたところもあり、自治体間で支援が行き届くタイミングにばらつきが生じます。自治体に過度な負担を押しつけるのではなく、国が責任をもって行うべきです。

 反対の第二の理由は、財政出動の規模が、マーケットに無用な不安を与える懸念が残るということです。物価上昇が続く中で、野放図に歳出を拡大すれば、物価上昇に歯止めがかからなくなる恐れがあります。かかる状況下での補正予算編成においては、追加財政を真に必要な規模に絞るとともに、その財源は税収の上振れや歳出改革、税外収入といった赤字国債に依存しない手法で確保すべきであります。

 ところが、本補正予算の規模は昨年度を大幅に上回る18.3兆円に達するうえ、その財源でもっとも大きな割合を占めるのは、8兆1570億円にも達する赤字国債の追加発行となっております。高市総理は「新規国債発行額は前年度の補正後予算を下回った」などと胸を張りますが、政府の財政に対する姿勢が市場の信認に背くものであることを示すかのように、足下では長期金利が上昇し、円安も一段と進行しております。このように財政への目配りを欠き、国の根幹を揺るがしかねない無責任な本補正予算は、到底容認できるものではありません。

 反対の第三の理由は、緊要性に乏しい事業が多数含まれた予算となっている点であります。

 財政法第29条において、補正予算は「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」等のために作成できると定められております。しかしながら、本補正予算にはかかる要件が担保されているか疑わしい予算が多数盛り込まれております。

 例えば、5021億円が計上された防衛力整備計画対象経費については、安全保障環境がより一層厳しさを増す中で、防衛力を強化する必要性こそ認められるものの、中長期的な視点に立って策定されるべき安全保障政策にかかる予算は本来、当初予算に計上すべきものです。また、防衛関係費は令和5年度、6年度ともに1000億円余が不用となっており、本補正予算に計上された防衛費も、昨年までと同じように使い切れないのではないでしょうか。

 さらに、基金にも約2.5兆円が措置されておりますが、複数年度にわたって継続的に支出を行う基金への予算措置は、緊要性を要件とする補正予算とは馴染まず、残高が積み上がっていることからも見直しは必須であります。

 緊要性の乏しい事業の規模をむやみに拡大する財政法の趣旨を没却した予算は断じて受け入れることができません。

 以上、本補正予算に反対する主な理由を申し述べました。

 最後に、政治改革について、一言申し添えます。現在政治に対する信頼は地に落ちています。「政治家は悪いことをする」とのイメージが多くの国民にこびりついています。その原因の最たるものが、繰り返される「政治とカネ」の問題にかかる政党や議員の不祥事です。高市総理は事件がおきる度に、改革の努力を行ってきたと予算委員会で答弁されましたが、不祥事を繰り返すのは自民党議員ばかりです。突如として今国会、議員定数削減を与党は強行しようとしましたが、急ぐのは、政治のカネの問題を根絶する第一歩である企業・団体献金の規制であることは言うまでもありません。

 あわせて大規模な政治資金パーティーの自粛を求めている、大臣規範が有名無実化している実態も議論となりました。高市内閣の閣僚においても、国民感覚からすれば、どう考えても大規模と言わざるを得ないパーティーを開催した大臣もいらっしゃり、高市総理は大臣規範のあり方を検討すると表明されました。しかし、大臣在任中はパーティーの開催を自粛する。これくらい徹底しないといけないのではないかと考えます。高市総理には是非その判断を求めたいと思います。

 立憲民主党は引き続き、国民生活を守る政策を最優先で進めていくと同時に現在の政治不信から、国民の皆様に信頼していただく政治の実現のための政治改革に先頭に立って取り組んでいく決意を申し述べ、私の討論と致します。


令和7年度補正予算本会議反対討論(森本真治).pdf