参院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会で7月22日、国家社会機能継続性確保施策及び副首都等の整備に係る施策の推進に関する法律案など3案に関する一括質疑が行われました。「立憲民主党・無所属」から杉尾秀哉、鬼木誠両議員が質疑に立ちました。
杉尾秀哉議員
杉尾議員は、(1)法案の成立を急ぐ背景と立法事実の有無(2)南海トラフを考慮しないリスク評価(3)大都市法改正の矛盾と「都構想」利用(4)必要コストや投入規模の不透明さ――などについて、政府および法案提出者の姿勢をただしました。
法案成立を急ぐ背景と効果への疑問
杉尾議員は冒頭、本法案を通すための会期延長に強く抗議した上で、法案が目的とする災害時のバックアップ体制や多極分散型経済の実現という趣旨自体には異論がないと述べました。しかし、世論調査で国民の6割が今国会での成立は必要ないと答えている点を指摘し、「会期延長をしてまでこのずさんな法案を成立させようとする理由は、自民党と維新の会の連立合意書に書かれているという一点しかないのではないか」と追及しました。法案提出者の柳ヶ瀬裕文議員は、東京一極集中のリスクを克服し、災害に備えたバックアップ体制を早期に構築する重要性を強調しましたが、杉尾議員は「副首都を指定すれば、なぜ日本経済が発展し一極集中が意図通り是正されるのか、筋道が全く分からない。極めて支離滅裂な法律だ」と批判しました。
南海トラフを考慮しないリスク評価
法案が想定する大規模災害が首都直下地震と富士山噴火の2つに限定され、南海トラフ巨大地震が含まれていない点について、杉尾議員は「詭弁(きべん)だ。リスクの少ない場所を選ぶべきだ」と追及。法案提出者の岩谷良平議員は「東京との同時被災を考慮し、同時被災の可能性がある地域のみを除外した」と釈明しましたが、内閣府への質疑により、甚大な被害が出る予測が示されました。杉尾議員は、東日本大震災の教訓である「想定外の事態を想定する」姿勢が欠落しているとし、専門家が警告する富士山噴火と南海トラフ巨大地震の連動リスクも無視されていると批判。「大阪は安全な街ではなく、副首都には向かない。科学的知見が軽視されている」と指弾しました。
大都市法改正の矛盾と「都構想」利用
法案の付則に「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(大都市法)の改正が盛り込まれ、都への名称変更を可能としている点について、杉尾議員は「副首都指定と都構想は無関係であるはずなのに、なぜ大都市法を改正して住民投票のルールや名称変更を可能とする必要があるのか」と論理矛盾を追及しました。法案提出者の高見亮議員は、行政体制の一元化・一体化を理由に挙げましたが、杉尾議員は「2回も住民投票で否決された都構想を再び進めるために、住民投票のルールを変え、都に名称変更するための法案ではないか」と指摘。すでに大阪府市が法案成立を前提として「副首都局」の予算や人員を大幅に増額・増員している実態を挙げ、特定地域・特定政党の政治目的に法案が利用されている懸念を突きつけました。
必要コストや投入規模の不透明さ
杉尾議員は、公平公正な選定基準が法案に明記されておらず、基準の策定が政府に丸投げされている状況を問題視しました。さらに、副首都の想定箇所数やインフラ維持にかかる国費の投入規模についてただしたところ、法案提出者の柳本卓治議員や矢野和男議員からは具体的な想定数も予算規模の概算も示されず、「指定された後に検討する」との答弁に終始しました。杉尾議員は「数兆円規模になるかもしれない国費の投入規模や、地方自治体の負担リスクすら決まっていない。このような状況で法案を審議できるわけがない。あまりにも立法府を軽視しすぎだ」と厳しく批判し、法案の出し直しを強く求めました。

鬼木誠議員
鬼木議員は、(1)副首都法案に大都市法改正を盛り込む必要性(2)「都」への名称変更を認める特例の合理性(3)副首都指定と特別区設置の関係(4)交通網整備や国による支援の範囲(5)指定基準を政令に委ねる制度設計――などについて、法案提出者の姿勢をただしました。
副首都法案と大都市法改正の関係を追及
鬼木議員は冒頭、大規模災害に備えて首都機能を分散し、バックアップ体制を整備する必要性そのものは認めると述べました。一方、多極分散型経済圏の形成など複数の目的が加えられたことで、「本来最も重要であるべき大規模災害への備えという目的が後ろに下がっている」と指摘しました。
その上で、副首都法案の付則に「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(大都市法)の改正を盛り込み、特別区を包括する道府県が名称を「都」に変更できるようにする点について、「副首都法案と大都市法は、本来の目的が全く異なる」と追及。副首都の指定と大阪都構想が一体であるかのような印象を与える法案の構成だと批判しました。
名称変更は現行の地方自治法でも可能
鬼木議員が、現行法では都道府県の名称を変更できない法的な支障があるのかを総務省に確認したところ、地方自治法に基づき、法律によって名称変更を行うことは可能であるとの答弁がありました。
鬼木議員は、この答弁を踏まえ、現行の地方自治法によって名称変更が可能であるにもかかわらず、あえて副首都法案の付則に特例を設ける理由はないと指摘。名称変更の新たな手続きを整備する必要があるのであれば、副首都に限定した特例ではなく、地方自治法の一般規定として行うのが本筋だと主張しました。
法案提出者は、特別区を設置する道府県について、名称の上でも「都」となることを可能にする制度だと説明しましたが、鬼木議員は、地方自治法の規定を都合よく使い分けていると反論。「都」への名称変更に限定する合理性にも疑問を呈しました。
特別区設置は「必須条件ではない」と確認
副首都の指定要件とされる「必要な地方行政体制」について、鬼木議員は、特別区の設置が副首都指定の絶対条件となるのかを確認しました。法案提出者は、特別区の設置だけでなく、条例や自治体間の連携によって事務を一元的・一体的に実施する体制も想定しているとして、「特別区の設置は複数ある選択肢の一つであり、絶対条件、必須条件ではない」と答弁しました。
鬼木議員は、この答弁を「大事な点だ」とした上で、副首都指定と特別区設置が一体のものであるとの誤解を与えないよう、今後の制度運用においても明確にするよう求めました。
交通網整備や国の支援範囲は不透明
法案が定める首都中枢機能の代替に必要な体制整備への支援について、法案提出者は、国の機関の職員が勤務する環境の整備や、民間事業所の移転を促す税制上の措置などを想定していると説明しました。
鬼木議員は、今後、地域からの要望を受け、大阪都構想を前に進めるための政策や支援を国が検討するのではないかという懸念は払拭されていないと指摘しました。
また、副首都の交通網整備にリニア中央新幹線が含まれるのかをただしましたが、法案提出者は、副首都の区域内と区域外を結ぶ交通網も合理的な範囲で対象になり得るとしながら、具体的な路線については今後の基本方針などで定まるとして明言を避けました。鬼木議員は、大規模災害への備えよりも、多極分散型経済圏の形成や追加的な投資が前面に出て、副首都が利益誘導のための手段として利用されるおそれがあると批判しました。
指定基準を示さない「生煮えの法案」
鬼木議員は、副首都の指定基準や必要な地方行政体制など、法案審議に不可欠な事項の多くが、成立後に政府が政令や基本方針で定めることになっている点を問題視しました。
法案提出者は、災害時に東京と同時に被災する可能性や、行政機関の立地、人口・経済の集積、必要な地方行政体制などを踏まえ、政府が政令で詳細を定めると説明しました。しかし鬼木議員は、「最低限必要な規定や方針は、法案と一緒に示すべきだ」と反論し、「それすらできていないのに、なぜ成立を急ぐのか」と追及しました。
最後に鬼木議員は、首都機能のバックアップに向けた議論は必要だとした上で、「今回の法案は不備が多く、拙速に進めてよいものではない。生煮えの法案であり、急ぐべきではない」と述べ、質疑を終えました。

