立憲民主党は3月2日、国会内で旧統一教会被害対策本部会議を開催しました。

 政府は現在、被害者救済法(消費者契約法、法人等寄附不当勧誘法等)の施行に伴う関係政令を整備する政令について意見募集(パブリック・コメント)をしています(3月2日まで)。今回の会議では、消費者庁から意見募集の実施状況についてヒアリングするとともに、意見募集をしている「処分基準等(案)」について全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士から意見を聞きました。

 意見交換を行った結果、処分基準等で法律より要件が厳しくなっている部分があるとの懸念がみつかり、できるだけ幅広く救済できるものとしたいとして、4月1日には施行されることからも、対策本部では早急に考えをまとめ、消費者庁に申し入れを行う予定を確認しました。

 弁護士連絡会の阿部克臣弁護士と木村壮弁護士からは、被害者救済法に基づく処分基準等について次のような指摘がありました。

■配慮義務を遵守しておらず勧告を行う場合について

 (1)例として挙げている「寄附の勧誘を受けている個人が自由な意思を抑圧されている」という場合について、「抑圧の程度や期間の長さが著しいとき」や「抑圧状態に置かれている個人が多数に及んでいるとき」としているが、自らの意思で活動しているようにみえる場合も、意思形成過程で違法不当な伝道手法が用いられたような場合は「自由な意思を抑圧」と評価されるべき。

 (2)「『著しい支障が生じていると明らかに認められる場合』については、著しい支障が生じていることを客観的に認めることができる場合」、例として「配慮義務違反を認定して不法行為責任を認めた判決が存在する場合が考えられる」としているが、「明らかに」を「客観的に」と限定してしまうと、客観的な裏付証拠がなければ要件を充たさないとされかねない。「明らかに」は単に明白であるという意味と解すべき。

 また、「判決」が必要だとすれば、提訴から判決まで数年かかることが通常であることから、勧告が出るのはさらにその後になってしまい被害防止にならない。例えば、全国の消費生活センター・法テラス・消費者庁など行政に多数の相談が寄せられている場合も、「個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる」といえるので、その旨明記すべき。

(3)「過去に著しい支障が生じていたが、既に勧誘の在り方が見直されて今後は改善が見込まれる場合には、この要件を満たさないと考える」としている点は削除すべき。表面的、または一時的な見直し・改善により勧告を逃れられることになりかねない。また、過去に著しい支障が生じていたような場合は、特段の事情がない限りは「同様の支障が生ずるおそれが著しい」といえるので。

■勧告を行うために配慮の状況に関して行う報告徴収について

 勧告の要件が「全て満たされていると考えられる場合に行う」としているが「全て満たされているおそれがある場合に行う」とすべき。

 勧告を出すかどうかを判断するための資料を集めるために行われるものであり、「疑い」「おそれ」がある場合に行われるものであり、既に要件を充たしていることが明らかな場合に行われるものではない。例えば、児童虐待防止法では、立入調査は児童虐待の「おそれ」がある場合に行うものとされている。

■寄附の勧誘に関する業務の状況に関して行う報告徴収について

 「禁止行為が不特定又は多数の個人に対して繰り返し組織的に行われており」とあるが、こうした場合には、禁止行為が組織的に行われていることが推認される。そして、組織的に行われているかは外部から必ずしも明らかではないため、「組織的に行われ」ていることが報告徴収の行使に必要であるとすると、現実的に権限行使が極めて困難になる。

 報告徴収は禁止行為の悪質性、組織性、継続性等を明らかにするために行うものであること[処分基準案2項(2)]からすれば、禁止行為が組織的に行われていることが明らかにならないかぎり報告徴収の行使ができないと解すべきではない。したがって、処分基準案の上記表現から「組織的に」の文言は削除されるべきである。

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阿部克臣弁護士
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木村壮弁護士