■企業・団体からの献金を禁止

 自民党派閥の裏金事件を受け、今回、あらためて企業・団体献金の禁止が焦点となりました。そもそもリクルート事件に端を発した1994年の政治資金規正法の改正では、企業・団体献金の廃止を前提に国民1人当たり250円の税金を政党に拠出する政党助成金制度を創設しました。そして企業・団体について政治家個人に対するものは禁止し、資金管理団体に対しては施行後5年を経過した場合に、「禁止する措置を講ずるものとする」、政党・政治資金団体に対するものはそのあり方について「見直しを行うものとする」と、規正の方向を明らかにしました。

 しかしながら、経過措置後の2000年に禁止されたのは政治家の資金管理団体への献金のみで、政党は、政党助成金と企業・団体献金の両方を受け取ることができます。

 今回、立憲民主党など野党各党は全面禁止を主張しましたが、自民党提出の改正案には盛り込まれず、利益誘導政治を存続させることになりました。岸田総理は「禁止するものではなく、透明度を上げるべきもの」「政治活動の自由の一環として最高裁判決で認められている」と開き直り、献金する側の経団連の十倉雅和会長も「政党に企業の寄附(献金)をすることは一種の社会貢献だ」と発言。政策的な減税額が大きい業界ほど自民党への献金額が多い傾向も指摘されており、「資金力」の格差が選挙の公正性や政策決定を大きく歪めていると言えます。

 企業や団体の行う政治献金の裏には、利益誘導が疑われます。政治の金権腐敗を一掃するには企業・団体献金の禁止が必要です。

■政治資金パーティーによる抜け道をふさぐ

 政党支部経由の献金がまかり通るとともに、企業・団体献金の迂回路として使われた政治資金パーティーが、今回の自民党派閥の裏金事件となりました。パーティー券の代金はパーティー参加の対価とされますが、対価という本来の目的が薄れ、事実上の企業・団体献金となっています。外国人や海外企業の購入も規制されていません。1件当たり20万円まで購入者名を公表する必要がないことから、パーティー券を誰に、いくら売ったかの確認・突合が極めて難しく、公開や量的規制の抜け道となり裏金化が容易だと指摘されています。

 213回通常国会で成立した改正政治資金規正法では、購入者名の公開基準額が1件当たり「20万円超」から「5万円超」に引き下げられましたが、回数制限は無くパーティーを小分けにして1回当たりの金額を抑えれば、氏名の公開を回避できます。加えて、任意団体が主催し、その収益を政治家の関係団体に寄附するいわゆる「岸田方式」や、「オンライン開催」は「政治資金パーティー」の公開規制には該当しない抜け道になってしまいます。立憲民主党は、この抜け道をふさぐことを提案しました。

■個人の寄附への税額控除を抜本拡充

 国民の政治参画を保障する制度として、すべての政治活動への個人献金に対する税の優遇制度の確立が必要です。立憲民主党は、企業・団体献金の全面禁止に伴って役割が大きくなる個人献金の促進策として、個人献金の税額控除の対象を政党・政治資金団体だけでなく国会議員、都道府県の議員・知事、政令指定都市の議員・市長(候補者等を含む)の資金管理団体にまで拡大するとともに、税額控除率を引き上げることを提案しています。また、政治資金パーティの開催の禁止に伴い、一般市町村議会議員及び市町村長の資金管理団体に寄附金控除の対象を拡大することの検討を求めています。

 一方で、自民党派閥の裏金問題とともに、国会議員が自ら代表を務める政党支部に寄附して税控除を受け(※)、所得税の一部が還付されていたことが相次いで明らかになりました。政治家が自身の後援会や資金管理団体に寄附しても、自らに利益が及ぶ寄附になるとして税優遇は受けられませんが、自ら代表を務める政党支部への寄附は税優遇の除外対象になっていないことから、還付が受けられるものです。野党側は政治家本人による政党支部への寄附は税優遇の対象から外すよう求め、今回修正案の附則に「検討」を明記しましたが、一刻も早い制度の見直しが必要です。

 第213回通常国会の最終盤となる6月19日、岸田総理は就任後初となる党首討論で「政治にはコストがかかるのは当然だ。全て禁止して現実を見ることがない案であってはならない」と発言していました。今、何が問われ、国民の政治不信がどこに向けられているか、まるで理解していないことは明らかです。

 立憲民主党は、裏金体質や金権腐敗の根を断って「まっとうな政治」を実現します。

※ 個人が政党本部・支部に現金を寄附すると、「寄附額-2000円の3割が税額控除される(政党等寄附金特例控除制度)か、または課税対象の所得総額から「寄附額-2000円」が所得控除される(寄附金控除)かいずれか有利な方を選択することができる(それぞれ上限あり)。