衆院本会議で12日、日英包括的経済連携協定(日英EPA)に対する趣旨説明質疑がおこなわれました。本協定は、日EU・EPAにおける英国市場へのアクセスを維持し、鉄道車両・自動車部品等一部品目で英国市場へのアクセスを改善。日本市場へのアクセスについて、基本的に日EU・EPAの内容を維持し、電子商取引、金融サービス等の一部分野では、より先進的かつハイレベルなルールを規定することを趣旨としています。
立憲民主党からは阿久津幸彦議員が質問をおこないました。阿久津議員は、(1)菅政権の経済外交方針(2)英EU間のFTA協議が日系企業に与える影響(3)工業製品・電子商取引(4)農林水産品(5)RCEP(6)貿易及び女性の経済的エンパワーメント――等について外務大臣をはじめ関係大臣に質疑をおこないました。
阿久津議員は今回の日英EPAについて、「経済協定を結ぶことに異論はない」としながらも、「英国のEU離脱という衝撃的な出来事の副産物として検討を余儀なくされた協定であることはきちんと認識しなければなりません」と指摘しました。また、「EU側から見れば、ヨーロッパ全体を一つの地域として政治的・経済的統合を進めてきた流れに逆行し、EUという共同体全体の利益を損なう可能性もあるものと考えられます」と述べ、茂木外務大臣に英国のEU離脱についての評価をただしました。
さらに阿久津議員は、菅総理が「多角的自由貿易体制の維持強化」を掲げているにもかかわらず、2国間での経済連携協定を締結することに「矛盾しているのではないか」「内向き志向を肯定し、助長しているのではないか」と疑問を投げかけました。
英国には、自動車メーカーをはじめ多くの日系企業が進出し、多くの雇用を生み出していることを取り上げ、「英国に工場を置く日系企業の多くは、部品の半分以上をEU諸国から輸入し、英国内で組み立て、完成品を英国からEU諸国へ輸出するサプライチェーンを構築しています」と日系企業にとって英国がEUのゲートウェイとなる重要な地位を占めていることを説明。英国とEUとの通商協議が決裂した場合に大きな影響を受ける可能性があり、一部報道では、日系の自動車メーカーが英国政府に関税コストの補償を請求する動きがあるとされていることから、日本政府のバックアップ体制がどうなっているかを質問しました。
本協定の第21章「貿易及び女性の経済的エンパワーメント」の規定にも触れ、2010年に94位だった日本のジェンダーギャップ指数(各国における男女格差を測った指数)が2019年には153か国中121位で過去最低となり、21位の英国に比べ、民間企業や公務員の女性管理職の比率や国会議員における女性の割合が大きく遅れをとっていることを紹介。
「わが国においてはこれほどに男女に格差があるばかりか、一向に改善しない状況について、人権の尊重、民主主義という観点からも問題視されているからこそ、この条項が入った」と述べ、女性による国内経済及び世界経済への衡平な参加の機会を増大させることの重要性を認識することに対応して、政府がどのような具体的取り組みをおこなうのか説明を求めました。