阿久津幸彦議員は2月14日、衆院本会議で「所得税法等の一部を改正する法律案」に関する趣旨説明質疑で登壇し、(1)ガソリンの暫定税率の廃止(2)防衛増税の撤回(3)食事手当の非課税限度額の引き上げ(4)独立した「災害損失控除」の創設(5)納税者権利憲章の制定――等を主張。本法案に対する修正案を準備しているとして、予算の修正だけでなく、税法の修正にも応じてほしいと石破総理に迫りました。
阿久津議員の予定原稿は以下の通りです。
「所得税法等の一部を改正する法律案」趣旨説明に対する質疑
立憲民主党・無所属 阿久津幸彦
立憲民主党の阿久津幸彦です。
私は、立憲民主党・無所属を代表して、ただいま議題となりました「所得税法等の一部を改正する法律案」について質問させていただきます。
冒頭、政府の高額療養費制度の自己負担上限額引き上げについて、福岡厚生労働大臣はがん患者団体などと面会されましたが、がん患者団体などは一時凍結を強く要望し、微修正を検討している福岡大臣とは隔たりが大きく、患者団体などの怒りや不満はますます高まっています。我が党は野党にも呼びかけて早ければ来週中にも「高額療養費自己負担引上げ凍結法案」を国会に提出予定です。総理、上限額引き上げは一旦凍結すべきではないですか。
さて、私は、所得税を含む国税は本来「国民のためにある」と考えています。
国民にとって、その実感が得られないのは、「税の再配分機能が十分に果たされてない」からです。税を納めても、どこに使われているのかわからない。賃金も上昇しない、社会インフラも思ったほど整わない、そもそも税の仕組みそのものが複雑でよくわからない……。
そうした国民の税に対する不満や痛税感を解消するために、私ども立憲民主党は所得税法等改正案に対する修正案を提出予定です。
併せて、さまざまな政策を実現するため、本日、わが党の野田代表が令和7年度(2025年度)予算修正案を発表しました。今後与党にも説明させていただくとともに、国会に提出して政府案との並行審議を求めます。
総理、私たちの修正提案に耳を傾けていただき、「熟議の国会」が機能し始めてきたのだと、国民に希望を持っていただくことから、共に始めようではありませんか。
米の価格やエネルギー価格の高騰など、国民は物価高の影響で、疲弊しています。少しでも安いものを求めてスーパーを回ったり、生活費を切り詰めたりして、何とか日々を凌いでいるのが現状です。総理は、この国民生活の現実を認識しておられるのでしょうか。
農林水産省は本日、備蓄米の放出を発表されました。これで米不足が解決するのか、米価は適正な水準に落ちつくのか、総理、お答えください。
それでは本題に移らせていただきます。
まず、ガソリンの暫定税率廃止についてです。昨年12月に自民党・公明党・国民民主党の3党の幹事長間で交わされた合意では、「いわゆる『ガソリンの暫定税率』は、廃止する」と明記されていますが、その時期については示されていません。石破総理は、3党で協議中であることを理由に、実施時期について一切の発言を控えておられます。しかし、物価高に喘ぐ国民からすれば、一刻も早く減税を実現してほしいに決まっています。石破総理は自民党総裁でもあります。自らリーダーシップを発揮して、令和7年度からただちにガソリンの暫定税率廃止を実現するお考えはないのか、ご見解を伺います。
確かに、ガソリンの暫定税率を廃止した場合、国・地方合わせて1.5兆円規模の減収が生じますから、財源を確保する必要はあります。しかし、政府がこれまでに実施しているガソリン等補助金の予算額は累計で8.2兆円にものぼります。これは暫定税率を廃止した場合の5年半分の減収額に相当しますが、こちらについては特段、財源確保策を講じていません。したがって、国民生活の窮状に鑑み、財源について、まずは我々が省庁別審査等で指摘した財源をもって対応することも可能と考えますが、ご認識を伺います。
また、いずれの場合でも、地域の住民サービスの質が低下することのないように、ガソリンの暫定税率廃止を実施する際は、地方自治体の財政に悪影響が生じないようにすることをお約束いただきたいと思います。総理の明快なご答弁を求めます。
次に、防衛増税について伺います。今回の法案では、防衛特別法人税とたばこ税見直し・引上げの実施は明記されていますが、東日本大震災の復興財源を流用する形での「防衛特別所得税」の導入、つまり、所得税の増税については先送りされました。しかし、政府は、防衛増税について「令和9年度に向けて…実施する」と令和5年度税制改正大綱に明記しています。国民に具体的な負担を求める法律の施行にあたっては、少なくとも1年程度の周知期間が必要です。今回結論を先送りしたとはいえ、必然的に、令和8年、つまり来年の通常国会に所得税の防衛増税法案を提出して、令和9年度から増税を実施する以外に政府には選択肢はないと思われますが、令和9年度から増税を実施するのですか。「増税隠し」はやめて、誠実にご答弁いただきたいと思います。
そもそも、防衛増税については、与党内でも反対の声が根強いのではないでしょうか。われわれ野党は一致して撤回を求めてきました。現状、衆議院では、「防衛増税反対が過半数の意思」となっているものと思います。石破総理には、この状況を真摯に受け止め、この際、法人税・たばこ税も含め、防衛増税の撤回を決断していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
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今回、政府は「物価上昇局面における税負担の調整」として、いわゆる「103万円の壁」の引き上げを行うこととしています。一方で、約40年間も見直しをされていないのが、食事手当の非課税限度額です。同じく企業が支給する通勤手当の非課税限度額については、過去複数回引き上げられてきました。食事手当の充実は、労働者の福利厚生、ひいては生産性の向上にもつながります。この間の食費の上昇や昼食代の相場等も踏まえて、食事手当の非課税限度額も引き上げるべきと考えますが、総理のご認識を伺います。
近年、大規模な災害が相次いでいます。現状、災害による損失は、盗難による被害を受けた場合と同様に、雑損控除で勘案されます。この雑損控除は、基礎控除など、災害を受けていない人にも適用される所得控除に先立って控除するものです。被災者は長期間にわたって災害の影響を受けます。その間、他の人と比べて担税力が失われることになります。よって、災害による損失は、他の人にも適用される控除を適用した上で勘案する方が公平なはずです。我々が度々求めているように、独立した「災害損失控除」を創設し、現行の繰越控除期間を更に延長するとともに、この控除については、他の人にも適用される人的控除を適用した後に、適用すること、加えて災害が生じた年分の純損失額の繰戻しによる還付を可能とする恒久的な「繰戻還付制度」の創設を求めたいと思いますが、総理のご見解を伺います。
今、自民党による「政治とカネ、裏金」疑惑もあり、税制に対する国民の信頼が揺らいでいます。この信頼を取り戻すため、立憲民主党として、2つのご提案を申し上げたいと思います。
石破総理は「企業・団体献金で自民党が政治を歪めたとは思っていない」と述べ、政治資金の透明性を高めることが重要と説いています。実は、税制には全くその透明性が担保されていないのです。主に企業向けの減税を行うための租税特別措置、いわゆる「租特」の問題です。現在、民主党政権で成立した「租特透明化法」に基づき、租特の適用状況については、毎年国会に報告され、適用された企業の数や減税額は明らかにされています。しかし、肝心の企業名は公表されていません。これでは本当に政治が歪められていないかどうか、客観的に確認することができません。総理は企業・団体献金については「禁止より公開」とおっしゃっています。本当に政治が歪められていないというなら、租特の適用対象となっている企業の実名を公表すべきではないですか、ご見解を伺います。
また、公表できないというのであれば、補助金の場合は交付先の企業名を明らかにできるのに、租特に限って公表できない理由を合理的にご説明ください。
税制に対する国民の信頼を取り戻すためには、もう一つ、納税者の権利・利益の保護を法律上明確化する必要があります。具体的には、「納税者権利憲章」を制定することです。現在、この納税者権利憲章は、OECD加盟国の大半の国で制定されており、わが国においても、2011年、民主党政権の時、税法の改正案に盛り込むところまでいきましたが、当時の野党・自民党の反対により、断念したという経緯があります。当時、石破総理は自民党の政調会長をお務めでした。納税者権利憲章を今こそ制定すべきではないでしょうか。総理のご見解を伺います。
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立憲民主党は、政権を担い得る責任政党として、財源に対しても責任を持ちたいと考えています。例えば、先ほど取り上げた「租特」に当たる賃上げ促進税制ですが、この租特による減収額は2023年度で7千億円強に上っています。しかし、わが国雇用の約7割を占め、賃上げの鍵を握る中小企業は、その多くが赤字法人であるため、そもそもこの恩恵を受けることができません。一方で、実際に減税の恩恵を受けている大企業は、別に租特がなくとも賃上げを行うはずです。立憲民主党は、中小企業が正規雇用を増やした場合に新たに発生する社会保険料の事業者負担の半分を、10年間国が補填する法案を作りました。これなら赤字企業でも恩恵があります。
中小企業は、社会保険料負担軽減によって、正社員を増やし、生産性を高め、賃金を上げられるようにするという考え方です。総理のご見解を伺います。
最後に、われわれ立憲民主党は、ただいまの質疑で申し上げたような問題意識を基に、本法案に対する修正案を準備しています。石破総理には、予算の修正だけでなく、この税法の修正にも応じていただきたいと思いますが、そのご意思はおありになるのか、明快にご答弁をお願いします。
国民の負託に応えるため、政府の問題点をただしながら、より良い税制の実現に全力を注いでいくことをお誓い申し上げ、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。