東日本大震災復興本部(本部長=玄葉光一郎衆院議員)は、震災後10年を迎えるにあたり、改めて被災地の現状及び復興・再生に向けた取り組みの現状を把握し、現地における要望・課題を調査するため、福島県(大熊町、浪江町、双葉町)、宮城県(石巻市)、岩手県(陸前高田市、大船渡市)を訪問しました。なお、参加者全員が直前にPCR検査を受検、陰性を確認して視察に臨みました。
1.視察概要
日程:12月14日(月)、15日(火)
参加議員:
玄葉光一郎本部長、階猛本部長代行、金子恵美事務局長、山崎誠事務局長代理(福島参加)、岡本あき子事務局長代理(宮城・岩手参加)、横沢たかのり事務局次長、石垣のりこ事務局次長(宮城参加)、杉尾秀哉 参議院震災復興特別委員長
視察先:
【福島県】
・中間貯蔵工事情報センター(中間貯蔵施設)
・大熊町役場
・福島水素エネルギー研究フィールド
・東日本大震災・原子力災害伝承館
【宮城県】
・石巻市立大川小学校跡地(震災遺構)
【岩手県】
・陸前高田市役所(コミュニティホール)
・いわてTSUNAMIメモリアル(東日本大震災津波伝承館)
・大船渡魚市場
2.視察先の状況等
【福島県】
(1)中間貯蔵工事情報センター(中間貯蔵施設)<福島県双葉郡大熊町>
福島県内の除染に伴い発生した除去土壌や廃棄物、10万ベクレル/kg超の焼却灰を貯蔵するための施設。東京電力福島第一原子力発電所を取り囲む形で、大熊町・双葉町に整備、全体面積は約16平方キロメートル(中野区と同程度)。現状でも一日2,400台のダンプが行き交い、今年度は24市町村からの輸送を実施。輸送対象物量約1,400万立方メートルに対し、これまでに約70%、累積約978万立方メートルが輸送済み(20年11月末時点)で、計画では来年度中には完了の見込みです。輸送対象物の全数管理、輸送車両の運行管理、モニタリングを実施し、安全かつ確実に輸送しています。
この廃棄物は、搬入開始から30年以内(2045年3月)に県外で最終処分することになっているが、その場所の選定は全く進んでいません。この広大な敷地に広がる貯蔵場所と、仮置きされている膨大な数のフレキシブルコンテナバッグ(フレコンバッグ 粉末や粒状物の荷物を保管・運搬するための袋状の包材)を見ると、原発事故が引き起こした事態の深刻さを改めて思い知らされます。
(2)大熊町長との意見交換
冒頭、吉田淳大熊町長から「大熊町の復興に関する要望書」をいただきました。
要望書は、(1)帰還困難区域全域の除染、家屋等の解体及び避難指示解除による帰還の促進について(2)国際教育研究拠点の整備について(3)「復興・創生期間」後の復興財源の確保等について――の3項目が主となっており、町長からは、「令和4年春に860ヘクタールの解除を目指しているが、整備状況や見込みについて未だ国から何も指針が出ておらず、具体的なスケジュールを早く示して欲しい。また、決して10年が一区切りではないので、野党からもしっかり支援の声を挙げて欲しい」旨の発言がありました。
これに対し、玄葉本部長は、「除染を山林の部分まで全てやろうとすると大変だが、住居やまちづくりの部分については当然国が実施すべきである。われわれとしても覚悟を持って、政府に働きかけていきたい」と応えました。
(3)福島水素エネルギー研究フィールド <福島県双葉郡浪江町>
2020年3月、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業とともに、世界最大級となる10メガワットの水素製造装置を備えた本フィールドを開所。浪江町を実証エリアとして新たな付加価値を有する大規模水素エネルギーシステムの開発・実用化を目指しています。11月からは、本フィールドで作られた水素を「道の駅なみえ」で活用、水素で発電する燃料電池を駅に設置し、施設の電力や熱源の一部として使っています。将来的には水電解技術の商用化実現に向けた技術実証を行います。
本フィールドも含まれる「福島イノベーション・コースト構想」。福島第一原子力発電所の廃炉を着実に進めつつ、この地に最先端の技術・研究が結集し、新たな挑戦・産業が創出され、未来の子どもたちが学ぶ、働く場が広がるこのチャレンジに、われわれとしても最大限支援してまいります。
(4)東日本大震災・原子力災害伝承館 <福島県双葉郡双葉町>
当該地域は、東日本大震災及び原子力災害という未曽有の複合災害を被災しており、事故直後の混乱と復興の歩み、また事故対応の教訓を後世に継承し、記憶の風化を防ぐための施設。
教訓継承の内容に疑問を投げかける声もあることから、あり方については不断の見直し、開かれた議論を続け、惨禍を後世に残していくことが必要です。
【宮城県】
(1)石巻市立大川小学校跡地(震災遺構)
84名(児童74名、教職員10名)が犠牲になった大川小学校(の跡地)を訪問しました。玄葉本部長より献花、メンバー全員で祈祷しました。その後、大川小のご遺族方で作られた「大川伝承の会」様より被災の状況について話しを伺いました。震災発生時は、児童による自助、判断は難しく、学校や地域による防災計画、その実行の重要性を改めて認識しました。
現在、震災遺構として保全する方向で整備中。2021年3月の完成を目指し、震災遺構の他、追悼の広場、鎮魂の森などの各エリアが整備される予定です。
【岩手県】
(1)陸前高田市長との意見交換
陸前高田市コミュニティホールにて、戸羽太市長(舟波昭一副市長、村上幸司政策推進室長陪席)と意見交換をしました。戸羽市長は、「復興やかさ上げのハード整備は一区切りが見えてきた。ただ、これで終わりではなく、住居整備や事業再建などはここからがスタートなので、各種補助金などは打ち切りではなく是非とも継続して欲しい。漁業はとても厳しい現状だが、梁漁(やなりょう)などは日本が世界に誇れる形態なので、東北発として発信していきたい。また、東日本大震災津波伝承館には、コロナ前は月に10万人ほどの来訪者があったことから、中心市街地の魅力を高めていきたい」等と発言がありました。玄葉本部長は、「総仕上げの名の下に終わらせるのではなく、再スタートが切れるよう、これからも全力で政府に働きかけていきたい」と述べました。
(2)NPO法人「SET」との意見交換 <岩手県陸前高田市>
戸羽市長との意見交換に引き続き同所にて、NPO法人「SET」の岡田理事、石渡事業部長と意見交換をしました。意見交換には、木村聡市議も同席しました。
「SET」は、東日本大震災を契機に2011年3月13日に設立され、陸前高田市広田町を中心に200名程度で運営されています。まちづくり及びひとづくりに挑戦中で、既に25人ほどの移住につなげ、現在も民泊事業、教育事業、古民家改修プロジェクトなど、さまざまな活動を通して、「人口減少下こそ豊かな社会づくり」を目指しています。
こうした若い世代の柔軟な取り組みが、地元にとっても刺激になっており、被災を風化させないためにも、新しい課題を浮かび上がらせ、その解決に向けチャレンジしていく姿の重要性を再認識させてくれます。
(3)いわてTSUNAMIメモリアル(東日本大震災津波伝承館)<岩手県陸前高田市>
震災の経験と教訓を後世に伝承するための伝承館を訪問しました。「歴史をひもとく」「事実を知る」「教訓を学ぶ」「復興を共に進める」の4ゾーンで構成されており、大きな犠牲の下、防災訓練・教育の重要性、また、過去に起きた災害の記録及び記憶を教訓としていかに後世に伝え、命を守ることの大切さに繋げていくことが重要です。
視察後、伝承館に併設された「奇跡の一本松」を望む高田松原津波復興祈念公園国営追悼・祈念施設にて祈祷をしました。
(4)大船渡魚市場 <岩手県大船渡市>
魚市場内を視察しました。戸田公明大船渡市長及び魚市場の佐藤専務より、岩手県の拠点的な魚市場であり、岩手沿岸南部の漁業者及び沖合の三陸漁場で操業する廻来漁船の水揚基地となっていること、岩手県全体では、震災前は平均16万トン強の水揚だったものが、震災後は平均11万トン弱まで落ち込んでいる、などの説明がありました。
その後、同所内会議室において意見交換(渕上市議会議長、志田副市長、鈴木農水部長など陪席)をおこないました。市長からは、「10年は長いようで短かったという感覚。水産庁はじめ各種制度を活用し、著しくはないが一歩ずつ進んでいる。ただ、コロナの影響もあり、今は利益が出ていないので、償還期間を延長して欲しい。また、後継者育成が重要だが、農業よりさらに資金がかかるので、そのあたりは喫緊の課題である」と発言がありました。また、「処理水の問題については、海洋・大気放出以外に選択肢はないのか。徹底した情報公開の下に国民的議論が必要だが先送りされている」と述べました。
玄葉本部長は、「後継者育成や被災跡地の再利用について、国の政策として進めるべきと政府に働きかけていきたい」と応じました。
全ての行程が終了後、記者団に対し、玄葉本部長はじめ参加メンバーは、「震災後まもなく10年、定点観測として被災地を訪問。改めて現場の声を聴く重要性を再認識した。地域によって必要な支援策が違っており、各地一律ではなく柔軟な対応が必要になっている。目に見える部分、いわゆるハードはめどが立ってきた。しかし、そのハードをどう活用するかなど、本当の復興はここからが新たなスタート。復興については与野党関係ないが、立憲民主党としてさらに強力に復興支援を進めていきたい」と述べました。