2020年12月18日

「イージス・アショア」の代替策等に関する閣議決定について

立憲民主党 外交・安全保障・主権調査会長
篠原 豪

 政府は、2013年の「防衛計画大綱」と「中期防衛力整備計画」において、イージス艦を8隻とし、そのすべてに弾道ミサイル防衛用のSM3を搭載して継続監視体制を整備することとしていました。しかし、政府は2017年の日米首脳会談後に、それまでの計画に全く無かった「イージス・アショア」について、その必要性に関する合理的な説明や十分な国民の理解がないまま、拙速に導入を決定しました。その結果、ずさんな分析や説明が露呈し、配備予定地との信頼醸成にも失敗し、ブースター落下制御問題を理由に配備の撤回に追い込まれたことは、時間の浪費ともなった政府の大失態です。

 しかも、イージス・アショアの代替策として政府が今般決定した「イージス・システム搭載艦」は、イージス・アショア導入の理由としてきた24時間、365日常時監視・防護の役割を果たせず、海上自衛隊の負担軽減どころか、さらなる乗組員の確保さえ必要となり、負担を増すものです。多くの予算と人員を要するイージス艦の追加配備は、FFM(新型護衛艦)や哨戒艦の新たな建造による常続監視活動という計画に影響を与えるため、南西諸島、東シナ海の実効的な防衛に資するのか議論が必要という指摘もあります。費用膨張や技術的な有効性も強く危惧されており、イージス・アショアの代替策とも到底なりえません。

 また、「イージス・システム搭載艦」には弾道ミサイル防衛にとどまらない機能を付与することを検討する方針が示されていますが、その役割や必要性については十分かつ合理的な説明が必要です。

 いわゆる敵基地攻撃能力の保有については、「引き続き検討を行う」とされました。一方で、今回新たに開発するとした「スタンド・オフ・ミサイル」については「島嶼部を含む我が国への侵攻を試みる艦艇等に対して、脅威圏外からの対処を行うため」としていますが、これが敵基地攻撃能力の保有につながらないのか、実際に島嶼部における防衛能力強化に資するのか、専守防衛から逸脱するおそれはないのか等の慎重な検討が必要です。どういう目的・用途で地対艦誘導弾を長射程化、マルチプラットフォーム化するのか、敵基地を攻撃することは想定していないのかなど、政府に対し、これまでの憲法解釈に照らしつつ、明確な説明を求めていきます。

 我が党は、限られた人員、防衛費の制約のもと、自衛隊員の任務環境など基礎的部分の改善や、真に実効性のある南西諸島防衛の強化を優先すべきだと考えます。また、サイバー、宇宙、電磁波の新たな領域における対処能力を高めるべきです。国家の根幹である国防政策が、なし崩し的で不合理なものとならぬよう、我が国全体の安全保障体制を総合的に勘案し、最も効果的で効率的な装備計画を進めるべきであり、この観点から政府の方針を問い質していきます。また、持続的な地域の安定にむけた、一層の外交努力を行っていきます。