参院本会議で3日夕、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)等改正案の審議がおこなわれ、「立憲民主・社民」会派を代表して打越さく良議員が賛成討論をおこないました。
 打越議員は、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方々に哀悼の意を表し、「2日現在、全国の感染者は2324名、死亡者は119名。お一人おひとりが『数字』ではなくかけがえのない尊厳のある存在であり、なんとかしてこの感染を食い止めなければならないことをあらためて一議員として確認したい」と表明しました。
 その上で「もとより感染は自己責任ではない。救える命を一人でも多く救い、誰ひとり取り残さないセーフティーネットを張り巡らせることが政治の役割。医療従事者や介護現場で働く方々、発表の場がなくなった音楽や舞台の方々、ひとり親、非正規労働、飲食業の方々、それぞれに困難が異なる。個別のニーズを把握し、手当する。緊急事態にあたり行政がリーダーシップを発揮しなければならない時でも、判断の透明性を確保し公正さを担保することが求められる」と訴えました。

 打越議員は、緊急事態宣言下に与党議員が深夜に銀座で会食した上、自民党議員については同行者を隠蔽していたこと、昨年は菅総理自身が大人数で会食していたことを取り上げ、苦言を呈しました。また、河井案里議員が選挙買収事件で有罪となり、辞職したことに触れ、「一昨年の参議院選挙では自民党本部から河井候補に1億5千万円もの資金が投入され、夫の克行氏とともに前代未聞の買収事件が裁かれている。河井議員には国会で説明責任をきちんと果たすよう、この場でも強く求める」と述べ、「この感染症禍を迎えていることは、まさに歴史的な危機。政治家が率先垂範しなければ、罰則を設けることについての必要性、合理性があるかに疑義が生じることになる」と菅総理と与党に猛省を促しました。

 政府の感染症対策について、「後手後手であったばかりか、突然の一斉休校要請やアベノマスク、一連のGoToキャンペーンなど妥当性を欠くと思われる政策も数多く見られた。その一方で検査の拡充や医療機関等への支援は進まず、感染爆発、医療崩壊の要因となったことは否めない」と批判し、立憲民主党をはじめとする野党が昨年12月2日に「新型インフルエンザ特別措置法及び感染症法改正案」を提出したのに、政府・与党は野党の主張を聞き入れず、国会を延長せず、今国会が召集されたのは、第3波の感染爆発が起こった後の1月18日だったと振り返りました。「本来であれば提出済みの野党案を審議すべきことは当然。十分な補償を求め、罰則規定のない野党案と、刑事罰を求める政府案を国民に明らかにし、審議を通じて合意形成を図ることが国会のあるべき姿であり、本来あるべき審議がなされなかった」と厳しく指摘しました。

 与野党法案修正について、「時間が限られる中、自民党と立憲民主党による修正協議が行われ、野党が求めていた刑事罰の削除などが実現したことは評価に値する」と述べました。
 その上で、自宅療養中に亡くなる方が相次ぎ、自宅待機中の女性が自死されたことなどを挙げ「まず医療体制を十分に整備すべきだ。積極的疫学調査に応じない方に罰則を科したり、宿泊療養等の協力に応じない方に入院措置・勧告を行い、罰則を科すことには疑問がある。また、営業時間短縮等の命令に違反する行為が命や健康へのリスクが高いと言えなければ、罰則は正当化されない。適正手続の観点からは十分な情報提供がなされなければならない」と表明しました。

 また、「罰則は偏見を強化し、感染者を絶望させ、隠ぺいさせ、感染拡大防止にも逆行するとも言われている。感染症法前文は患者等の人権を尊重しつつと明記し、第2条にも重ねて人権尊重と掲げている。さらに、特措法改正案第13条2項で感染に起因する差別的取扱いについて実態把握や相談支援、啓発活動を提案している。それは、感染拡大を阻止する責務と、感染者の人権尊重が、ともすれば緊張関係に陥ることを反省してのことではないか」と述べ、ハンセン病患者の強制隔離政策への反省を踏まえ、「慎重な運用がなされなければならない」と訴えました。

 さらに、ワクチン接種について実施主体である自治体では課題が山積しているとし、国が責任を持って自治体に対応し、充分な財政支援をおこなうよう求めました。そして、「ワクチン接種には自己決定権が尊重され、その判断によって差別などが引き起こされてはならない。ワクチンの確保状況や具体的な供給時期、副反応情報や安全性、有効性などの情報について」速やかな公表を求めました。

 緊急事態宣言が10都府県で延長されたことから、「今必要なのは、徹底した感染封じ込めのための取組みと充分な補償と給付。市中にウイルスが蔓延する中で経済を回していく『ウィズコロナ』ではなく、ウイルスの収束に向けた『zeroコロナ』を目指すことだ。立憲民主党と自民党で確認をした事業規模に応じた支援のあり方、飲食店以外の事業者への十分な補償措置等の支援措置とともに、国民生活を守るための更なる財政支援について、党としても具体的に提案していく」と述べ、政府にしっかり受け止めるよう求めました。

 打越議員は、「立憲民主党は『誰ひとり取り残さない政治』、個人を尊重する政治を実現するために全力を尽くしてまいります。私たち政治家は、新型ウイルス感染症の収束に向け、国民とともにこの危機を克服していこうではありませんか」と呼び掛け、討論を終わりました。

 法案は賛成多数で可決、成立しました。

打越さく良議員 新型インフルエンザ等対策特別措置法等改正案への賛成討論(予定稿).pdf

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