党ジェンダー平等推進本部(本部長・大河原雅子衆院議員)は9日、国会内で会議を開き、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連女性機関である「UN Women(国連女性機関)」日本事務所長の石川雅恵(いしかわ・かえ)さんに「コロナ下のあるべき女性保護·エンパワーメント策と世界の現状について」をテーマにお話いただきました。

 冒頭のあいさつで、本部長の大河原衆院議員は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会・森喜朗前会長による女性蔑視発言を受け、日本国内でもジェンダー問題への意識が高まっていることに、「世界的な波のなかでガラパゴス化している日本がどうやって追い付いていけるかという瀬戸際にある。この波をしっかりと受け止めて拡大をしていきたい」と発言。

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 これに続き、「いま、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの大きな波が世界中を渦巻いていると考える」とあいさつした石川さん。UN Womenの成り立ちや活動等を紹介し、UN Womenの取り組みについて、持続可能な開発目標(SDGs)のうち、目標5「ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女子のエンパワーメントを図る」と直結したものだと説明しました。一方で、この目標5はすべての目標に関わるものであり、「ジェンダー平等の達成なくして平和は訪れないし、きれいな水はもらえないし、素晴らしい都市計画はできないということ」だと話し、ジェンダー視点を持つことの意義を強調しました。

 その上で、新型コロナウイルス感染症により、世界的に貧困の拡大や経済損失、教育機会への影響が生じているなか、DV報告件数が増加傾向にあることや、ユニセフの報告書(3月8日に発表)によれば、各国の経済状況が悪化するなか、18歳未満で経済的、社会的要因などから結婚や結婚と同様の状態に置かれる「児童婚」を強いられる女の子の推計が、2020年からの10年間でこれまでの1億人から1億1千万人に増える可能性を指摘していること(インドやバングラデッシュ、ナイジェリアなどでその傾向が見られる)等、世界的にジェンダー平等が後退する局面にあると危機感を表明。

 また、コロナ禍で際立っているジェンダー不平等に基づく影響のなかでも特に、今回日本でも議論になった問題として、家事・育児・介護等の無償労働の不平等さを挙げ、日本ではOECD(経済協力開発機構)の2020年の調査によると女性は男性の5.5倍も無償労働に従事し(世界的には約3倍)、日本の男性は先進諸国のなかで最も無償労働時間が少なく、有償労働時間が最も長いと述べ、このことは日本のジェンダー平等、女性のリーダーシップにも関わる重要な問題だと指摘しました。

 石川さんは最後に、UN Womenからのお願いとして、「女性活躍・ジェンダー平等達成に向け、いま盛り上がっている火を、もっと燃やしていただきたい。そして、時々男と女の対決ストーリーになってしまうことがあるが、『対決ではなく対話』」「無償ケア労働の公平なシェア、あらゆる暴力・ハラスメントの予防、『女はこうあるべき』『男はこうあるべき』といった、ステレオタイプの打破などを最優先課題に」「国連女性機関は、加盟国、企業などのご支援によって支えられている。政治的・財政的なご支援を」と訴えるとともに、コロナ禍で経済対策に予算が充当されるなか、ジェンダー政策関連の予算が削られている現状についても警鐘を鳴らし、見直しを求めました。

 石川さんは、参加議員からの質問に答える形で、日本でジェンダー平等推進が進まないことについて「世界的な経済大国であるにもかかわらず、この状況でなぜ回っているのかと不思議だという声を聞く。女性が『しょうがない』と我慢を重ねてきた結果のように思う」と発言。「目標を掲げても達成できなかったら困る」と先送りしてしまうなど、日本人の国民性である堅実さ、謙虚さがマイナスに影響しているのではないかとの見方を示し、「実際、各企業でも大きなことを言ってできてないということはある。それでも、トップが揺るぎない信念を持って、最優先でやると公に言い、失敗しても傷つきながらでも前に進むことではないか。私は関西出身なので『ええかっこしいでいいから、ええかっこしようよ』と時々言いたくなる」と、政治や企業に積極的な取り組みを呼びかけました。