立憲民主党法務部門会議(打越さく良・部門長)と選択的夫婦別姓実現本部(辻元清美・本部長)は3月18日、国会内で合同ヒアリングを開催しました。この日のヒアリングでは、まず国連女性差別撤廃委員会委員・秋月弘子さんより、続いて全国女性税理士連盟の方々より、旧姓使用における課題をテーマにお話を伺いました。

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国連女性差別撤廃委員会委員・秋月弘子さん

 秋月さんは、2018年に国連女性差別撤廃委員会委員に立候補し、それまで実績を重ねてきた「秋月(旧姓)弘子」で選挙に見事当選。ところが、国連では「法的氏名」しか使えないと言われ、選挙に当選した名前で活動できないと問題だと思い、家族会議を開いて離婚を決意しました。「別姓を選べない⾃国の法律のせいで離婚することになり本当に悔しい」と外務省に訴えたところ、外務省から国連に交渉し、委員会の名札と名刺だけ「秋月」にすることを了承してもらって離婚は回避できました。それでもパスポート、航空券、ホテルの予約などをめぐり日々不便で不安な状態が続いていると語る秋月さんは、「旧姓使用を拡大すればいいという問題ではない」と強く訴えました。

20230514国際業務にあたる国連・省庁職員の旧姓使用の限界とトラブル事例.pdf

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全国女性税理士連盟会長の奥田よし子さん

 全国女性税理士連盟の奥田よし子会長は、「連盟としてずっと前から選択的夫婦別姓制度を要望してきた。今度こそは実現してほしい」と言葉を強めました。

全国女性税理士連盟 民法改正要望書.pdf
R6.10.26旧姓使用と婚姻時の姓に関するアンケート結果-2.pdf
旧姓使用と婚姻時の姓_各士業の課題.pdf

 同連盟の横山佳苗制度部部長は、旧姓の通称使用の課題について、具体例を語りました。

1)通称使用には法的根拠がなく、税理士などの国家資格の取得、税金や社会保険などの公的な手続きには、戸籍名が要求される。
2)納税者氏名は戸籍名となるため、旧姓は屋号として扱われる。インボイス制度において適格請求書番号の検索サイトを税理士登録名で公表するためには、納税者氏名を屋号に変更する手続きが必要。
3)成年後見制度において、登記事項証明書で戸籍名が求められるため、税理士名では成年後見活動ができない。
 ほかにも、社労士、税理士、公認会計士、弁護士などを対象に行った「旧姓使用と婚姻時の姓に関するアンケート」の結果紹介、別姓を選べないために事実婚を選択した方の話などを通じ、選択的夫婦別姓制度の実現が切望されている現状を訴えました。

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事実婚の立場から:毛利麻子さんのお話
(全国女性税理士連盟相談役)
 二人姉妹の妹に生まれ、小さい時から『毛利の名前を継ぐんだぞ』と言われ続けて育った。大学法学部で個人の尊厳や法の下の平等に目覚め、大学院法学研究科博士課程に進み、家族法を専攻する中で、家族生活における両性の本質的平等の視点から、女性ばかりが姓を変えることに疑問をいだくようになった。税理士法制定と同時期に祖父が創業した「毛利税理士事務所」を再興したくて、28歳で事務所を承継した。開業と同時に、女性の地位向上のために民法などの改正運動を行っていた女税連に共感し、入会した。平成3年に法制審が婚姻法の見直し審議を開始したため、選択的夫婦別姓制度導入の要望活動に取り組み始め、現在に至る。若い頃、姓を変えたくないという事情は、結婚の阻害要因になってきたと思う。現在、事実婚20年。妻としての法的地位はない。生来の氏を名乗り続けたいが、このままだと私の結婚生活は公的にはなかったことになってしまう。今後、医療上の限界や相続などの問題に直面することも予想される。一日も早く選択的夫婦別姓制度を導入していただきたい。

旧姓使用の立場から:伊藤佳江さんのお話
(全国女性税理士連盟 社会貢献特別委員会委員長)
 26歳で税理士登録し、即開業した。東京税理士会の役員も歴任し、副会長に選任されるまでになった。その年に結婚したが、そのときに夫が癌を患い、医療情報を開示してもらうために入籍し、自分が姓を変えた。旧姓を使用する際は、日本税理士会連合会から出してもらった旧姓使用承認通知書を必ず出す必要がある。原本が求められることも多い。1通取得するごとに1000円かかり、ボロボロになるまで何度も使っている。
 成年後見人は戸籍名でないとできない。結婚したとたんに、後見登記を全部変更し、後見人として預かっている預金通帳も全部変えなくてはならない。本人が使っている施設の書類も、全部戸籍名に変更した。
 また、遺言を執行する際なども、印鑑証明が旧姓併記であっても、ほかに旧姓使用承認通知書と戸籍謄本を提出する必要があり、戸籍謄本上の個人情報はすべて開示されてしまう。
 結婚をしても姓を変えなくていい人は、この煩雑な手続きが必要なく、普通に仕事ができている。早く選択的夫婦別姓制度を実現していただきたい。