党「つながる本部」(本部長・枝野幸男代表)は23日夕、オンラインで全国をつないで「夜間中学を理解する集い」を開催しました。
この集いは1月26日に実施した「第1回全国つながる本部長会議」において各都道府県連つながる本部長から示された「取り組み提案」のうち、石川県連つながる本部長を務める喜成清恵金沢市議からの提案に基づくもので、夜間中学を必要とするのはどんな方々なのかを理解し、各地域で夜間中学のニーズ調査協力及び設置の必要性を認識すべく開催されました。
冒頭のあいさつで福山哲郎・本部副本部長は、「この集いをきっかけに、ぜひ全国の仲間が理解を深めて夜間中学に関する運動がより大きなものとなればいい」と語りました。
逢坂誠二・本部事務総長は、「夜間中学というと過去のものと考える人が多いかもしれないが必要としている人は少なくない、夜間中学をはじめ、さまざまな形態で多くの人が教育を受けられる社会を作っていくことが重要であり、この集いが教育全体を考えるきっかけになればいい」との旨を語りました。
続いて、都内の中学の夜間学級を訪ねて教育現場の様子と生徒の皆さんの生の声を伝える、政府インターネットテレビの「いまからでも、まなぼう! 公立中学校の夜間学級」の動画と、夜間中学を取材したドキュメンタリー映画『こんばんはⅡ』の予告編を鑑賞。動画では、戦後の混乱期に昼間の学校に通えない生徒のために授業を夜間に行うことで十分な義務教育の機会を提供すべく始まった夜間中学が、現在では不登校などのために「学びなおし」を求める生徒や外国籍の生徒が多く学んでいる現状について、実際に夜間中学に通う方々のインタビューも交えて紹介されました。
鑑賞後、今回の集いを企画した喜成市議は、家事のため勉強についていけないまま中学を形式卒業した少年に何かできないかと考えているさなか、前川喜平氏の講演の中で夜間中学に興味を持ち、今年の2月に「石川自主夜間中学」を開校したと自らと夜間中学との関わりについて紹介。「各都道府県の未就学者数や不登校児童生徒数の推移などの資料も用いて全国に存在する夜間中学を必要とする人たちを無視する社会にしてはならない、今回の集いが夜間中学を知るきっかけになってほしい」と今回の集いの趣旨を説明しました。
続いて、元文部科学省事務次官で現代教育行政研究会代表の前川喜平さんによる講演が行われました。前川さんは、「戦後、昼間の中学に通えない子どもたちのために誕生した夜間中学が、現在では生徒の8割を外国籍の生徒が占める。今は1割にすぎない中学の形式卒業者も今後増加が予想されるので夜間中学の需要はますます高まるだろう。文部科学省は夜間中学に対して冷淡だったが、2014年に超党派の国会議員による『夜間中学等義務教育拡充議員連盟』が発足し、当時担当の初等中等局長であった私は文科省の政策を180度転換することができた。2016年に成立した『教育機会確保法』は義務教育における『学びの場』『年齢』『国籍』のしばりを広げようとする内容だ。小学校や中学校を卒業していない人、不登校で十分な学習をしないまま卒業した人など学びの場を必要としている人が全国にいるのは間違いない。教育は子どもたちの権利であり夜間中学は最後の砦だが、まだ全国に36校しかない。石川県だけでなく全国で夜間中学を設置する取り組みを進めてほしい」などと話しました。
講演を受けて水岡俊一参院議員は、「地元兵庫県で神戸と尼崎にはすでに夜間中学が存在しているが、夜間中学を必要とする人が全国に存在することを念頭にこれからも活動したい」と表明しました。
近藤昭一衆院議員は、「さまざまな学びの場が生まれているが国はどの程度まで認めるのか」と質問。前川さんは、「現在の日本の義務教育は厳格な仕組みだが学校以外の学びの場を認めることも重要で、不登校児が通うフリースクールなどへの支援も始まっており、最近ではオンラインによる学びの可能性もある」と述べました。
神津ゆかり松本市議からの「夜間」のイメージが強いので名称を検討すべきではとの質問に前川さんは、教育機会確保法では夜間でも中学でもある必要はない、「無償の普通教育を行う学校」を表すいい言葉は思い浮かばないが「夜間中学」という言葉にはこだわらなくてもいいと答えました。また、岡本あき子衆院議員からの夜間中学と生涯学習との違いに関する質問に前川さんは、自主夜間中学の取り組みは重要だが中学卒業の資格は得られない、中学卒業の資格を取りたい人のためには公立の夜間中学が作られるべきと答えました。さらには、松尾憲久御山町議から形式卒業者の数に驚いている、卒業後のフォローをしていなければ大きな社会問題だ、といった指摘も寄せられました。
閉会にあたり、原田謙介・岡山1区総支部長は、学びたい人が学べないのは大きな課題、何としても早く解決しなければならないと語りました。
田名部匡代・副本部長は締めのあいさつで、動画に登場した夜間中学に通う人たち一人ひとりが「学ぶ」以上に「生きる」喜び、「生きる」楽しさを感じる時間を持てているのはすばらしい、見えないニーズや本当に必要としている人たちに寄り添い、目を向けなければならないと述べました。
当日は党所属の国会議員や総支部長、地方議員の他、神本美恵子元参院議員らも参加し、宮沢由佳・本部事務局長が司会進行を務めました。