立憲民主党は10日、家庭医制度の整備の推進に関する法律案(日本版家庭医制度法案)を衆院に提出しました。提出者は、中島克仁新型コロナウイルス感染症ワクチン接種に関する課題検討プロジェクトチーム座長、長妻昭厚生労働部会長、西村智奈美社会保障調査会長、野田佳彦、阿部知子、小熊慎司、広田一、青柳楊一郎、重徳和彦、吉田統彦、篠原豪、源馬謙太郎各衆院議員です。
法案提出後、記者団の取材に応じた中島議員は、「今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大でわが国の医療提供体制の課題が浮き彫りになった。その1つが、いわゆる『かかりつけ医』の不在。感染初期段階から検査、また受診の目安、そしてワクチン接種に関して『困ったらかかりつけ医に』ということが行政からもたびたび言われているが、わが国には『かかりつけ医』が何者で、どのような機能を果たすか、その定義すらない状況で混乱が生じている。一方、平時においては、わが国の構造的課題である少子高齢化人口減少、人生100年時代、そして疾病構造が生活習慣病にシフトしている状況の中で、予防医療、プライマリ・ケアが重要という声が高まっている。今般、新型コロナで言えば、大阪での第2、第4、第5波に自宅で療養されている方々が軽症とは言え、40度の発熱や呼吸器の症状等がある中で医師に診察どころか相談もできない、薬も出されていない。こうした状況が2度と繰り返されないためにも『かかりつけ医』をプライマリ・ケア機能を発揮する、つまり家庭医と明確に定義する。その制度を整備する今後の進め方について、基本理念と内容を示したのがこの法案だ」と説明しました。また「国民皆保険制度が成立して半世紀以上たち、わが国の社会保障は問題を抱えているが、ぜひこの法案で立て直したい」と意気込みを語りました。
中島議員はさらに、「プライマリ・ケアは海外では当たり前の言葉だが、日本語ではワンフレーズにはなりにくい。そのこと自体がわが国にプライマリ・ケアが抜き落ちているという証拠。者さんが元気だったら、あるいは患者さんが重度化しなかったら、医師または医療機関が評価されるという、今とは真逆のシステムとなる。今回のコロナ禍で、わが国は先進医療国家、あるいは国民皆保険、一方で感染者数は欧米各国に比べると非常に少ないにもかかわらず、なぜ医療ひっ迫を起こしているのか、多くの国民が疑問に思っている。プライマリ・ケアを基盤とする医療体制をつくることは国民皆保険成立以来の医療の本質的な考え方を大きく転換していく大改革にも資する。1980年代に家庭医の議論があり、とん挫した経緯がある。今こういう時代を迎えて、家庭医を制度化していくという必要性が社会の求めであると思うし、それに応えるのが政治の責任。今の与党にはやりきれない。われわれが将来の医療のグランドデザインを示していくものとして、次の総選挙でも明確に対比していきたい」と語りました。
阿部議員は「この法案は日本の医療を本当に国民のものにするためのもの。折しも新型コロナウイルスの感染で、国民皆保険なのに、なぜ家庭に放置されて亡くなっていくのか。ICUも足りない、感染症病床も足りない。日本の築いてきた国民皆保険下の医療制度とは何だったのだろうか、こんなに簡単に壊れていいのだろうか、と皆さん思っておられると思う。そうであれば、これを再建していくために、今どこに手を入れていくべきか。ずっと専門分科で分かれ、専門病院に分かれてきたけれど、気が付けば一番大事な、一番身近で、日々健康を守って、暮らしを守るという機能をもった、昔はあった『かかりつけ医』、あるいは『家庭医』──家庭を丸ごときちんと包摂して守っていこうという機能──がなくなっているのではないか。一番必要とされている部分に効く法案、いい法案だと思う」と話しました。
吉田議員は「家庭医制度があって、地域の皆さんが登録していた場合は、パンデミックに対するさまざまな統計も非常に取りやすくなる。この法案で提案するかかりつけ医制度がしっかり機能していれば、コロナ対策がもっと楽に、明確な形で対応できていた。とくに統計をとる上で相当有用だったと考える。しっかりしたものを作っていくというのが大事な観点だと思う」と述べました。
青柳議員は「この法案は政策勉強会でこの4年間、ずっと温めてきて、関係者からヒアリングし、視察に行き、つくってきたもの。9日に日本版EUA整備法案を提出したが、今日の法案は療養と医療の接続をよくし、予防と医療の壁、そして医療と介護の壁をなくしていくもの。この緊急なコロナ禍でも使える法案だが、将来は疾病構造の変化に対応するため、予防・医療・介護の壁をなくしていく法案だ」と話しました。
重徳議員は「法案の肝となるのは医療の民主化という言葉に表れているように、ともすると医療業界中心の制度となりがちな医療制度を患者、予防期を入れてすべての国民を中心としたものにする。自分の疾病、持病はもとより、仕事でストレスがたまっている、家族関係がどうだということまで理解してくれている家庭医を誰もが持つ仕組みをつくろうとするもの。長く続いてきた自民党政権にはけっして実現することのできない、まさに今、与党をめざす政党が掲げるべき制度がこの法案に盛り込まれている」と語りました。
篠原議員は「足かけ2年くらいにわたり検討し、医療の先進事例も見て法案提出に至っている。予防医療が大事であり、予防管理における保険給付を検討していくことが入っている。会社を退職すると検診受診率はどんどん下がっていって、70歳、80歳になると7割、、6割まで減り5割台くらいという実態がある。そうしたことを含めて、地域ではかかりつけ医に住民の健康を守ってもらおうということを考えている」と話しました。
源馬議員は「この法案はコロナ禍で時宜にかなったものになったが、コロナ禍でがなくても日本の医療体制を良く変える法案だ。予防すれば予防するほど、医師も得するし、一般市民も喜ぶというウィン・ウィンの、治療ではなく予防を中心とした医療体制がこの制度でできていく。このことを地元で説明をすると非常によく分かっていただきやすいので、コロナが収束した後も、日本の医療を変えていく意味でも大事な法案だ」と語りました。
210610 家庭医制度の整備に関する法律案の立法事実について.pdf
【概要】家庭医制度の整備の推進に関する法律案について(1枚紙).pdf
【法案】家庭医制度の整備の推進に関する法律案.pdf