枝野幸男代表は15日、日本で初めてとなる常設の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京レガシー」(東京・新宿区)を視察しました。視察には、福山哲郎幹事長、SOGIに関するプロジェクトチーム座長を務めている西村智奈美衆院議員が参加しました。
「プライドハウス東京」は、セクターを超えた団体・個人・企業が連帯し、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるタイミングを契機と捉え、LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティに関する情報発信をおこなう、ホスピタリティ施設を設置し、多様性に関するさまざまなイベントやコンテンツの提供を目指すプロジェクト。今回枝野代表らが視察した「プライドハウス東京レガシー」は「プライドハウス東京」コンソーシアムが、国際カミングアウトデー( National Coming Out Day )である2020年10月11日にオープンしました。35の団体・専門家、15の企業、20の駐日各国大使館と1つの連合代表部(EU)、アスリートやスポーツ関係者などがセクターを超えて連携し、LGBTQに関する情報発信をおこない、安心・安全な居場所を提供することを目的に立ち上げる施設です。オフライン・オンラインのイベント企画を実施する多目的スペース、相談支援をおこなう個別スペース、日本の「LGBTQコミュニティ・アーカイブ」を収めるライブラリー等を有しています。(プライドハウス東京レガシー資料より)
「プライドハウス東京」コンソーシアム代表の松中権(認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表)さんから施設の説明を聞いたのち、意見交換をおこないました。立憲民主党は東京オリンピック・パラリンピック大会までに「LGBT差別解消法案・理解増進法案」の成立を目指していましたが、自民党内の議論がまとまらず提出にすら至りませんでした。枝野代表が13日に衆院選挙に向けて発表した「 #政権取ってこれをやる 」第2弾では「LGBT平等法の制定/同性婚を可能とする法制度の実現を目指す」と表明しており、これをニュースで見たという松中さんは「嬉しかった」と感想を述べました。
「プライドハウス東京レガシー」について松中さんは「毎日いらっしゃる人もいる」と説明。枝野代表が「カミングアウトを気にしないで、コミュニケーションができる場ということで、ここがものすごく大事ということか」と尋ねると、松中さんは「おっしゃるとおりで、ここでは『あなたはなんですか』と聞くことはない。そのままで本を読んでいていいし、もしちょっと話をしたいことがあればスタッフがお話をする。一番心地よいスタイルがある」と述べました。一方で、命の危険もあり、身近に自殺が起きることも多いと説明しました。企業や学校がLGBTQへの理解を促す「風土」は醸成されてきているが、「制度」がまだまだ不十分だと松中さんは指摘しました。
超党派で提出予定だった「LGBT差別解消法案・理解増進法案」が提出に至らなかったことについて福山幹事長は、「自民党には残念ながら、岩盤のようにどうしても『だめだ』と言う人が少なからずいらっしゃる」と述べ、議連で窓口をしていた西村議員は「今回はっきりわかりました。自民党政権ではできないと」と強調しました。さらに西村議員は、「私たちの案は相当飲み込み、自民党案をベースに法案の修正を行わざるを得なかったが、それでも根拠法があった方が良い、担当大臣がいた方が良い等と法制定を求める当事者団体の皆さんからの強い声をいただいた」と感謝しつつ、超党派議連でまとまった合意案を自民党の反対で提出できなかった顛末を語りました。松中さんは「党派関係なく、みんなで作ってほしい。作らなければいけない」と強く主張しました。
また、松中さんはOECD諸国で比べるとLGBTQに関する法整備状況が日本は35カ国中34位であることに触れました。LGBTQの法整備の柱として、(1)同性愛が犯罪になってしまうか(2)LGBTQを差別しない法律(3)同性同士の婚姻規定(4)トランスジェンダーの法律――があることを説明。「同性愛が犯罪になってしまうか。それは日本はない。差別を無くす法律はなく、同性の婚姻規定もなく、トランスジェンダーはあるけど要件が厳しい。これが日本の置かれている事実で、オリンピック・パラリンピックで34の海外メディアの取材があったが、みんなびっくりしていて、『日本って、そういう国だったんですか』という感じ。驚いて帰られる。世の中に出ている情報と本来の情報にギャップがある」と指摘し、「法整備のところは本当に最後のセーフティネットだ」と日本におけるLGBTQに関する法整備を求めました。
松中さんは、LGBTQユースに対する独自の調査で「73.1%が家族など同居人との生活に困難がある」というデータがあることを紹介しました。家にいることが困難であるにも関わらずコロナ禍で「おうちの中は安心できないし、本来外に居場所があったのだがコロナで途絶えた。居場所がなくなる危険な状況だ。こうした場所が東京にしかないのは本当に大丈夫かと思う」と指摘しました。福山幹事長は、「『自殺総合対策大綱』も初めて民主党政権でLGBTQの方の自殺率が高いと言及した。例えば、自分が一緒に暮らしているパートナーが入院した際に手術同意のサインができないとか、マンションを借りられないとか、生活の不自由さをとにかく取り除くことが大事だ。政治の役割は大きい」と答えました。枝野代表も「政治が決断できるかどうかが大きいのでわれわれもとにかくできることをどんどんやって、皆さんのこれまでの積み重ねが『オリンピックを契機に飛躍したよね』と言っていただけるように何とかしたい」と力を込めました。
視察と意見交換終了後に枝野代表は記者団からの取材に応じました。
枝野代表は、「LGBT差別解消法案・理解増進法案」が提出に至らなかったことについて、「当事者の皆さんの生命の問題でもありますし、また率直に申し上げて国際社会の中で恥ずかしい状況だ」と述べました。また視察したことを受けて、「このプライドハウス東京は大きな意義を持つ役割を果たしていると受けとめさせていただきました。オリンピック・パラリンピックが契機となってできた場所でありますので、今後とも、企業の皆さんにもご理解いただきたい。こうした場が恒常的にあるのは今、東京だけであり、特に若い皆さんを支えるためには全国各地に必要だということを痛感しました。こうしたこともあわせて進めていかなければならないと改めて決意をしています」と感想を述べました。
そして、セクシュアルマイノリティーの方への差別を解消する政策を推進していくために、「兼任の大臣を決めることは総理大臣の判断でできる」と語り、政権を取ったらすぐにやる約束として、担当大臣を置く考えを示しました。
また、15日で結党から1年が経ったことを受け、政権の選択肢になれたと考えているか質問を受けました。
枝野代表は、「おそらく衆院選挙としては2009年以来、12年ぶりに最大野党が200人を超える。そして総定数の過半数を超える候補者を擁立して、そして多くの選挙区で自公との一騎打ちの構造で政権を競い合う政権の選択肢になるという合流の一つの目標を1年で到達できたと思っている」と述べました。また、「コロナ対策の決定的な判断ミスや遅れなどをはじめとして、さまざまな安倍・菅政権の問題点を、国民の皆さんにしっかりとお伝えをしながら問いただしていくことができた。一つひとつの政策をしっかりと飲ませて実現させることが、われわれとして実現したかったことではありますが、それを受け入れなかった菅政権は、結局事実上の退任に追い込むことができた。政権の選択肢になることができたと思っている」と振り返りました。