参院本会議は10日、岸田総理の所信表明に対する代表質問を行い、青木愛議員が登壇しました。青木議員は、「国の政治が果たす役割は、国民の命と健康、仕事と暮らしを守ること。そのために国民が直面している課題を先送りすることなく、その解決に全力を傾け、国民が政治に信頼を寄せながら、安心と希望を持てる社会を築くことだ」と力強く訴えました。
参議院代表質問要旨20211210(青木愛議員).pdf
■岸田総理の発言の変化
青木議員は、岸田総理が自民党総裁選に立候補の意思表明をされて以降、発言した言葉やスローガンが「いつの間にか変わっている」と指摘。(1)森友・加計・桜を見る会の再調査は消え、(2)「分配なくして成長なし」は「成長と分配の好循環」に変わり、(3)令和版「所得倍増計画」も金融所得課税もあっという間に消え、(4)「新自由主義からの転換」を唱えながら、新自由主義を推し進める竹中平蔵氏を首相直属委員会のメンバーに任命している――こと等を例に示しました。
総理の発言が二転三転しまうと「国民に混乱をもたらす」と述べ、総理発言が変化していることの見解を求めました。岸田総理は「私の思いや目指すべき経済社会像の姿、これは何ら変わりがないと思っている」「森友学園をはじめとする問題につきましては、今後も政治の立場から必要に応じてしっかり説明をしていきたい」などと答弁しました。
■子ども支援のあり方
政府が打ち出した子育て世帯に対する10万円の給付について、岸田総理がどのように位置づけているか質問しました。また、青木議員は「制度を改正し、全ての子どもたちが継続的な支援を受けられるようにすべき」と提案しました。岸田総理は、「所得制限を設けた場合でも、給付を行う必要性の高い子育て世帯に対して幅広く支援を行うことができる」「こうした取り組みを通じて、子ども・子育て支援を推進し、少子化克服と子どもを産み育てやすい社会の実現を目指したい」と答えました。
■医療崩壊の原因である保健所の削減について方針の間違いを認めるか
青木議員は、第5波の時に感染者が入院することができずに亡くなった状況について「医療崩壊だ」と指摘。根本的な原因が公立・公的医療機関の再編・統合や、公衆衛生を担う保健所を削減し続け、地域医療を破壊させ、公衆衛生体制の弱体化を招いたと指摘し、方針転換を岸田総理に迫りました。岸田総理は、「公的病院の在り方については病床の削減等、廃業ありきではなく、地域の事情を十分に踏まえつつ、地方自治体等と連携して、検討を進める」と答弁。保健所については「住民に身近な保健サービスの市町村への移譲や保健所の機能強化を図るため、設備の拡充を図りつつ、集約化が進んだものと認識している」と述べました。
■被災時の船舶の積極的活用
青木議員は、日本が島国であることから被災時には、「船舶による海路をもっと活用すべきだ」と提案しました。船舶を活用することで救援物資の輸送や人の移動、医療の提供やホテルシップも可能であると岸田総理に提案し見解を求めました。岸田総理は、災害時において、支援物資や災害派遣単位の人員車両の輸送、被災者の入浴・休憩等に船舶を活用していると説明。災害時の船舶を活用した医療提供が可能になるよう「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備推進に関する法律の施行に向け、政府一体となって準備に取り組んでいく」と答弁しました。
■住宅の省エネ向上について
青木議員は、カーボンニュートラルに向けて「創エネと省エネがカギ」と述べ、国が進めている再生可能エネルギーを導入することで年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指したネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH = ゼッチ)目標の引き上げと支援、省エネ性能の高い木製サッシと複層ガラスの普及促進について岸田総理にただしました。岸田総理は「第6次エネルギー基本計画で2030年度以降に新築される住宅について、ZEHとして規定される水準の省エネ性能確保や戸建て住宅の6割に太陽光発電の設置を掲げており、その推進に努めていく」と答えました。
■エッセンシャルワーカーへの認識
青木議員は、維持するために働いてきた医療従事者、救急救命士、保育士や看護師などのエッセンシャルワーカーの重要性を改めて認識し、「待遇改善や人員確保に向け抜本的な対策を講じるべき」と求めました。岸田総理は「新しい資本主義を起動するための分配戦略の柱の一つとして、まずは国が率先して介護保育の現場で働く方や地域でコロナ医療対応を行う医療機関で勤務する看護職の方々の給与の引き上げを行っていく」と述べました。
■国連の特別報告者(国内避難民の権利担当)ダマリー氏の訪日要請を受け入れるか
青木議員は、東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故から10年が経過したが、避難者の数はいまだ正確に調査されておらず、3万9千人を超える人々が人権を侵害された状態にあると指摘。「国内避難民に関する指導原則」では住まいの移動を余儀なくされた人の人権を保障することが国の義務であると定めていますが、国連特別報告者であるセシリア・ヒメネス・ダマリー氏が日本における「国内避難民」の人権状況を調査するため、政府に訪日調査の要請を行っても政府から何の回答もない状況であることから、岸田総理に誠意ある答弁を求めました。岸田総理は、「特別報告者の訪日受け入れについては、新型コロナウイルス感染症の流行状況も見つつ、関係省庁において検討を行っているところであると報告を受けている」と答弁しました。
■大学ファンドの運用利率、研究開発費、基礎研究について
青木議員は、近年、日本における優秀な学術論文の数が減少しており、危機感を抱いた政府が10兆円規模の大学ファンドの創設を決めたことについて質問。岸田総理は、(1)基金の運用利率は実質3%程度の運用(2)米国や中国が国策として科学技術関係予算を増やす中、相対的にわが国の研究力のプレゼンスは低下してきている(3)世界と伍する研究の持続的成長を目指しており、長期的視野で基礎研究でも支援が十分行き届くように考えている――等と説明しました。
また、青木議員は、最も重視すべき研究テーマとして「バイオミメティクス」(生物模倣技術)をあげました。岸田総理は、「科学技術立国の実現は、岸田政権の成長戦略の重要な柱」と述べ、バイオミメティクスに関しても「重点領域の一つと位置付けており、引き続きしっかりと研究開発に取り組む」と答弁しました。