予算編成過程におけるEBPM※(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)の必要性を提起した東京大学大学院経済学研究科教授の川口大司公述人。意見陳述のなかでコロナ禍での起業支援について、売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資するゼロゼロ融資や、飲食店など事業者が実施する感染症予防対策への取り組みを認証する「やまなしグリーン・ゾーン認証制度」を評価しました。
これを受けて近藤議員は、「EBPMの予算を作っている国があるのか」「スピード感が求められるワクチン接種で(EBPMを)実行することができるのか」と尋ねました。
川口公述人は、「評価のための予算をどれだけ入れているかを具体的に知っているわけではない」と前置きした上で、米国では公共職業訓練を行うにあたり予めランダム化してトレーニングがその後の再就職の確率をどれだけ上げたのか、再就職後の所得をどれだけ上げたのかなどを評価することが求められていると紹介。「プロトコール(世界標準公式マナー)が決まっていて、プロトコールに従って評価をして、それを次の予算につなげていくことが行政プロセスの中に組み込まれていると聞いている」と述べました。
ワクチン接種については、「ワクチン接種記録システム(VRS)のデータベースを見ると都道府県別、日別の接種者数、接種の対象となっている年齢別の接種者数もすべて分かる。新規感染者数あるいは経済活動の指標と相関させることで、ワクチン接種が経済活動や新規感染の抑制にどのような効果を与えているかということは、スキルのある先生がやればすぐにできる」と述べました。
近藤議員は次にマーケットについて取り上げ、ゼロゼロ融資は、厳しい企業はもとより地域の金融機関にもありがたかったと評価する一方で、1年数カ月後には利子を払い、3年数カ月後には元金部分を返さないといけないなかで、地域の企業がどんどんなくなっていると指摘。「傷口を浅くしたゆえに未来に送り込んでいるという見方もできる。今年最大のリスク要因は何だと考えるか」と質問しました。
名古屋商科大学教授でマネックス証券株式会社専門役員の大槻奈那公述人は、質問の趣旨に沿った答えとして、「地域の活性化がどこまでいけるかということ。ゼロゼロ融資は、銀行としてはリスクを負っていない分、(プロパーの融資などに比べて)労力のかけ方が違ってしまうかもしれない。そうではなく、そこに対してどこまで金融機関、特に地方の金融機関が積極的にハンズオンで再生、業態転換をお勧めするような形で手助けをしていけるのか。そこの見極めが必要であり、それができないことが一番のリスクだ」と発言。小黒公述人は、「アメリカの金利が上昇したときに日本とのギャップが拡大していく。それが日本にどう波及するか。地方銀行に影響を与えることもあると思う。踏み込んで考えていくことが重要」と述べました。
※ 政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること。
また、近藤議員が国債残高が減らないなかで「ポスト黒田に期待することは」と尋ねると、小黒公述人は「日銀に滞留している国債をどうするのか。それを内々議論していくこと、それができる総裁が一番重要ではないか」と、大槻公述人は「市場は何も動きがないことへの期待感だと思うが、中長期的に続くとは考えづらいなかでどのように前倒しをしながら市場に過度な影響を与えない形で正常化を図っていくのか、コミュニケーション能力に期待する」などとそれぞれ答えました。