まん延防止等重点措置の全面解除について
立憲民主党政務調査会長 小川淳也
新型コロナウイルス対策本部長 長妻 昭
政府は16日、関係閣僚会議を開催し、まん延防止等重点措置を適用している18都道府県全てについて、期限の21日で解除することを決定し、岸田首相が会見で発表した。結論から言えば、全面解除は時期尚早であると言わざるを得ない。
該当地域だけではなく全国すべての地域で、まん延防止等重点措置により影響を受ける事業者と生活困窮者に対して十分な支援を行うことにより、感染を抑え込み、リバウンドを防ぐべきである。立憲民主党は、経済支援を充実させるための事業復活支援金・給付額倍増法案、観光産業事業継続支援金支給法案、コロナ困窮労働者給付金法案などの具体的提案を行ってきたが、与党は頑なに審議を拒んでいる。
重点措置の解除を判断する際には、これまでは、新規感染者数が減少傾向にあることと、病床使用率や重症病床使用率が50%を下回るなど医療の負荷が低減されていることの二つの基準を満たすことを重視してきた。しかし政府は11日、社会経済への負荷が大きいことを理由に、新規感染者数が微増または高止まりしていても、病床使用率が低下する見通しがあれば解除できるとしたほか、病床使用率や重症病床使用率が50%超でも、新規感染者数が減少傾向にあれば解除できるとして、新規感染者数か病床使用率のいずれかが低下すれば解除できる新たな基準を示していた。
合理的な基準に基づいて、その基準が達成できる見込みがついたので解除するというのであれば理解できるが、今回は行動制限による感染対策より社会経済活動の回復を優先させるため、全面解除ありきの後付け的な基準変更によるものである。今回解除された18都道府県と、すでに解除された18県で、同じオミクロン株でも解除基準が異なっているのも矛盾である。
亡くなる方も高止まりして、ピークアウトはしていない。病床使用率や重症病床の使用率の低下が見込めるというが、大都市を中心に入院ベッド(病床)の使用率も高い水準にあり、入院できない自宅療養者、宿泊療養者は増加している。救急患者の搬送先が見つからない「救急搬送困難事案」の件数も高止まりしている。
この時点での全面解除は、心理的には、「安全宣言」のメッセージを出すことになる。新年度を控え、歓送迎会や卒業・入学、退職・就職・異動、花見など人の移動・交流が盛んになる機会が増える時期に、これまでの反動が起き、リバウンドが懸念される。昨年も、3月21日に第2回緊急事態宣言を解除したものの、年度が変わり感染が広がりだし、ゴールデンウィーク前に第4波に見舞われ、4月25日に3回目の緊急事態宣言を発出した経験を踏まえるべきである。Go To事業も再開の方向であるが、無理矢理な政策的介入で、かえって「感染拡大防止と経済の両輪」が毀損されかねないことを懸念する。
さらに、オミクロン株にくらべ感染力の強い派生型のBA.2の市中感染が確認されており、今後の重症者数の急増が想定される。GWまでにある程度感染者数を減らしておかなければ、第6波を超える新たな感染の波への対応が難しくなる。
一方、まん延等防止重点措置は、飲食店の営業時間短縮や酒類提供の制限などが要請の中心となっているが、オミクロン株によって、感染の場が高齢者施設や学校などが主になっている状況が生じており、状況の変化に応じた対策の修正は必要である。重点措置を解除するのであれば、第6波の感染の中心である高齢者や子どもへの対策を強化するとともに、重点措置以外の対策がなければ、人の動く年度末・年度初めへの懸念が払拭されない。
いずれにせよ、医療機関の受け入れ体制を万全にするほか、介護・福祉施設への支援を強化するとともに、3回目のワクチン接種、治療薬の承認や検査の拡大を急ぎ、再拡大があっても重症化するリスクを下げておく必要がある。引き続き警戒を緩めず、感染のリバウンドに注意を払い、先手先手の対応を求める。