衆院本会議で3月17日、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(略称:経済安全保障推進法案)」の趣旨説明と質疑が行われ、篠原豪議員が、(1)曖昧な経済安全保障概念の問題(2)サプライチェーンの強靭化(3)基幹インフラの安全性・信頼性確保(4)官民協力による先端的重要技術の育成・支援 (5) 特許の非公開制度――について取り上げ、岸田総理の見解をただしました。本法案は、「サプライチェーン(供給網)強化」「先端技術の官民協力」「基幹インフラの事前審査」「軍事転用可能な機微技術の特許非公開」の4分野で構成されるものです。

 篠原議員は、「本法案のとりまとめ責任者だった藤井前経済安保法制準備室長の、不適切な行為により歪められたのではないか」と迫るとともに、総理の任命責任についてただしました。岸田総理は、「特定個人の一存で法案の内容が歪められる余地は構造上ない。藤井氏の法案に関する情報の流出を含め、法案に対する不当な関与は確認されていない」と強弁。自身の任命責任については、「藤井氏の監督責任者であった国家安全保障局長に厳重注意を行った」と述べるのみでした。

(1)曖昧な経済安全保障概念の問題 

 篠原議員は、経済と安全保障を切り離して考えることはもはや不可能との認識を示す一方、安全保障を名目とした規制は、例え意図していなかったとしても、「自由で開かれた経済」あるいは「民間主体による自由な経済活動」にダメージを与える危険性があると指摘。経済と安全保障がバランスのとれたものになっているかが問題であり、「経済安全保障」の定義がないのは法案の欠陥だと懸念を示しました。

(2)サプライチェーンの強靭化

 篠原議員は、自律性を確保するために指定される「特定重要物資」の定義(第7条)があまりにも広いと指摘。民間企業にそのような負担を求めことができるのかと疑問を呈しました。

 岸田総理は「特定重要物資」について、「物資の重要性、海外への依存度、供給途絶時に国家および国民の安全を損なうか等、要件によって真に必要な物資に絞り込むこととしている。今後、具体的な考え方を基本指針にて示し、予見性の確保を図ることとしている」などと抽象的な答弁にとどまりました。

(3)官民協力による先端的重要技術の育成・支援

 既存の振興策に従って進行中のプロジェクトが「特定重要技術」に指定された場合、これまで参加してきた海外からの企業や研究者の扱いはどうなるかとの質問に岸田総理は、「所管大臣が必要と認める研究者等を、本人の同意を得て構成員としている。外国人であることをもって参画を拒否することはない」などと答えました。

(4)特許の非公開制度

 公になればわが国家・国民の安全を損なう事態を生ずる恐れが大きい発明、「機微技術」であるか否かの判断基準では、どういうものが蓋然性が高いかを予見可能な形で具体的に示すことが重要だと指摘。こうした制度の根幹に関わる事柄が政令に委ねられていることを問題視しました。

 篠原議員は最後に、「本法案は、『経済安全保障』という新しい用語で、世界経済が直面する新たなリスクに対処する必要性を示しながら、想定しているリスクについてほとんど語らず、行政が持つことになる新たな権限を示すだけで、問題点を具体的に指摘することもできない」とあらためて指摘。「野党の追及を逃れるために、政府がこのような形の法案を国会に出したのであれば、議会制民主主義を貶める危険性をはらみ、極めて深刻な事態だ」と訴え、質問を終えました。

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