衆院本会議で12月12日、「令和6年度補正予算案」の採決が行われ、可決しました。採決に先立ち、立憲民主党・無所属の川内博史議員は、「立憲民主党の修正案が一部反映され、能登の被災者・被災地のために予算を積み上げることはできましたが、『積み過ぎ』であるいくつもの基金の減額についてはゼロ回答であることに加え、さまざまな課題を抱えていることから、反対の立場で討論します」と述べ、反対討論を行いました。討論原稿案は以下の通りです。

令和6年度補正予算案に対する反対討論
立憲民主党・無所属
川内博史


 立憲民主党・無所属の川内博史です。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました令和6年度補正予算について、立憲民主党の修正案が一部反映され、能登の被災者・被災地のために予算を積み上げることはできましたが、「積み過ぎ」であるいくつもの基金の減額についてはゼロ回答であることに加え、様々な課題を抱えていることから、反対の立場で討論いたします。

 本補正予算の規模は、一般会計歳出で約13.9兆円、これは昨年の13.2兆円を上回る水準となっています。従来政府が経済対策の規模の根拠としてきたGDPギャップは、直近で-0.5%、額にして約3兆円程度であり、過大な規模の財政出動と言わざるを得ません。
 財政法第29条は「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」を行う場合などに限り、内閣に補正予算の編成・提出を認めています。しかし、これは今回に限ったことではありませんが、基金の「積み過ぎ」をはじめ、補正予算で対応する必要のない、緊要性のない支出も多数見受けられます。原資は、政府のポケットマネーではなく、国民の税金です。バラマキは厳に慎み、真に必要な経済対策に支出を限定すべきです。

 後ほど具体的に指摘いたしますが、政府提出の補正予算には数多くの問題が存在しています。立憲民主党は、現実的・合理的な修正を図る観点から、(1)令和6年度当初予算で計上された一般会計予備費の残高のうち1000億円について、能登地域の復旧・復興に要する経費に使用すること、(2)緊要性の観点から「積み過ぎ」と考えられる基金への支出、計約1兆3600億円を減額すること――とする修正案を提出し、本日の予算委員会で趣旨説明及び集中審議が行われました。そして我が党の修正案のうち、(1)について与党にもご理解をいただき、一般会計予備費1000億円が能登地域の復旧・復興に関する支出に充てられるよう予算総則に追加されることになりました。

 国会で予算案が修正されたのは戦後5例目、補正予算では戦後初で、直近では1996年の「住専国会」で修正が行われて以降、28年ぶりの予算案の修正です。これは先の総選挙で与野党が逆転した結果の好事例でありますし、与党側のご努力を評価し、委員会の議論を公平、中立、公正の立場でまとめていただいた安住委員長に敬意を表します。

 本日の予算委員会で、我が会派の同僚議員が、この修正案が可決成立した場合には、能登半島復興支援の拡充をこの補正予算で速やかに取り組むことでよいか問いただしたのに対し、石破総理は「被災地のニーズを踏まえ、切れ目のない支援を行なうことだと、私自身考えておるところ」「国会のご判断というものは、私ども謙虚に、そして重視をしていくというのは当然のこと」と答弁されました。総理には我々の提案に沿って取り組んでいただきたいと思います。
 予算委員会で政府案とともに野党提出の修正案が並行審議され、それが反映されて修正議決したことは、与党の事前審査制にかわり「万機公論に決すべし」という、「熟議と公開」というあるべき国会への第一歩、国民の税金の使い方を議論する場が大きく変わった歴史的瞬間であります。
 これが令和の国会、与党の先生方にもこれに慣れていただけなければならないのであります。
 それでは、政府提出の令和6年度補正予算の問題点について指摘いたします。

 まず基金への支出です。立憲民主党は、宇宙の研究開発や利用促進は推進していく立場ですが、当初予算で宇宙戦略基金に100億円計上し、補正予算で30倍の3000億円も積み増しするのはエビデンスに乏しく、財政法で定める緊要性の要件を満たしていないと考えます。宇宙に緊要性という星はあるのでしょうか、減額すべきです。

 次に、政府は、物価高対策として、住民税非課税世帯に対する3万円の給付を打ち出しました。政府は経済対策として、これまでも同様の給付を繰り返してきましたが、住民税非課税世帯に対象を限定すると、いわゆる「ワーキングプア層」など、働いて住民税を納めていながらも生活が厳しいという層には、全く支援が行き届きません。一方で、多額の金融資産があり、日々の生活に不自由していない方でも、所得が一定額以下であれば、給付金を受け取ることができます。これは不公平ではないでしょうか。いつまでもこの給付方法で良しとはならないでしょう。先の本会議において、石破総理にこの点を質しましたが、納得のいくご答弁はいただけませんでした。真に支援を必要としている層に、的確に給付を実施できる仕組みを早急に構築すべきです。

 電気・ガス補助金の再開とガソリン補助金の延長も盛り込まれました。電気・ガス補助金は、本年10月の使用分までで一旦終了しており、今後寒さが厳しさを増す寒冷地の世帯への配慮を欠くなど、政策目的に一貫性がありません。これらの補助金は、対象が限定されていないために、支出額の多い高所得者ほど負担軽減額が大きくなるという問題と、元売り事業者等を通じた支援であるため、家計がその効果を実感しづらいという難点もあります。
 したがって、我々が主張するように、中低所得者層・中小企業を対象に、直接的・集中的な給付を実施することを基本とすべきです。また、エネルギー価格が高騰する度にこのような補助金を繰り返していては、財政が逼迫してしまいます。実際にこれらの補助金の予算の累計額は、今回の補正も含めると12兆円超と、巨額に上っています。いつまでもこのような対症療法を繰り返すのではなく、より根本的な対策として、再エネ・省エネへの大胆投資を実行することで、エネルギー価格の高騰に強い経済・社会構造を作り上げるべきです。
 値上がりする学校給食費について、政府は「重点支援地方交付金」による支援を掲げていますが、既に約3割の自治体が独自財源で無償化を実施しており、未実施の自治体からは、国の責任で全国一律に無償化することを求める声が強まっています。居住する自治体によって子どもの育ちを巡る環境に差がある現状は好ましくなく、どこに居住していようとも、子どもが健やかに成長できる社会を目指すべきです。こども真ん中社会というのであれば学校給食費の無償化に向けた手立てを速やかに講じることを強く求めたいと思います。

 また、いわゆる「年収の壁」問題について、年収130万円を超えた途端に約30万円の減収が生じてしまう社会保険の「130万円の壁」については、従来の「年収の壁・支援強化パッケージ」の実行などが掲げられるに留まっています。我々が提案している、収入の減少を補填する「就労促進支援給付」の方が、より効果的であると確信をしています。われわれはこの「就労促進支援給付」について、既に議員立法を提出し、委員会審議においても具体的に提案しています。石破総理にもぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 以上、指摘した理由から、令和6年度補正予算については反対をするものであります。

 今後も、国民の負託に応えるため、政権を担い得る責任政党として、政府の問題点をただしながら、より良い政策の実現に全力を注いでいくことをお誓い申し上げ、私の反対討論とさせていただきます。ありがとうございました。

20241212【衆院本会議】令和6年度補正予算に対する反対討論 川内博史議員.pdf

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