衆院本会議で11月1日、政府提出の「民法等の一部を修正する法律案」について趣旨説明・質疑が行われ、立憲民主党・無所属会派を代表して米山隆一議員が登壇しました。

 本改正案は、民法の嫡出推定制度を見直すことや親権者の懲戒権に関する規定を削除することなどを内容とするものです。離婚後300日以内に生まれた子は「前の夫の子」とみなされるため女性が出生届を出さず、子どもが無戸籍になるケースが問題となっていましたが、離婚後300日以内でも母親が他の男性と結婚した後に生まれた子の場合は「再婚後の夫の子」と推定する例外規定を設け、それに伴い女性だけに定められた100日間の再婚禁止期間は廃止されます。

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 米山議員はまず、本改正案について「改正に長い期間を要した事情はさておくとして、まずは大筋において、民法典における家族法の根幹部分を、時代に合わせたものと評価する」とした上で、(1)女性の再婚禁止期間を定めた規定がこれまで維持されてきた理由(2)現在の無戸籍者の数や、その減少の見込み(3)無戸籍者問題を解消するための施策(4)無戸籍者が戸籍を取得するまでの期間に行政サービスを受けられるようにするための施策(5)夫婦別姓制度(6)児童虐待防止法の児童虐待の定義――について関係大臣の見解をただしました。

 米山議員は、女性のみに従前6カ月、2016年の改正以降は100日間の再婚禁止期間を定めるこの差別的な法例が、今般の改正まで修正されずに残っていたことについて、旧統一教会及びその関連団体との影響がなかったのか、調査する意思があるのかないのかと迫りましたが、葉梨法務大臣は「特定の団体による影響があったのではないかとの指摘は全く当たらない。調査をする予定もない」と答えました。

 無戸籍問題に関連し、「戸」という概念にとらわれた日本の戸籍制度もまた、現代の個人の在り方、社会の在り方、そして科学の進歩を受けて変化すべきものだとの考えを明示。その最も端的な例として選択的夫婦別姓制度を挙げ、その実現を求めるとともに葉梨法務大臣の見解を求めました。

 葉梨法務大臣は、「国民各層の意見、国会における議論を踏まえ、対応を検討していく必要があると考える。コンセンサスを得てもらうため、法務省として積極的に情報提供を行っていく」と答えるにとどまりました。

 今般の改正案で、民法第822条に定める懲戒の規定が削除され、親権を行うものは、その監護及び教育を行うに当たっては、子の人格を尊重し、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない旨が、定められたことには、「極めて当然」と評価。旧統一教会問題で注目を集めている「宗教二世」の問題にも触れ、民法第821条、822条の改正を契機に、児童虐待の防止等に関する法律、通称児童虐待防止法第2条の「児童虐待」の定義に、宗教的虐待を加え、宗教的虐待を児童福祉行政の対象と明示し、併せて救済の為の関係法令を検討すべきと主張しました。

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 これに対し加藤厚生労働大臣は、「宗教の信仰等、保護者の意図にかかわらず児童虐待に該当しうるものであり、現行の児童虐待防止法で対応可能だと考えている。保護者の信仰に関連することのみをもって消極的な対応を取らないことと合わせて、自治体に周知をしたところ。宗教2世の方々からの相談に対し、児童相談所等の虐待への現場に適切に対応できるように、具体的な方策や、対応の留意点を整理したQ&Aを年内を目途に作成し、発出することを目指し、当事者の方々のご意見も踏まえながら検討するよう、事務方に指示をしている。宗教2世の方々に対し現場で円滑な対応が図られるようしっかりと取り組んでいく」と答えました。

 米山議員は最後に、「わが立憲民主党は、男女を不平等に扱う固定概念や、不合理なこだわりを離れ、現代の科学を踏まえ、今を生きる一人ひとりの生活と社会の在り方に適合し、何よりも、個人が個人として尊重され、幸福を追求できる家族法制の立法と、政治、行政の実現に向けて全力で取り組んでいく」と誓い、質問を締めくくりました。