衆院議院運営委員会は2月24日、日本銀行総裁候補者の植田和男参考人から所信を聴取し、立憲民主党から階猛議員が質疑をしました。階議員は(1)インフレ圧力への見解(2)金融緩和を見直す条件(3)日本銀行が2%物価上昇にこだわる理由(4)政府と日銀が結ぶ共同声明の見直し(5)イールドカーブコントロールへの問題意識(6)日銀保有の国債やETFの処分(7)日銀の独立性の保持(8)植田参考人が保有する金融商品――等について質問しました。
■植田参考人のインフレ圧力への見解
階議員は、植田参考人が所信表明でコストプッシュ要因は今後減衰し、消費者物価上昇率が2%を下回る水準になるとの見通しを示したことについて質問しました。階議員は、ロシアによるウクライナ侵攻は終結のめどが立っていないことを取り上げ、「資源価格エネルギー価格は先行きを見通せない状況。また、国際的な緊張感の高まりがブロック経済であるとかサプライチェーンの見直しに反映してくるかもしれない」等と今後もコストが上昇するであろう要因を挙げ、インフレ圧力は依然として高いのではないか植田参考人に見解を問いました。植田参考人は、「構造的に原燃料価格を高い水準に保つようなさまざまな力が働いていることは事実」等と階議員の指摘を認めつつ、「去年までのような非常に高率の原燃料価格の上昇という時期はいったん過ぎ、インフレ率という次元ではそれはかなり落ち着いてきているところでございますので、それが反映されて日本の消費者物価にも下押し圧力が効いてくるであろうという見方を先ほど申し上げた」等と答えました。
■金融緩和を見直す条件
植田参考人が所信で大規模金融緩和の継続は必要である旨述べたことについて、階議員は、大規模な金融緩和の継続により、円安による交易条件の悪化、株式・債券市場の官製相場、金融仲介機能の低下、財政規律の緩み等の副作用が出ていることを指摘。どのような条件を満たすと金融緩和を見直すのかを質問しました。植田参考人は、「基調的な物価の動きは、今少し良い動きが出始めていると思います。しかし、今のところはまだ2%には少し間があるという風に考えています」と示し、物価上昇率2%が「見込まれる場合には、金融政策の正常化に向かって踏み出すことができる」と話しました。
■政府と日銀が結ぶ共同声明の見直し
階議員は、2%の物価安定目標を早期に達成すると明記されている政府との共同声明を見直すことはあるのかを問いました。植田参考人は、「基調的な物価の動きは、非常に好ましいものが出始めている段階で、しかし、2%にはまだ時間がかかるというところでございます。基調的な物価にそういう望ましい動きが出ているということを考えますと、現在の物価目標の表現を当面変える必要はないかなという風に私は考えております」と答えました。