衆院憲法審査会が3月9日開かれ、立憲民主党の奥野総一郎議員が発言しました。一部の政党から緊急事態条項の議論を進めるべきと主張されている点について、「非常時でもウクライナのように国会を動かすべきであり、緊急事態条項を設けるまでもなく、現在の制度でかなりのことができると考える」と言及しました。その上で整理が必要な論点として、(1)参議院の緊急集会のあり方について参議院と合同で議論をしてはどうか(2)選挙困難事態とはどのような場合が想定されるのか、それを客観的に誰が認定するのか(3)臨時国会の即時召集をまず明確にすべき――の3点を挙げ、「拙速に議論を進めることには反対」との考えを示しました。

国民投票法改正案

 2021年の改正国民投票法附則への対応の法的必要性について言及しました。附則について「国は、この法律の施行後三年を目途に、インターネット等の適正な利用の確保を図るための方策やCM規制など、国民投票の公平及び公正を確保するため事項等について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする」と説明しました。奥野議員は、施行後3年が2024年9月であると指摘し、「来年の通常国会までに『必要な法制上の措置』を講じなければならない」と訴えました。同附則の原案作成者の立場から「何らかの法制上の措置その他の措置が講じられるまでは、憲法改正発議は当然できない」と説き、「国民投票法改正について各党が案を持ち寄り、早急に成案を得るよう、集中討議を求める」と呼びかけました。

憲法9条

 反撃能力について岸田総理が「専守防衛の範囲内で対応する。武力行使の3要件を満たさなければならない」と言及した憲法9条に関する問題について発言しました。

 専守防衛に関して田中総理(当時)が1972年、「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行うということ」と答弁していることを紹介。「専守防衛とは、憲法9条の解釈として、自衛隊に、旧三要件のもと『国土及びその周辺において防衛を行う』という地理的な制約と『攻撃的な脅威を与える兵器を持たない』という制約を課すもの」と説明しました。

 ところが安倍政権下で実施された安保法制以降、「専守防衛の意義が大きく変わった」と懸念を示しました。奥野議員は、存立危機事態に際しての集団的自衛権の行使容認は、「我が国が武力攻撃を受けて初めて武力行使をするという憲法9条の基本的な制約を取り払っただけではなく、地理的な制約も消し去った。今回反撃能力を持つことで、『攻撃的な脅威を与える兵器を持たない」という制約も消し去られた。従来、専守防衛が果たしてきた歯止めが全くなくなってしまった」と警鐘を鳴らしました。

 そのほか、従来の専守防衛で違憲とされてきた海外派兵についても、安保法制の審議過程でホルムズ海峡における機雷掃海が例外として認められ、今国会では浜田防衛大臣が「ホルムズ海峡の機雷掃海以外にも例外を認める」旨の答弁をしたと指摘しました。我が国が保持できる「必要最小限度」の実力に関して「ICBM、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有」は許されないとされてきたのが、敵基地の攻撃に使用される限りは保有できるという結論にもなり得るのではないかと疑問を呈しました。

 以上の変更に加えて、今般反撃能力の保有を認めたことにより、「専守防衛は、もはや先制攻撃はしないという意味しか持たないものになってしまった」と問題視しました。「年間の防衛予算が10兆円を上回り、反撃能力を獲得した自衛隊が「陸海空その他の戦力」ではないと言えるのか。専守防衛を堅持するというマジックワードの下で、9条2項の空文化、削除に等しい結果が生まれている」と深刻な懸念を示しました。